Episode112 リュカオンの槍
◆今回初めて登場する人物◆
モーゼス(46)
天空要塞・アルカディアの管理人。空間把握能力に長け、テレポーテーション発動を担うアルカディアを操れるたった2人の内の1人。
レストン(42)
アルカディア職員の主将にして、アルカディア運用作戦の指揮官。部下はもちろん2人の操縦士からの信頼も厚い。
●今回初めて登場するアイテム●
フレアキューブ
アルカディア運用の非常事態の際、各自で地上から合図を送るために作られたキューブ。砕けると狼煙があがる。目標地点を指定する赤色と、通常爆撃兵器・スプレッドスフィア使用を伝える緑色、特殊爆撃兵器・リュカオンの槍使用を伝える黒色、作戦終了を伝える青色の4色がある。
「さぁて、どうやって倒そうかしら?」
と武器を錬金するオーロラさん。だが、僕にはそれに反する1つ考えがあった。この非常事態であれば、シャインズ国王がスカーレット魔法帝国へ既にアルカディアの要請をしているはずである。このアルカディアとは何者も寄せ付けない程の絶対的迎撃力、町1つを溶かしうる程の圧倒的破壊力を見せる人智の結晶であり、我々の最終兵器である。例え、神の半身であろうと無傷とはいくまい。
「いや、オーロラさん。向こうへ逃げましょう。」
そこで、僕はオーロラさんに言う。聞いて彼女は
「何言ってるんですか。あれを野放しにしたら大変なことになるんですよ?それにヤツには転移があるのよ。逃げれるわけがないわ。」
と言ってくる。それでも、僕の考えは変わらない。
「それに関しては問題ありません。僕が何とかしますから。それに、隣の方は随分お強いようですし。」
真剣な顔でしばらく見つめていると、渋々承諾してくれた。
「逃げるわよ、アレックス、フラン!馬車よ!」
オーロラさんは言って馬車を錬金。なんと、馬までいる。これが高等錬金術か、と驚きつつ僕は馬車の中へと入っていく。あと、どうやらあの人はフランさんというらしい。
バーロンはこの後に続いて、
「俺が運転をやろう。」
と前へ出ていく。次いで、アレックス、フランさん、テーラ、マリア、オーロラさんの順で中へと入っていく。
「フローティング!」
それから、僕は浮遊魔法でクレーターの上へ。
「らぁぁぁっっっ!」
同時にバーロンは怒号とともに合図を送り、馬車を走らせる。錬金術による加護もあってスピードはかなり速い。
「逃がさないよ。」
しばらくすると、ユンケルが転移。そこを僕が
「プロテクション!」
彼は跳ね返された。再び、転移。
「自然操作!」
彼はまた跳ね返された。三度、転移。今回は中に入ってきたが、僕が
「魔力解放っ!」
と0距離で鳩尾へ魔力波を放って無理矢理落とす。
その後も黒の光線を放ったり、前に転移したり、地面を消したりしてくるが、それぞれ僕の「プロテクション」、僕の「フローティング」、フランさんの能力による土の橋で乗り切る。
その内に僕は「ストア」からあるキューブをたくさん取り出して、アレックスさんに
「これをこの先上空へ転移してください。。」
と言う。彼はキューブ全部に触れて、
「了解した!転移!」
一括で指摘した場所の上空へ転移。キューブは落下し、地面に当たると砕けて赤い狼煙が上がる。
このキューブはフレアキューブと言って、アルカディアに地上から合図を送るものである。こういう非常事態に備えて王様から与えられえいたのだ。色は赤、緑、黒、青があってそれぞれ目標地点伝達、通常爆撃要請、特殊爆撃要請、作戦終了を表す。
僕は「ストア」から黒のを取り出し、準備に取りかかる。
「プロテクション!プロテクション!プロテクション!」
と障壁でヤツの行く手を阻みつつ、赤い狼煙のところまで誘導する。
「エクステンダー」で見たところもうアルカディアはその遥か上空へ佇んでいた。僕はまず、
「ダイヤモンドプロテクション!」
と強固な障壁で囲んで、次にキューブを投げる。最後に
「エレキスピア!」
と紫電の矢を放って、それを砕く。すると、黒の狼煙が上がって、瞬間上空が煌めいた。
* * * * *
リドナーが作戦を開始する頃。アルカディアはバッファル上空
その中には代理管理人のアルカスとモーゼス、そして職員がいる。その職員の内、1人が壁に設置されたスコープの映像を見つつ、
「およそ100km先に赤の信号を確認。目標地点の伝達です。」
と言う。それを受けて、モーゼスは
「了解した。本目標地点に座標を指定し、テレポーテーションを開始する。」
と伝えて、ホログラムの地図を広げて、巧みなパネル操作にて信号の位置へ精度抜群でピンを立てる。次にパネルのキーボードで「teleport」とコードを入力した後、エンターを押す。
すると、その場から空気中へ吸い込まれるようにしてアルカディアが消える。中からは光に吸い込まれるように見えた。
そして、アルカディアは赤い狼煙上空へ。さっきとは別の職員が、下方に設置されたスコープの映像を見て、
「下方に赤の信号を最確認。ほぼ真下です。流石ですね。」
と言う。モーゼスは
「当たり前だ。だから、テレポーテーション発動を担っている。あとはアルカス、君の仕事だ。」
とあしらって、アルカスに目を向ける。
「分かっています。コード『cannon_under』により下方の主砲を起動開始...完了。続いて、通常爆撃、特殊爆撃のキー別発動プログラムを入力...完了。即出力し合図を待つ。」
アルカスはそう言って、ものの数秒で全てのコードを入力する。受けて、別の指揮官が、
「下方係の職員は信号の色に集中!アルカス第二操縦士に再確認、緑は通、黒は特。早急な作戦遂行のため色を確認次第即作業を開始ください。」
と職員、アルカス両方に伝える。
「了解!」
「了解しました!」
と答えが返る。
「黒の信号を確認。」
やがて、職員は言う。それを聞くとアルカスは言われた通り即作業を開始。特殊爆撃のキーに設定したAを押した後、エンターで実行。
壁からは無数のレンズが突き出てきて、内側へ傾く。その先はとんがった砲台の先。レンズには太陽エネルギーが集まり、その全てがその先へと収束する。エネルギーはやがて巨大な球となり真下へ落とされた。
* * * * *
ドゴォォォォォッッッッッン!
その煌めきは一瞬にして地上まで届き、ヤツへ直撃する。その爆風は木々を飛ばし、地面を抉る。爆音は耳をつんざくようで、閃光は目を眩ますよう。
その中、僕はヤツのいた方を見て、
「アルカディアの特殊爆撃用兵器・リュカオンの槍だ。これこそ天空要塞・アルカディアの最強兵器。その威力はゼウスの雷霆にも匹敵する。」
と言う。さっきも言ったが、これを食らえば例えヤツでも無傷では済まない。実際、もう追ってくることはなくなった。
僕は青のフレアで作戦終了を伝え、そのまま馬車でそこを去っていった。