Episode111 神の右腕
ゴガガガガガ...!
ユンケルが変異した右腕で地面を殴ると、岩石の刃が迫ってくる。僕は剣を振りかぶって、
「はぁっ!」
とソードビームを発動。刃は迫り来る刃を次々砕き、そのまま敵の首を狙った。だが、右腕に触れた瞬間に消えてしまう。
「シャイニングボール!」
今度はマリアが光の球を放つ。同時にニコラスが銃を、フレイアが聖なる拳を撃って、敵を翻弄せんとする。
「無駄なことを...!」
言うとユンケルは右腕を剣に変化。それで全て弾き返し、しかも黒の光線で反撃をしてきた。僕は
「プロテクション!」
と唱えて、彼女たちを障壁で囲む。光線は障壁を避けて溶けていった。
瞬間、僕は「モーメント」でヤツの目の前へ。そして、反応する暇も与えず剣にたくさん魔力を纏わせ、剣を振り下ろす。
「ぐっ...!?」
斬撃は見事命中し、真っ二つとなる。
「やったか!?」
バーロンが寄ってきて僕に言う。
「いや...こいつが本当にドュンケルの半身なら...。」
僕が返事をする内に彼は下半身に右腕を触れてあっという間に元通り。さっきの黒い光線を一点から数本放ってきた。すぐざま僕はバーロンの手を握って
「モーメント!」
高速移動中、光線も追ってくるが明らかにこちらの方が速い。最後まで逃げ切って、「プロテクション」で打ち消した。
そして、今度はこちらの攻撃。「プロテクション」を解除するとともに
「エレキスピア!」
と紫電の矢でヤツを狙う。ヤツはそれをはたまた腕で防いだ後、手を網目に変えて、地面に触れる。すると、地面が砕けて破片が消える。
かと、思うと上からたくさんの石が降り注いできた。
ズガガガガガ...!
「うわぁっ!」
「がぁっ!」
「くっ!」
「あぁっ!」
「くっ...。」
「ぐぅっ...。」
不意打ちだったために「プロテクション」も遅れてしまって俺たち皆真面に食らってしまった。運良く頭部直撃は免れたものの体のあちらこちらに深傷を負ってしまう。地面には血が滴り、その痛みで体も上手く動かなくない。
その中、ユンケルは容赦なく手を剣に変えて襲いかかる。僕は飛び出して剣で防ぐ。
「ハハハハハ...!」
だが当然、神の方が力は強い。片手で堪えながら、もう片方で
「スーパーヒール!」
と唱えた瞬間に無理矢理振りほどかれて、腕は変な方向へ曲がってしまった。
そこへ、テーラがナイフを飛ばす。そのコントロールは相変わらす完璧で僕の顔の丁度横を斜め内側に貸すって4本全て頭に突き刺さる。そこから、魔力でナイフを引き抜き手元に戻すとそこから大量に血が飛び出した。それも右腕で触れるとすぐ癒え、力を貯める。その力はやがて巨大な黒い球となってこちらへ飛んで来る。
「あれはヤバい!ダイヤモンドプロテクション!」
僕は危険を感じて硬質の盾を形成。
ギュゴォォォォォッッッッッン!
さっきまでそこにいたヤツが何処かへ消えたその時、黒い球は地面に激突して辺りが一気に消し飛ぶ。足元には巨大なクレーターができて僕たちはそこへ落ちていった。
「くっ...。」
「がっ...!?」
「いっつ...。」
「うっ...!?」
「あっ、くっ...。」
「ぐっ...。」
僕たちは背中を強く打って声のならない悲鳴をあげる。頭も少し打ってしまった。痛みに堪えながら立ち上がるとクレーターの上にはユンケルの姿。彼は不敵な笑みとともに腕を振り上げていた。
僕は魔力を流してもう一度「ダイヤモンドプロテクション」を唱えようとするが、すでにこちらへ黒い極太の光線が向かってきている。もう間に合わない。僕は最後の望みを掛けてアレックスさんたちに座標を送った。
その瞬間のことである。目の前には突如、片刃の剣を持った女性が現れ、しかも光線を切り裂き、光を集めて光線を撃ち返す。敵はそれを手で全て消し去った。
それから、オーロラさんもアレックスさんと一緒に飛んできて、
「剣よ!」
と錬金術を発動。彼女の手元には巨大な剣が現れて、アレックスさんが
「ムスクルス!」
と唱えてやると、何と剣を回転とともにてぶん投げた。どうやらさっきの「ムスクルス」とはやらは腕力増加の魔法か何からしい。
投げらた剣はやかで圧倒的質量を以てユンケルの腹を吹っ飛ばす。だが、相も変わらず腕で触れるだけで元に戻ってしまうのである。
「薬よ!」
続いて、オーロラさんは回復薬を5本生成。こちらに渡して、
「これを飲んで、一緒に戦って。私たちだけじゃ多分あいつに太刀打ちできないわ。」
と言う。
「じゃあ...。」
僕は会釈をしてから回復薬をゴクリ。他の4人も倣ってゴクリ。すると、みるみる内に傷は癒え、しかも痛みも引いていく。
「て言うか、何なのよ...あの腕は...!?あれじゃまるであのベルって子みたいじゃない...!」
僕たちが立ち上がると、オーロラさんはそう言う。まずは僕が
「ヤツはドュンケルの半身だって言ってたから、ドュンケルの体の一部ではないかと...。真相は定かではないですが。」
と憶測を述べる。
「いや、それで間違いはないだろう。」
「となると、かなり厄介ですね。」
アレックスさんが僕の憶測に賛同すると、剣を持った女性が言う。それを聞いて、オーロラは
「何が厄介って言うのよ。」
と質問。
これにアレックスさんは答えるのである。
「あの腕は神の右腕。九種の能力の象徴にして、その根元。つまりあの右腕は分裂した9つの能力である、吸収、転移、身体変化、自然操作、暗黒砲台、万物裂断、接触破壊、洗脳、不死身の全てを扱えるというわけだ。」
と。