Episode10 逃亡者の恩人
●今回初めて登場するアイテム●
114式小銃
戦時中、日本で使われていた強武器・89式小銃を元に作られた、アサルトライフル。さまざまなアタッチメントが装着可能で、89式よりもさらに強い小銃である。
それから、凶虫たちは、手分けして僕たちを探し始めた。あの量では、捜索範囲も非常に広いだろう。
「見つかるのも、時間の問題だな。」
僕はそう呟き、「キーピング」を唱えて、マリアの車を出し、魔力の込め直しを再開させた。それから、僕は、横の男と話をした。
どうやら、ニコラスという名前らしい。この男はヤツらから逃げてきたようで、ジョブはマックと同じ、銃使いらしい。それも、かなり腕があるようで、狙った敵は逃がさないという。そんな彼に、僕は感心してしまった。
「マリア!もう、魔力は込めたかー?」
僕は、マリアにそう聞いた。すると、
「まだよ!一気に魔力を放つと、負担がかかるんだから。ちょっとずつ、入れてんの!」
と言われた。今、見つかってもおかしく無いと言うのに遅いな。そう思った僕は、
「変わって。」
と、彼女にいい、車に触れ、魔力量を確かめてから、から聞いた。
「どれぐらい、込めればいいんだ?」
と。すると、
「そうねぇ。だいたい、2000mpぐらいかしら?」
と、曖昧な答えが返ってきた(「mp」は、「magic point」の略で、魔力量の単位の1つである)。今、1000mpの魔力が入っている。こんなに時間をかけて、半分しか入れれてないのか。僕は、彼女をバカにした。
そして、僕は手先に約1000mpの魔力を流し、それを一気に解放した。少し疲れてしまったが、そこまで気になるわけではない。僕は、マリアに
「込め終わったぞ?」
と言った。彼女は、
「早っ!」
と驚いてから、こんどは呪文の登録を行うと、もう一度、車に近寄った。
と、そこで僕たちはタイプIに見つかってしまった。ソイツはお尻から、煙のような物を出した。どうやら、何かのヘェロモンのようで、凶虫が集まってきた。僕たちは、急いで、車に乗り込み、マリアがアクセルを踏んだ。
ズドドドドド...
ニコラスが背中のアサルトライフルで凶虫たちを撃ち倒していく。しかし、減ったのは2、3割程度。僕も、負けじと杖を抜き、たくさんの紫電の矢で蹴散らしていった。すると、タイプⅡがお尻からたくさんの糸を生み出し、こっちに放ってきた。僕は、「魔力解放」でそれを跳ね返し、跳ね返しきれなかった糸を「プロテクト」で守った。
続いて、タイプⅡが大きく跳ねて、こっちにやって来た。僕は、ニコラスに出来るだけヤツらを撃ち倒させた。それでも、銃弾を逃れて、向かってきたタイプⅡを、ギリギリまで引き寄せて、ほぼ一直線状に並んだところを、横向きの「クロスカリバー」で一掃した。その時、大量の血が吹き出したので、僕は目を反らした。
こうして、僕たちは何とかヤツらの手を逃れ、遠回りにはなてしまったが、陰の森の前にたどり着くことが出来た。僕はみんなと一緒に車から降りたあと、ニコラスに
「あなたはどうするんですか?僕の知り合いなら、あなたを逃がすことが出来ますよ?それとも、僕たちと一緒に行きますか?」
と聞いてみた。すると、
「あなたたちについていきます!リドナーさんはとても、強かったし、みなさん、強くて優しそうなので。」
と答えてくれた。
「ありがとう。」
僕は笑顔でそう言った。
「それに...。」
ニコラスはさらに、話を続けようとする。僕は、
「それに?」
と相槌を打つ。すると、彼は
「実は、僕が逃げられたのはある方のおかげなんです。そちらの、テーラさんに良く似た碧眼でしたよ。」
と説明した。すると、テーラはハッ!という声を漏らし、続いて、
「お姉ちゃんかもしれない!いいえ、絶対にそうよ!」
と言った。そして、彼は話を続ける。
「それで、彼女はヤツらに捕らえられてしまった。もしかしたら、今ごろ、拷問を受けているかもしれません。ですから、私は彼女を、私の恩人を助けたいんです!」
ニコラスはそう暗い声で言った。その話を聞いたテーラは、
「早く行きましょう!」
と言った。僕は、
「そうだな。」
と返事をしてから、
「行くぞ!」
と決意を示すと、みんなは頷いてくれた。
こうして、ニコラスを仲間に入れた僕たちは、目的地を目指して、陰の森に入った。先に、助けに行くと言うテーラをなだめてながら。