Episode108 不死身
シュキィィィッッッ...
銀色の剣筋を空を裂いた。フランの放つ斬撃である。幼女とは言えど敵であったので迷いのない振りであった。
「きゃぁっ...!」
と幼女は成す術なく腰の所で真っ二つとなり血を吹き出す。
だが、彼女は動いていた。上は手を使って這いつくばり、下のある方を目指す。中々惨いことではあるが、
「はぁっ!はぁっ!はぁっ!」
とフランはその体を何度も切り裂き、アレックスは
「転移!転移!転移!」
と上から木を落として体を潰す。その度に血が弾け飛び、辺りは血だらけとなってしまった。
「嘘...でしょ...?」
それでもまた動く幼女を見て、オーロラは目を丸くする。対するフランとアレックスはいかにも落ち着いた様子で
「9つの能力にはこれがあるとの噂であったが...。」
「まさか、本当に存在していたとは思いませんでしたね。」
と顔を見合わせる。
そんな彼らを見てさらに驚いたオーロラが
「え、ちょっとどういうこと?」
と聞けば、フランはこう答える。
「あの幼児、いいえ既に100歳近くにはなってるでしょう...。信じられないかもしれませんが、彼女は能力者です。それもかなり厄介な。能力の名は不死身、いくら心臓を突き刺そうと、首を跳ねようと死ぬことのない能力です。この能力は老化を遅らせるのであの姿なのですよ。」
と。
「じゃぁ、どうすれば良いのよ。まさか肉片1つ残さず殺さないと死なないってオチじゃないでしょうね。」
聞いて冷や汗をかくオーロラは言う。だが、そのまさかは当たってしまったようだ。アレックスは
「まぁ、そんな所だ。殺すのがあまりに困難で我々が能力を手にして数える程しか歴代の継承者がいないらしい。」
と言う。オーロラの冷や汗はさらに増した。
と、気付けは幼女は元の姿に。
「そうよ、私はベル97歳。不死身の継承者としては31代目になるわね。」
そう彼女は言って、無数の闇の球を飛ばしてくる。
「2人とも、私の後ろへ!」
フランは言ってアレックス、オーロラを下がらせ自然操作を発動。大地の盾で全て防ぎきり、今度は風を操り飛び上がる。
そこからの斬撃。まずは腕を切り落とし、続く闇の球は万物裂断を切り飛ばし。からの、連斬。腕も足も頭も胴も全て輪切りにしてしまった。だが、やはりまだ死なない。
「ウフフフ...不死身はそれぐらいじゃ死なないわよ?」
彼女は言うと、輪切りとなった体のパーツがくっつき始めた。
そこへすかさずアレックスが
「転移っ!」
と彼女の真上へ。そこで多機能型電磁砲を取り出し、「粒子爆裂砲」にダイヤルを合わせて、
「粒子爆裂砲!」
電磁砲からは
キュィィィィィ!
とチャージがされるとともに巨大な粒子の固まりが生まれ、やがてそれはヤツに向かって放たれる。
ビガァァァッッッン!
それが地面にぶつかると凄まじい爆発音とともに、爆炎は木々を焼き、爆風が辺りを根こそぎ吹き飛ばし、ヤツの体を蒸発させる。
のだが、咄嗟に離れたヤツの頭頂部の肉片から体は再生し、また起き上がり
「ウフフフ...面白いもの持ってるわねぇ...。」
と言ってこちらに向かってくる。
「あれを食らって死なないなんてどんなチート能力よ!さっき私の能力も試してみたけど上手くかからなかったわ。」
オーロラは言う。対してフランは
「やはりそう簡単には死んでくれないよですね。そして、オーロラ。不死身は幾多の屍を乗り越え行き長らえてきたのです。洗脳が効果を示さないのは、それだけ肝がすわっているといことでしょう。」
と考察する。これには、オーロラも
「そのようね。」
と賛成であった。
「さぁ、どうやってあの化物を倒そうか...。」
アレックスはそう言い、電磁砲の冷却装置の効果速度を通常から高速へと切り替えた。故障のリスクがある代わりに、わずか数十秒で次の攻撃を繰り出せるのである。これは1つの賭けであった。