Episode102 接触破壊
◆今回初めて登場する人物◆
ルーグ(36)
スカサハ族の族長。アトロポス族長・ニュクスとは犬猿の仲であり、なりふり構わずいがみ合ってしまう。ただし、ドュンケルへの忠誠は絶対お告げよりも喧嘩を優先することは確実にない。
ニュクス(36)
アトロポス族の族長。ルーグとは犬猿の仲でいつもいがみ合っているが、やはりドュンケルへの忠誠は絶対でお告げがあらば、たとえ喧嘩をしている途中でもすぐに大人しくなる。
ディアブロ(42)
黄昏界における七大悪魔の一角である悪魔。その力はかなり強大で、魔法のみの戦いであればドュンケルと互角に渡り合えるひどである。吸血鬼としての特性も持つ。
アドルフ(25)
黄昏界に住む若く顔も整った男性。相手が年下でも年上でも敬語を使うほど礼儀正しい。接触破壊を有している。
「ドュンケル様、やりましたぞ。我々スカサハ族が敵の狙撃隊を壊滅させたのです!」
「いいえ、我々アトロポス族の貢献あってのことです!」
「いや、一番貢献したのは我々である!」
「いいえ、我々です!」
スカサハ族長・ルーグとアトロポス族・ニュクスは言い合いながら自らが種族の手柄を自慢し合う。
「ええい、うるさいわ!貴様ら、両族はよくやった!大義であった!」
ドュンケルはそれに嫌気が指して声を荒げる。
「ありがたき幸せ。」
「ありがたき幸せ。」
その瞬間、2人はいがみ合いを止めて、先程までが嘘であったかのように跪いて礼を言う。
「フン、貴様らは常に喧嘩をしておるな。次その醜い争いを私の前でしてみろ。プシュケの長のようにするぞ!」
ドュンケルはさらにたたみかける。
「はい、申し訳ございません。」
「申し訳ございません。」
対する2人は頭を垂れて謝罪を行う。
と、今度はそこへ1体の悪魔。彼が
「我が君、ご報告がございます。」
と言うと、ドュンケルが
「どうした悪魔。」
と聞く。
「シルバ捜索中の一隊から言伝です。こちらの世界の神宿しが只今こちらへ向かっているとのことです。」
「そうか。ならば、巨人兵を向かわせよう。エフィスト、いるか!」
報告を聞くと、邪神は彼を呼ぶ。
「はっ!」
すると、双剣を両腰にエフィストは現れた。すっかり、ドュンケルの忠実な僕である。
「巨人を連れて奴等の元へ行け。」
「はっ!願ったり叶ったりであります。」
聞くと、彼はすぐに部屋を飛び出す。
そこへ、1人の男が寄っていく。
「エフィストさんよ、私めも共に行きたいのですが...。」
「ん、お前は何者だ?」
「接触破壊のアドルフと申します。この手で触れたものを全て破壊することができるのです。」
「ほう、面白い。許そう。」
その男、アドルフはそんなエフィストの会話の末、巨人兵とともにリドナーたちに襲うこととなる。
* * * * *
そんなことをリドナーたちはしる由もなく、「分霊の書」から漏れ出ていたのと似た邪気をマリアの車で走り抜けつつ探していた。
「全く困ったものよね。せっかく、ドュンケルを倒すために『分霊の書』を全部破壊したっていうのに肝心の奴がどこにいるかわからないんだから。」
「あぁ、全くだ。」
僕はマリアの言葉に賛同する。
「そう言えば、あの日のニュースで隕石が落ちたところにいなかったかしら?」
そこへ、丸っきり忘れてしまっていた言葉がテーラから発せられる。
「そうか、それだ!よく思い出させてくれた!」
それを聞き、僕はどこへ行くべきなのかすぐに理解する。
「確か奥には半島があった!サードルにいなかったってことはあれはテールン半島だ!」
大きく叫ぶとマリアが
「テールン半島ってのどこだったかしら...。」
と言う。僕が言おうとしたが、バーロンが急に出てきて言う。
「あれだ!6年ほど前、俺たちがアレクと戦った場所!」
「バーロン、そんなに手柄を分けてほしかったのか?」
「いや、そんなことはないぞ。」
僕が言うと、彼が言う。
「OK、わかったわ。そうと決まれば飛ばすわ...よ...?」
と、マリアの言葉が途切れる。彼女の向いている方向を見るとそこにはエフィストの姿。奇襲である。
ドゴドゴドゴドゴドゴドゴォォォッッッン!
その瞬間、あちらこちらで黒の柱は落ちた数多の巨人が現れる。
柱をまともに食らったバンパーは貫かれるとともに爆発し僕たちを吹き飛ばす。
「きゃぁっ!」
「かはっ!」
「クッソ...マリア!ニコラス!」
結果、前列にいたマリアとニコラスは爆発に直撃。僕が行った頃には既に頭から大量の血を流して、気を失っていた。僕は両者へ向けて
「スーパーヒール!」
と上位の回復魔術をかけてやる。これで傷は完全に塞がったことであろう。
それからもちろん自分とバーロン、テーラ、フレイアにも同じものを唱えて武器を構えてあちらを睨み付ける。そこには巨人たちの軍。そして、素手で車から出る火に触れる男の姿があった。が、何か様子がおかしい。なんで火に触れて平気な顔をしてるんだ?と思って彼を見ていると、男は
「私の能力は接触破壊。触れたもの全てを破壊する。火とて私の手の前には風の前の塵に等しいのだよ。」
と言ってみせる。よく見てみると、確かに彼が触れたところからは火が失せている。しかも空中分解していりのではなくて、不自然に触れたところだけが切り取れていた。
触れたもの全てを破壊する接触破壊。加えて、後ろの巨人兵。今まで以上に一筋縄ではいかなさそうである。