Episode100 ツチガミ像地下の結界石
一方、全ての「分霊の書」を破壊した僕たちは、マリアの出した車に乗って、巨大隕石の落ちてきたあの地、「ハレグル地区」へと向かっていた。
ただし、まずはシルバさんの言っていた結界の解除をするべく、ツチガミ像へ。
そこで車を降りると、あの謎を解き治して僕は地下へと入る。
「サーチング!」
と探知魔術をかけてその結界の礎とやらを探す。おそらく、その礎を見つけて壊せばOKなのだろう。
フゥゥゥ...!
と光の輪が水平方向へ広がり、続いて
ブォォォ...!
と垂直方向へも広がる。すると、何かが引っ掛かるのを感じた。その引っ掛かり方から複雑な回路で球形の何らかが隠されているのが分かる。
「となれば、あの回路を1つ1つ紐解いていくしかないのか...。」
僕は探知魔術を解除し、その球体の隠された場所の上に屈んでピンポイントに手を触れる。
そして、解除を始める。あまりにも複雑でまるで知恵の輪のようだ。しかも、霊脈とは違って回路なために自由に切り離したりすることは出来ない。精々、魔力を大量に流してそのエネルギーで無理矢理ねじ曲げたり動かしたりすることができるぐらいである。本当に知恵の輪のようだ。
まず初めに現れたのは所々フックとフックが引っ掛かり、またある所では綱のように捻れ合ってしていた。
「じゃあ、最初に鎖を...。」
と僕は魔力を流して綱の捻れを反対から回して真っ直ぐな線に。それを続けて、残りはフックのみとなる。
試しにフックのの間からもう1つのフックを引き抜こうとはするが通らず。
「それならこっちを...。」
僕は一方のフックを捻って捻って捻りまくり一ヶ所だけ細くなるようにする。そうして、フックの間からその部分を通すと...
。
「できたっ!」
見事、フックが外れた。その感じで他のも全て解除。これで第一層は完了。
続いて、第二層。そこには間に無数の回路も入った、二重螺旋がかなりこんがらがったものがあった。DNAの構造とよく似ている。とりあえずはまずその螺旋を直線の構造へと戻してくる。
「さて、ここからか...。」
僕は呟き、まず線と線の間の細い線と細い線との間を広げてみる。ここからあっちを外したのだが別のところに引っ掛かり動かないようだ。
「...ここをこう、か?」
構造を縦に横に動かしてみるも一向に外れる様子はない。
「それなら...。」
順々に構造を同じ方向へ向けて斜めにする。そこで、正解が見えてしまった。間の細い線ならこのまま同時に落として外せるだろうと。そして、やってみれば見事ビンゴ。第二層も解除完了。
それから、お次は第三層。渦巻き型のがラッパ型のに引っ掛かって
「まず渦を回してっ...と。」
僕はそう言って渦を左右へとかなり動かす。だが、そんなことをしてもラッパから渦が外れることはない。
「だったら...。」
を渦の間を広げてラッパの輪を通す。
さらに回すと今度は広げて曲がった回路に引っ掛かる。が、何なく外側へ広げてまた通す。僕は
「このまま、これを繰り返していけばっ!」
とそのままそれを繰り返す。
続いての第四層はすぐに終わる。歯車が紐で繋がり球を成していたのだが歯車を紐にねじり寄せて見ると1つの輪っかとし、それが数十個できる。それを外側から次々と落として完了である。
そして、最後の第五層。もう球体はすぐそこである。回路は球体を包む立方体のような構造である。その立体は大体が正四面体で構成されてでいて、まずは曲げやすくそるため全ての形を崩す必要があった。
「うっ...。」
そこへ唐突な吐き気。魔力がかなり減ってきたようだ。魔力量がかなり多いとは言え無尽蔵とは言えない。これだけ、全力で魔力を流して、また流してすればこうなることもあるだろう。僕は構わず解除を続ける。
それから10分近く経ち、やっとこさ全ての正四面体構造が崩れる。すると、立方体も少し崩れて3つのパーツで出来ていることが分かった。
「これは...。」
僕はそのパーツをそれぞれくるくる回してみたりして外れないのを確認する。ので、今度は無理矢理上と下へと回路をずらした。だが、やはり外れない。
「だったら、球体を押し出す?」
俺は小首を傾げながらもまずは外れやすいよう出来るだけパーツ3つを一ヶ所に集める。引っ掛かって途中で止まったが球体包む部分はかなり小さくなった。
「はっ!」
と僕が魔力解放を行うと地面が貫かれてその球にもぶつかる。すると、あっさり球体が立方体から外れたのである。
すぐにその球は地上へ。
「何かブツブツ言ってたけど、大丈夫?もしかして、病んじゃった?」
とマリアがケラケラ笑いながら言うので、僕は少し腹が立って、
「うるさいな、1人言だよ。こっちだって、必死に回路を解除してたんだ。」
と言ってやり、剣を抜く。そして、球を叩く。だが、
ガキィィィッッッン!
と弾かれてしまった。どうやら、相当な硬さらしい。
「はぁぁぁっっっ!」
力のあるバーロンが剣を振り下ろしてもまた
ガキィィィッッッン!
マリアが魔力をたくさん注いで
「シャイニングブレード!」
と光の刃で叩きまくるもむしろ、刃の方が砕け散ってしまう。この様子では短剣でも無理だろうとテーラはしもそも何もしい。
ズドドドドド...!キン、キン、キン...
続くニコラスの連なる銃撃も無傷で耐えて、地面に弾を落としていく。
「はぁっ!はぁっ!はぁっ!はぁぁぁっっっ!らぁぁぁぁぁっっっっっ!」
フレイアが渾身の連撃で殴りに殴り、蹴りに蹴り、吹っ飛ばしに吹っ飛ばし、また叩きつけに叩きつけるがやっぱり球は無傷であった。ここまで固くするのはドュンケルが結界の破壊を恐れているからであろう。こちら側にはアレックスさんやシルバさんの陣営に加え、シャインズ王国とスカーレット魔法帝国やバートル神帝国などアルカディア諸島の大国家だってついているはずだ。いくらあちら側が底なしの軍力だとは言え、こちらの総力を恐れても不思議ではない。
だが、僕はゆるぞ!僕は自分にそう言い聞かせて球に剣の切っ先を密着させる。
「頼んだぞ、アレス!」
そう言って、残ったほとんどの魔力を剣へ。繰り出すは山麓の図書館にてあの固い殻をも砕いたあの技。しかも、その強化版、またゼロ距離。僕は
「はぁっ!」
と言う声とともに剣を巨大化するイメージで魔力を放った。
ゴォォォッッッン!
刹那、土煙が高く上がる。僕は反動はかなり吹っ飛ばされるが神宿しの力で吹っ飛ぶのとは反対方向へ加速を加えてブレーキ。壁までにかなり速度が収まったために
タンッ!トンッ!ズズズズズ...!
壁を蹴って地に降り立ち、しばらくそこを滑る。
見ると、見事球は粉々砕かれていた。
「よしっ!」
僕は1人ガッツポーズをする。
この時を以て島を囲む黒の結界は完全に消え失せた。