Episode9 逃げ出した男
◆今回初めて登場する人物◆
アーネイゼ(42)
ミュルミドン族の女族長。かなり面倒見が良いため、同族のみんなからは、「マザー」と呼ばれている。
ファーデン(48)
アラクネー族の男族長。威厳のある言葉と、圧倒的な統率力から、同族からは「キング」と呼ばれている。
ニコラス(22)
バッファル島に住む銃使い。レイカーの地下町に残されてしまったため、ドゥンケル率いる、侵略者たちに捕まってしまう。ある日、外へ逃げ出すことに成功した。
★今回初めて登場する怪物★
タイプⅡ
惑星・ユミルに住む巨大な蜘蛛。凶虫の一種で、タイプⅠと比べて、素早さでは遥かに劣っているが、粘着性の高い糸を自由に作り出すことが出来、巨大な巣を作って捕まえたり、動きを封じたりするなど、非常に厄介な怪物である。正体は、アラクネーと言う民族である。
「クリス様!申し訳ございません!1人、逃がしてしまいました。」!
ミュルミドンの族長が、2度も死んだはずの、クリスに報告する。クリスは、
「そうか...。ならば、今すぐ連れ戻せば良い!アーネイゼよ、今すぐミュルミドンどもを連れて捜索するのだ!それと、アラクネーどももだ!ファーデンたちにはヤツを生け捕りにしてもらう!絶対に殺すな!」
と命令した。
すると、ミュルミドン族長は
「仰せのままに。」
と承諾し、ミュルミドンたちを連れ、ファーデンたちアラクネー族とともに、レイカー地下拠点を離れていった。
その頃、僕たちは透明化と無音化が掛かったジープで、陰の森に向かっていた。陰の森は恐ろしい怪物がたくさんいるので昔から立ち入り禁止になっている。それに、奥には書斎のある陰の館と言う古い館があるからである。
「本当にあるんでしょうね?」
マリアが車を運転しながら、そう聞いてきた。僕は、
「あるはずだ。」
と言う。すると、
「何よ、その曖昧な返事は...。」
とツッコまれてしまった。
と、茂みの中から銃を持った誰かが飛び出してきた。僕は、
「マリア!」
と叫ぶ。すると、マリアは
「インターセプト!」
と妨害魔法を唱え、車には強制的に停止し、透明化と無音化も解けた。あまりにも、急だっため、僕たちは体を大きく揺さぶられ、背中を痛めてしまった。どうやら、この車は全て魔力で動いているらしい。
「妨害魔法『インターセプト』。一度、『エンド』で一度、終わらせてから、魔力の込め直しと、呪文の登録しなさなきゃならないから使いたくなかったんだけど。」
マリアはそう言いながら、魔力を車に込め直し始めた。その間に、僕は飛び出してきた、何やら汗だくの彼に話しかけた。
「どうしたんですか?ずいぶん汗だくですが...。」
「追われているんです!良かったら、助けて貰えますか?」
「追われてる?良いですけど、何に追われているんですか?」
「私に聞かれても分かりませんよ!と、とにかく大きかったんです。あんな、巨大な虫みたことありません!」
彼のその言葉で、僕はその虫が凶虫であるとわかった。空を見ると、近くに黒い柱が立っている。マズい!僕は、みんなに
「凶虫だ!」
と報告し、彼とともに茂みに隠れた。同じく、バーロン、テーラも茂みに隠れるが、マリアは車の横で何やらポケットを探っている。
「何してるんだ!早く、隠れろ!」
僕はマリアに向かって叫ぶ。しかし、彼女は、
「わかってるわよ!でも、超小型収納箱が無いの!これじゃ、これじゃ...。」
と涙目になりながら、まだ隠れようとしない。
ガサ、ガサ、ガサ...
茂みが動いた。僕は、「モールディング」で、マリアの足下に粗めの魔方陣を作り、「モーメント」を唱えた。その粗さでは、僕たちの所へ戻すことは出来なかったが、とにかく茂みの中へ瞬間移動させることは出来た。それから、僕は彼女に何をしているの?と言われる前に、「キーピング」で車を収納した。まさに、電光石火の早業。凶虫たちが現れる前に、全てを終わらせることが出来た。かなり、ギリギリだったが...。
そして、反対側の茂みから現れたのはタイプⅠと、巨大な蜘蛛だった。これも凶虫なのだろうか?と、疑問になった僕は、アレックスさんに貰った本を開き、ソイツがタイプⅡと言う、凶虫の一種であることを確認した。