Episode0 新たなる危機
★今回初めて登場する怪物★
トール
黄昏界に住む黄色い巨人。武器は携えていないが、かなり素早く、高度な再生能力を持つ。胸の中にある核が弱点。
今、僕は自宅の庭で稽古のためジャックと戦っている。彼の腕は日に日に上がり、今では、かなりの技を覚え、良い目をするようにもなってきた。
キン!キィィィン!
剣と剣が触れ合い、凄まじい金属音がなる。
キン!キン!キン!キィィィン!
ジャックお得意の連続攻撃。さすがの、僕も受け止めるので精一杯だった。
そして、僕の剣が跳ねられ、ジャックは、
「僕の勝ちですね。」
と言った。しかし、そうはいかない。僕は即座にしゃがみ、床に落ちた剣を手に取り、立ち上がるときに、思いっきり振った。それは、彼の剣に命中し、はね飛ばされる。それを確認した僕は、彼に剣先を突きつけ、
「いや、違うな。僕の勝ちだ。」
と覆し、
「いつだって、油断は禁物だ。たとえ、それが一度、勝った時であってもな。一度の勝利にうぬぼれていると、こんな風に、一気に覆されるぞ。」
と教えてやった。すると、
「はい!気を付けます!」
と元気な返事をしてくれたので、近くの自動販売機からスポーツドリンクを2本買ってきて、一緒に飲んだ。美味しい。僕たちは同時にそう思った。
それから、また稽古に戻った。
キン!キン!キン!キィィィン!
辺りに金属音が鳴り響く。
「そうだ!良いぞ!」
ジャックの剣さばきを見ながら、僕はそう言う。
「ありがとうございます。」
彼は、そうお礼を言いながら、さらに力を入れてくる。僕はそれを防ぎなから、ふと、上を見た。すると、何か黄色い石が落ちてくるではないか!僕は、すぐさま彼に触れて、「モーメント」で後退した。
ドーン!
まさに、危機一髪。その石は後退した瞬間、土煙をあげて、地面に落ちた。
「何だ!?」
ジャックが驚く。次いで、 僕も驚く。なんと、その石が動き出したのだ。僕たちは、不吉な物を感じ、剣を抜く。
そして、土煙の中から巨人が現れ、踏みつけようとしにきた。僕たちはそれをかわし、同時に剣を投げた。その2つの剣はそれぞれヤツの両足に刺さるが、何だか痒いなとしか感じなかったようだ。ヤツは、何気ない顔で足に刺さった2本の剣を抜き 、ボリボリと食べ始めた。僕たちは、恐怖で青ざめながら、走り始めた。
そんな僕たちをヤツは追いかけてくる。その途中、さっきと同じ物が町のあちらこちらで落ちているのが見えた。他にも、人がいるだろうが、今は僕たちの命を優先すべきだ。僕たちはそう言い聞かせながら走った。
そろそろ、バテてスピードも落ちてきた。それなのに、ヤツはバテることなく、僕たちを追いかけてくる。それから約30分、僕たちは何とか走り続けられたが、ついに、地面に崩れ落ちた。そして、ヤツが拳を振りかぶった。ここで、僕たちは死ぬのか?そう思った瞬間だった。
巨人の横にゲートがあらわれ、そこからキガントラプトルが現れ、噛み付いた。それから、近くにあった人の居ない公園へ投げ、それから胸の辺りを何度も踏みつけた。すると、ヤツは動かなくなった。
そして、ゲートの中から5匹のラプトルを連れた、アレクが現れた。僕は、
「また、助けてもらったな。ありがとう。」
と、お礼を言う。すると、彼は
「兄さんを助けるのが僕の指名だからね。ところで、そちらの方は?」
と、ジャックに誰何する。僕は、
「コイツが僕の弟子のジャックだ。」
と紹介した。すると、弟は
「あなたが...。初めまして。」
と挨拶をし、ジャックも
「いちらこそ。」
と返した。
「それより、兄さん、それにジャックさん。この町は危険です。ウェールの町へ急ぎましょう。事前に、許しをもらっています。」
アレクが、そう言ったので、僕たちはうなずき、3人でラプトルに乗り、走り始めた(残りの2匹とギガントラプトルはゲートを通して、陰の森に帰させた)。
そして、ウェールの町に付き、その日は、族長の家に泊まらせてもらった。
この日、僕の住むサドリール地区はあの巨人たちに占領され、戻れなくなってしまった。後から聞いた話だが、死者も出たらしく、バッファル島の人工は1割減ってしまった。