お前が呼んだ! だから来た!
「ダメだね……全く見つからないよ」
葵を探し始めて随分と経つ。辺りは既に暗くなり、葵を探すのは困難を極めていた。
「夏希、それでも探さねぇと」
優斗が夏希を励ましている。夏希の気持ちも分かる。こんなに暗いんだ。ましてや葵は背が低い。こんな人混みでは全く目立たない。
俺の中で焦りがどんどん募っていく。
そんな時だ。
「遼ー!!!」
聞き慣れた、助けを求める様な声が。
「遼? おい! どうした! 遼!」
「ちょっと!? 遼!?」
優斗と夏希の声を無視して、俺の体は走り出していた。声の聞こえた方角へ。
人混みを描き分け、ただ走る。アイツが助けを求めたんだ。他でもない、俺の名前を呼んで!
「葵!」
そして見つけた。チャラそうな男2人に掴まれて、ビクビクと震える葵を。俺の声が聞こえたのか、葵をコッチを振り向く。
「りょう……たすけて……」
その顔には涙が浮かんでいた。それを見た瞬間、俺の中の何かが爆発した。
葵を捕まえている金髪に向かって走り出す。
「あん? 急に叫んだと思ったらなんだってーー」
何かを喋っていた金髪の顔面を真正面から殴り飛ばす。金髪の男はいきなりの事で、油断していたのか大きくバランスを崩して1mほど吹き飛ぶ。
「葵! 大丈夫か!?」
葵の方を向いて安否を確かめると、葵は俺に抱き着いてきた。
「りょう……! 私……私……!」
泣きじゃくって顔が大変なことになっている。
「ごめんな? ほら、そんなに泣いたら化粧落ちるぞー?」
「だって……! 私……怖くて……! でもどうしようもなくて……!」
余程怖かったんだろう。話している内容も要領を得ない。
「クソが! テメェいきなり何しやがる!」
金髪の男が立ち上がる。
「何しやがる? だと? それはコッチのセリフだ!」
葵に手を出して、あまつさえ泣かした。コイツらは……絶対許さねぇ。
「テメェ……その女の連れか?」
「構わねぇだろ。殴って言う事を聞かせればいいだけだろ!」
今度は茶髪の男も一緒に向かってきた。
「りょう……」
葵の心配そうな顔。それを見て、俺は少しだけ冷静さを取り戻した。
「オラァ!」
「クソやろぉ!」
目の前まで来ていた男達のパンチが腹と顔にヒットする。
「かはっ……!」
「りょう!」
葵が心配してくれているが、思ったよりもダメージがきた。このまま葵を守りながら蹴散らす訳にもいかない。
「葵! こっちだ!」
葵の手を取って俺は走り出す。
「ちょ、ちょっと遼!? 待って! 走りずらい!」
そうだった! 葵は浴衣だった。
「しょうがねぇ……。じっとしてろよ!」
俺は葵を抱きかかえて走る。
「まちやがれ!」
「ハァ……ハァ……なんとか撒いたか?」
人気の少ない所までやってきて、後ろを振り返るが追ってきている感じはなかった。
「り、遼? あの、そろそろ、降ろしてほしいんだけど……」
「あ? わ、わりぃ!」
自分が葵を抱きかかえている事をすっかり忘れていた俺は、慌てて葵を地面に降ろしてやる。
近くにあったベンチに座り、やっと一息つく。
「あのさ……遼。ありがと……助けに来てくれて」
「気にすんな」
それだけ言葉を交わして、2人の間に沈黙が訪れる。
「そういえば……どうやって私の場所が分かったの?」
葵が沈黙を破り、聞いてくる。
「声が聞こえたんだよ。俺を呼ぶ声が」
なんだか厨二臭い言葉だなと思いながら、そう答える。
「そっか……聞こえたんだ……」
そう言いながら、ふふっと小さく笑う葵。
「なんだよ?」
「ううん、何にも!」
いたずらっ子みたいな笑顔で俺を見る葵。
言わないと。
その言葉が俺の中で木霊する。伝えるんだ。俺の気持ちを。ダメで元々、玉砕覚悟!
やってやらぁ!!!




