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TSしたから全力で満喫しようと思う  作者: 犬たろう
第5章~love? like?~ √
75/76

お前が呼んだ! だから来た!

「ダメだね……全く見つからないよ」

 葵を探し始めて随分と経つ。辺りは既に暗くなり、葵を探すのは困難を極めていた。

「夏希、それでも探さねぇと」

 優斗が夏希を励ましている。夏希の気持ちも分かる。こんなに暗いんだ。ましてや葵は背が低い。こんな人混みでは全く目立たない。


 俺の中で焦りがどんどん募っていく。

 そんな時だ。

「遼ー!!!」

 聞き慣れた、助けを求める様な声が。


「遼? おい! どうした! 遼!」

「ちょっと!? 遼!?」

 優斗と夏希の声を無視して、俺の体は走り出していた。声の聞こえた方角へ。

 人混みを描き分け、ただ走る。アイツが助けを求めたんだ。他でもない、俺の名前を呼んで!




「葵!」

 そして見つけた。チャラそうな男2人に掴まれて、ビクビクと震える葵を。俺の声が聞こえたのか、葵をコッチを振り向く。

「りょう……たすけて……」

 その顔には涙が浮かんでいた。それを見た瞬間、俺の中の何かが爆発した。

 葵を捕まえている金髪に向かって走り出す。

「あん? 急に叫んだと思ったらなんだってーー」

 何かを喋っていた金髪の顔面を真正面から殴り飛ばす。金髪の男はいきなりの事で、油断していたのか大きくバランスを崩して1mほど吹き飛ぶ。


「葵! 大丈夫か!?」

 葵の方を向いて安否を確かめると、葵は俺に抱き着いてきた。

「りょう……! 私……私……!」

 泣きじゃくって顔が大変なことになっている。

「ごめんな? ほら、そんなに泣いたら化粧落ちるぞー?」

「だって……! 私……怖くて……! でもどうしようもなくて……!」

 余程怖かったんだろう。話している内容も要領を得ない。

「クソが! テメェいきなり何しやがる!」

 金髪の男が立ち上がる。


「何しやがる? だと? それはコッチのセリフだ!」

 葵に手を出して、あまつさえ泣かした。コイツらは……絶対許さねぇ。

「テメェ……その女の連れか?」

「構わねぇだろ。殴って言う事を聞かせればいいだけだろ!」

 今度は茶髪の男も一緒に向かってきた。

「りょう……」

 葵の心配そうな顔。それを見て、俺は少しだけ冷静さを取り戻した。

「オラァ!」

「クソやろぉ!」

 目の前まで来ていた男達のパンチが腹と顔にヒットする。

「かはっ……!」

「りょう!」

 葵が心配してくれているが、思ったよりもダメージがきた。このまま葵を守りながら蹴散らす訳にもいかない。

「葵! こっちだ!」

 葵の手を取って俺は走り出す。

「ちょ、ちょっと遼!? 待って! 走りずらい!」

 そうだった! 葵は浴衣だった。

「しょうがねぇ……。じっとしてろよ!」

 俺は葵を抱きかかえて走る。

「まちやがれ!」







「ハァ……ハァ……なんとか撒いたか?」

 人気の少ない所までやってきて、後ろを振り返るが追ってきている感じはなかった。

「り、遼? あの、そろそろ、降ろしてほしいんだけど……」

「あ? わ、わりぃ!」

 自分が葵を抱きかかえている事をすっかり忘れていた俺は、慌てて葵を地面に降ろしてやる。





 近くにあったベンチに座り、やっと一息つく。

「あのさ……遼。ありがと……助けに来てくれて」

「気にすんな」

 それだけ言葉を交わして、2人の間に沈黙が訪れる。


 「そういえば……どうやって私の場所が分かったの?」

 葵が沈黙を破り、聞いてくる。

 「声が聞こえたんだよ。俺を呼ぶ声が」

 なんだか厨二臭い言葉だなと思いながら、そう答える。

 「そっか……聞こえたんだ……」

 そう言いながら、ふふっと小さく笑う葵。

 「なんだよ?」

 「ううん、何にも!」

 いたずらっ子みたいな笑顔で俺を見る葵。


 言わないと。


 その言葉が俺の中で木霊する。伝えるんだ。俺の気持ちを。ダメで元々、玉砕覚悟!

 やってやらぁ!!!

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