表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
TSしたから全力で満喫しようと思う  作者: 犬たろう
第5章~love? like?~ √
74/76

着慣れない浴衣

 皆で夏祭りに行こうという話になった。

 その話をお兄ちゃんにしたら、なんと! 浴衣を買ってくれた! しかも、私好み! 淡いピンクの生地に、薄紫の小さい花が所々に描かれている。


 しかも、どこで覚えて来たのか知らないけど、着付けまでしてくれた。

「よし、これでいいな。どうだ葵? キツすぎたりしないか?」

「う~ん……少しキツイような?」

 帯で巻かれた辺りがちょっと苦しい。

「浴衣はそんなもんだ。緩すぎると、動いた時に着崩れしてしまうからな」

 ほへ~そんなもんなのか。




「よーし! じゃあ行ってきます!」

「気を付けるんだぞ。夏祭りで人がごった返している。そういう時は、タチの悪い連中が息を潜めてる可能性が高いからな」

 親みたいなことを言うお兄ちゃん。

「分かってるよ! 優斗達も居るし、はぐれなきゃ大丈夫!」

 そう言ってお兄ちゃんに手を振り出発した。





 大丈夫。今日は夏祭りを楽しむのは二の次だ。一番の目標は、遼に私の気持ちを伝えること。この前の遊園地で、夏希やひよりんに背中を押して貰ったんだ! やってやる!


「葵~!」

 考え事をしながら歩いていると、前から声がかかる。

「夏希! 優斗!」

 2人を見つけて走ろうとしたが、着慣れない浴衣のせいで思ったように動けなかった。

「走りずらっ!?」

「浴衣で走るもんじゃないよ~」

 にゃははっと笑う夏希。そんな夏希も今日は浴衣を着ていた。薄いオレンジの生地に大きな花が所々に描かれていた。

「夏希も浴衣なんだ! 似合ってるよ!」

「そう? ありがと! 葵もちょー可愛いよ!」

 お互いに浴衣を褒めあっていると、暇そうな優斗が声を出す。

「さっさと行こうぜ~。電車が混んだら面倒臭いし」

 この男にはレディを褒めると言う言葉はないんだろうか……。



 そんなこんなで、会場に着いて皆と合流する。

「ほわぁ……ひよりん可愛い……」

 綺麗なひよりんの金髪は3本の三つ編みをお団子に纏めた様な髪型になっていた。そして、それを際立たせる水色の浴衣。所々に金魚が描かれている。もっと派手なので来る思っていたから、余計に驚いた。

「ま、まぁ? (わたくし)なら似合いますわ!」

 そう言っているひよりんの顔は少し赤かった。可愛いやつめ。


 男陣はいつも通り私服だった。まぁ、私も男の時は私服だったな。甚平だと財布とか仕舞うところないんだもん。


「あ……遼」

 ふと、遼と目が合って反射的に逸らしてしまう。

「に、似合ってるじゃん……その浴衣」

「あ、ありがと……」

 お互いに目を合わせずにそう言葉を交わす。




「よっしゃー! 花火が上がるまでにまだ時間もあるし! 楽しむぜーい!」

 いつもの如く走り出す優斗。

「おいこら! はぐれたら合流が面倒に……ってもう見えなくなった……」

 私の静止も聞かずに優斗は人混みの中へ消えていった。

「まぁ、優斗なら大丈夫でしょ。それより、あたし達も行こっ!」

 夏希に手を引かれて色んな屋台を見て回る。









「やべぇ……」

 私は今、危機的状況に陥っている。

「はぐれた……」

 辺りもすっかり暗くなり、会場は更に人で溢れ返っていた。

「うひゃぁ……この中から皆を探すのは至難の技だな……」

 ちなみにスマホは部屋で充電していたのを忘れてきていた。

「どうしよ」

 辺りを見回すが、人、人、人! 皆の姿は見当たらなかった。

「あのデカい遼ですら見つけられないとすると……絶望的だ……」

 落胆する私には、気付いていなかった。後ろから歩み寄る影に。






 ~遼side~

「葵はどうだ? 繋がったか?」

 スマホで連絡を試みている夏希に優斗が聞く。

「ダメみたい。この喧騒だし、もしかしたら気付いてないかも」

 首を振って力なく答える夏希。

「この人混みではぐれるのはマズイな……。アイツちっちゃいから見つけられん」

 俺はそんな事を言いながら、内心焦っていた。こんな大イベント、タチの悪い連中が居てもおかしくないからだ。

「はぐれないように、グループになって探そう。僕は日和と向こうを探すよ。3人はあっちを頼むよ!」

 晶也の提案により、晶也と日和。俺、夏希、優斗のグループで葵を探すことになった。







 ~葵side~

「な、なんですかあなた達」

 やっべー! マジピンチ! 変な人達に絡まれたー!

「そんなに警戒しなくても大丈夫だよ? ただ、オレらと遊ばないかなって」

 見た目からしてチャラい金髪の男がそう言って近づいてくる。

「け、結構です! 友達と来ているので」

「え~? でも、どこにも居ないじゃん? 君みたいなカワイイ娘を置いてどっかに行っちゃう友達より、オレらと遊ぼうぜ? な?」

 金髪の男の隣に居る茶髪のチャラい男がそう言う。

「あの……その……」

 急な事にこちとら頭の中パニックだよ! 出掛ける時にお兄ちゃんが言っていた言葉を思い出す。

『タチの悪い連中が息を潜めてる可能性が高いからな』

 うぅ……ごめんお兄ちゃん。早速捕まりました……。

 「な? そうそう、アッチに花火がよく見える所があるんだよ。そこ行こっ」

 金髪の男に腕を掴まれた。

 「は、離してください!」

 必死に男の手から逃れようとするが、強い力で掴まれていて、私の力ではどうしようも出来ない。

 「あーこらこら、暴れない……の!」

 金髪の男が更に力を入れてきた。

 「痛っ……!」

 や、やばい。怖い。脚がガクガクして、上手く踏ん張れない。

 「おいおい、そんなに怯えさせたら可哀想じゃん」

 ヘラヘラと茶髪の男が笑いながら金髪の男に言う。

 「おう、そうだな。ごめんねー? 大丈夫だよ? 怖くないよー?」

 怖いっ。自然と目に涙が浮かんでくる。体の震えが止まらない。誰か……助けて……。


 そう願っても、周りの人は面倒事は嫌だとばかりに、私を無視していく。

 誰か……助けてよ……。

 「んじゃ、行こっか」

 そう男が言って、無理やり肩を抱かれる。その瞬間、私は持てる力の全部を声に出して叫んだ。

 「遼ー!!!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ