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TSしたから全力で満喫しようと思う  作者: 犬たろう
第5章~love? like?~ √
73/76

不安

 最近、葵がなんだか冷たい気がする。

『別に』 『なんでもない』 『用があるから』


 いつもだったら、何でもない言葉。だけどそれが、今は冷たく感じる。もしかして、嫌われた? 俺の気持ちが知られたって事か? だとしたら、やっぱり気持ち悪いとか思ったのか……。


 俺は部屋の天井を見上げる。

「葵……」

 そう呟いた俺の右手には、夏祭りと書かれたチラシが握りしめられている。






 ~次の日~

「夏休みもあと2週間! というわけでやって参りましまた!」

 優斗の提案で俺達は遊園地に来ていた。


 ここは全国的に名の知られている遊園地だ。なんでも日本一のアトラクションが沢山有るとか。


 「よっし! つーわけで、まずはジェットコースターだろ!」

 テンションの上がった優斗が、ジェットコースターに向けて走り出した。

 「わ、(わたくし)、怖いのは苦手ですのよ……」

 「大丈夫! 僕が隣に付いてるから!」

 いつの間に仲良くなったのか、晶也が日和を勇気づけていた。

 「よーし! 葵、あたし達も行こ!」

 「うん」

 夏希が葵の手を引いて走っていく。

 「……………俺も行くか」





 「おせぇぞ遼!」

 「おー、わりぃ」

 優斗がジェットコースター前から俺を見つけて駆け寄ってきた。それに対して、適当に返事する。

 「な、なんだよ? テンション低いなおい」

 「いつもこんなもんだろ」

 適当に優斗をあしらいつつ、ジェットコースターに乗り込む。





 「いやー! 流石日本一の高さを誇るジェットコースター! ちょー面白かったな!」

 「おー、そうだな」

 優斗に適当に返事を返しながら葵を見る。


 夏希が葵に抱き着き、なにやら話しているが、ここからだと声が周りの喧騒に紛れて聞こえなかった。




 その後も色々とアトラクションに乗ったが、正直そんなに覚えてない。昼飯も食ったけど、その味すら覚えてない。楽しかったかどうかなんてのは、今の俺には至極どうでもよかったんだ。




 「男と女で分かれるか」

 観覧車の前にやってきた俺達は、葵の提案で3:3に分かれることになった。流石に6人全員で乗るには狭すぎる。てか、観覧車って4人乗りとかそんなのだろ。


 そんな事を考えていると、ゆっくりと上昇していく観覧車。1つ下のカゴには葵達が楽しそうに話している姿が見えた。


 「なぁ遼。お前さ、今日どうした?」

 急に優斗がそんな事を聞いてきた。

 「んー? どうしたって……別になんともねーよ」

 体調は悪くないし、あーでも腹は減ってるな。

 「でも、今日は葵ちゃんと一言も喋ってないよね? 葵ちゃんと何かあった?」

 晶也が心配そうに俺を見ている。

 「……別に」

 そう答えるのが精一杯だった。何かあったか? そんなの俺が聞きたいぐらいだ。

 「そ、そっか。ごめんね、変なこと聞いて」

 そう言って晶也は外を眺める。


 暫しの沈黙。それを破ったのは…………俺だった。

 「最近さ、葵が冷たい気がするんだ。避けられてるっつーか」

 なんで話したのか分からない。俺と葵の問題なのに。


 俺はことの顛末(てんまつ)を2人に話した。葵が最近冷たい事。俺が葵の事を好きなこと。嫌われたく無い事。全部話した。



 「そうなんだ……」

 俺の話を聞いて、晶也は考え込んでいる。

 「あのさー、俺バカだけどさ、聞いてくれる?」

 優斗が急にそんな事を言い出した。

 「なんだよ」

 とりあえず聞いてみるか。優斗にはあんまり期待してないけど。


 「お前が思ってる事と同じ事を、葵が思ってるんじゃねーのかなって。だからお互いに食い違いしてて、お互いがお互いを避けてるっつーか……。あー! 上手く伝えられねぇ! なんとなく俺の言いたい事を察してくれ!」

 優斗の意見は、俺にとって新鮮だった。俺と葵の思っている事は同じ。ということはーー

 「葵は俺のことが好き……なのか?」

 そう言うと、2人は「コイツ何言ってんだ」みたいな目で見てくる。

 「気付いてなかったのかい?」

 「俺もバカだけど、遼もバカだな。下手したら俺よりバカだな」


 葵が俺のことを……。そんな事ある筈ないと、初めに切り捨てた考えだった。そもそも、それを否定する為に俺はこんなに苦しんでいたんだ。


 「まぁ、なんかよく分かんねーけどさ、お前の気持ち伝えたら? やってみないと分からねぇこともあるしさ」

 優斗に諭されるとは思ってなかった。コイツ意外と考えてるんだな。

 「分かった。伝えてみる」



 来春の夏祭り。そこで俺は想いを伝える。そう心に決めて、遊園地を後にする。





 ちなみに、葵達の所でも似たような会話をしていたのは、遼の知るところではない。

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