頼りになるお姉さん
あれ? おかしいな……文字数がいつもより少ない……
「はぁ……」
「あら? どうしたの葵ちゃん? ため息なんて吐いちゃって……幸せが逃げちゃうわよ?」
バイトが終わって更衣室で着替えていると、無意識にため息が出てしまっていたのか、隣で着替えていた麗華さんが少しイタズラっぽく微笑む。
「ちょっと友達の事で悩んでて……」
「ふ~ん……ねぇ葵ちゃん? この後時間はある?」
顎に手を当てて少し考える素振りを見せた麗華さんがそんな事を言い出す。
「時間はありますけど……」
「じゃ、ちょっと私の家で話さない? お姉さんが若者の相談に乗ってあげよう!」
左手を腰に当て、右手で自分の胸をポンッと叩いて笑う麗華さん。
「お邪魔します」
「はい、どーぞ~」
麗華さんの家は、メイド喫茶にゃんにゃんから歩いて10分程度の所のアパートにあった。靴を脱いで部屋へ案内されると、とても綺麗に片付けられた部屋へ通された。
「ほえ~……綺麗なお部屋ですね」
「そう? これでも散らかってる方なんだけどね」
そう言って机の上を見る麗華さん。机の上には、なにやら書類が沢山置かれていた。でも、それだけだ。
「いや~、私の部屋より全然綺麗ですよ!」
私の部屋なんて優斗や遼が漫画を読んで仕舞わないから、散らかり放題だ。いっつも片付けてるのに気が付いたら散らかってるのだ。
「あら、そうなの? 葵ちゃんってしっかり者のイメージがあるから、お部屋も綺麗だと思ってたんだけど」
「友達が散らかして帰るんですよ……」
麗華さんが入れてくれた紅茶を飲みながら、そんな他愛もない会話をする。話していて分かったことが、麗華さんは意外とやんちゃだってこと。幼い頃はよく男友達と遊んでたとか。今では想像も出来ないぐらいお淑やかな大人の女性なのに……。
5分ぐらい話しをして、麗華さんが急に手をポンッと叩きながら私を見る。
「あ、ごめんごめん! 悩みを聞いてあげるんだったね! ついつい楽しくてお喋りしちゃった」
テヘッという感じで舌を出して自分の頭を小突く麗華さん。いわゆるテヘペロだ。でもね、なんだろう……大人な女性が少し抜けた所をみせるのは……とても魅力的だ。
流石に全ての話を麗華さんに話すわけにもいかないので、大雑把な説明をした。
「う~ん……友達が嘘をついていて、苦しんでいるかもしれない。かぁ……」
真剣な表情で考えてくれる麗華さん。
「その子が自ら望んで嘘を吐く道を選んだ、でも今は苦しそう。それって、自分で選んだ道だから今更後戻り出来なくて、後悔してるのかもしれないわね」
「あ……」
麗華さんの言葉が、私の中に空いていた穴にすっぽり嵌った気がした。自分で選んだから後戻り出来ない。晶也やひよりんは、その状態なんじゃないか? だとしたら、紺野さんの「目を覚まさせてください」にも納得できる。
「何か分かった?」
「はい。でも、どうやったら助けてやれるのか……」
「そんなの簡単よ? 後戻り出来ないなら、新しい道を用意してあげて、そこに導いてあげるの。葵ちゃんになら出来ると思うわ」
麗華さんはそう言って私の肩に手を置く。
「麗華さん……ありがとうございます!」
「うん! どういたしまして。頑張ってね」
麗華さんにお礼を言って、帰路につく。
「よし……やってやる……! 私が晶也とひよりんを助けるんだ!」




