頭の中が、ぱーりないっ!
いわゆる導入なので短め。
あれ? このセリフ前にも言ったような……。ま、いっか!
「う~ん……」
部屋の机に向かい、既に2時間。机の上には何も書かれていない紙とペン。
「うがー! わけわかんねー!!!」
そう言いながら頭を抱え込み机に突っ伏す。
「どうしたらいいんだ?」
キャンプから帰って来てから、紺野さんに言われた言葉がずっと頭の中に居座り続けている。
『坊ちゃんは嘘を吐いていらっしゃる』
そんな事を言われても、私にはどうすることも出来ない気がするんだけど……。
『それほど、葵様の事を好いているのでしょうな』
この言葉も気になる。結局何が何で、どっちがどっちなんだよ。好きだけど、嘘を吐いている。なのか、嘘を吐いているけど、好き。なのか……。
「あー……ダメだ。頭がおかしくなりそう……。気分転換にダイゴロウの散歩でも行くか」
「ワン!」
「おー、よしよし、今連れて行ってやるからなー」
ダイゴロウにリードを付けて、いざ散歩へ!
「って……結局ダメだ~……。気分転換にもならない。頭から離れてくれない……。紺野さんもイジワルだぁ……」
結局、ダイゴロウの散歩をしていようが紺野さんの言葉は常に頭の中にある。気分転換も出来やしない……。
「はぁ……」
深いため息を吐きながら歩いているとーー
「あれ? 葵ちゃん、奇遇だね」
聞き覚えのある超えに反応して、声の主を見るとそこに居たのは晶也だった。
「お、おう、晶也か! 確かに奇遇だな! 今日は天気も良いし、あ、でも、暑いか! でもでも、それが夏らしくて良いよな!」
紺野さんに言われた言葉を考えていると、必然的に晶也の事を考えることになる。そんな時に、晶也に出くわしたらテンパるのもしょうがない。うん、しょうがない! テンパって意味不明な会話をしてもしょうがない!
「う、うん? どうしたの葵ちゃん? 様子がおかしいけど?」
「な、なんでもない! 様子がおかしいのは、いつもの事だろ! なっ?」
分かってるよ。自分でもおかしいのは分かってるよ! だから、そんな心配そうな目で見るなぁ!
「もし、なにか悩みがあるなら僕に任せてよ! 相談にも乗るしさ!」
いつもの様に屈託の無い笑顔をする晶也。寧ろ、お前の話を聞きたいんだか!? とは口が裂けても言えない。
「う、うん。ありがと! ちょっとこの前のキャンプ疲れが残ってるだけだから大丈夫だ! じゃあ、私散歩があるから!」
そう言って、半ば逃げるようにしてその場から立ち去る。
「私のバカ~!!! なんで、あの時さり気なく聞けなかったんだぁ~!!!」
部屋に戻ってくるなり、ベッドに倒れ込みバタバタと手足をバタつかせる。
「はぁ……てかさ! よく考えたら、晶也の事ばっかりじゃなくて、ひよりんの事も考えないとダメじゃんかよ~!!!」
紺野さんの言葉を再度頭の中で思い出す。
『お2人はとても仲が良かったのです。少し喧嘩をしただけで、壊れるような仲ではありません』
「つまり、ひよりんも嘘を吐いているかもしれないってことか……。あーもうダメだ……。私1人には荷が重すぎるよ……」
「あぁ……何んだかよく分からんが……。ジタバタしてる葵も可愛いなぁ……。流石俺の妹だ!」
半開きになったドアの隙間から兄、誠が覗き込んで鼻から血を出していたのは……葵の知るところではない。




