雷と幽霊は天敵
「よー、遼だ。今回は俺視点の話だってよー。ま、楽しんでくれたら嬉しいな。後書きは葵がやるらしいぞー」
ゴロゴロゴロ…………
「ふぁ~……まだ2時か…………トイレ行こ」
雷の音で目を覚ました俺はトイレへ向かう。途中、窓の外を見てみると土砂降りだった。
「寝る前は晴れてたのにな~。山の天気は変わりやすいって言うしこんなもんか」
独り言を呟きながら長い廊下を歩いて行く。するとーー
「んあ?」
雷が光って、真っ暗な廊下に一瞬だけ明るくなった。その一瞬、何かが廊下に蹲っているのが見えた。
「…………ってなんだ葵か。何してんだ?」
近づいてみると、そこに居たのは葵だった。
「ひゃうっ!? ……りょ、りょう?」
急に声を掛けたからか、葵はビクッと跳ねてゆっくりとコチラを向いた。俺はスマホのライトを点けて葵を照らした。
「葵? お前なんで泣いてーー」
ドッカーン
雷が光ったと思った瞬間、窓ガラスが揺れる程の音をさせて雷が落ちる。
「おー、今のは凄かったな~。どっかに落ちただろ。……葵?」
窓の外を見ていた顔を葵の方へ向けると目の前では再び蹲っている葵が居た。
「あばばばばばばばばっ……………………もうやだ、うちかえりたい」
「お前、雷ダメだっけ?」
そう聞くと葵は物凄い勢いで首を縦に振る。
「昔から雷だけは……ひっ…………ダメなんだよぉ……」
目に涙を溜めながら、時たま小さく鳴る雷にも反応する。
「そうなのか。てかさ、ここで何してたんだ?」
「えっと、その、トイレに……」
お前もかよ。今言われて俺もトイレに行きたいことを思い出したわ。
「俺も行くから一緒に行くか?」
「お、おねがーーひぃっ……おねがい……」
そう言って俺の服の裾を、ちょこんと掴む葵。やべぇ……可愛い……。って違う違う! 断じて違う!
「りょう……? トイレ終わってもちゃんと待っててくれよ? 勝手に1人で戻らないでくれよ?」
トイレの前で何度も俺に釘を刺す葵。
「分かったって。置いていかないからさっさと用を済ませろ」
「うん……」
ようやくトイレに入っていく葵。
「はぁ……俺もさっさとして待つか」
晶也の別荘のトイレは男女別にある。しかも店のトイレかってぐらい広いし、便器も多い。
「こんなに居るか? ここ家なんだろ?」
「ふぁ~……ねみぃ……」
トイレを済ませた俺は葵を待つべく廊下に出る。
「にしてもあれだな……。こんだけ雨降って雷鳴って、オマケにここは別荘ときた。幽霊の一つや二つ居てもおかしくないよな~……なんて、流石に晶也に失礼か」
窓の外をを見ながらそんな事を呟く。
「ゆ、ゆうれい?」
「おわっ!? 葵かよ……ビックリさせんなよ。ほら、戻るぞ」
急に背後から声がして驚いたが、振り返ってみると葵だったので少しだけ安心した。
「な、なぁ……幽霊って言ってたけど……見たの?」
相変わらず俺の裾を掴んでいる葵がそんな事を聞いてきた。
「いーや? 出そうだなーってだけだ」
「そ、そうか…………」
風のせいか、窓枠がガタガタと音を立てて揺れ、時たまバターンと何かが閉まる音がする。
「な、なぁ! ほ、ホントに見てないんだよな!? 幽霊なんて居ないんだよな!?」
「だから見てねーって」
さっきから葵は音に怖がっている。でもさ、音って言っても窓枠が揺れる音とか、隙間風で半開きだった扉が閉まる音とか、そんなのばっかだぜ? それが分からないほど怖がってるってことか。
「ほれ、着いたぞ」
ようやく葵の部屋に到着した。のはいいんだけど、葵がなかなか俺の服を離さない。
「葵ー? 着いたぞー?」
振り返って葵を見ると下を向いたまま微動だにしない。
「……だ……………」
「ん? 何か言ったか?」
「やだ」
は? やだ? 何が?
「やだー! 雷怖いし、遼が幽霊とかなんとか言うから、1人で寝るなんてやだ! 遼と一緒に寝る! じゃなきゃ死ぬ!」
急に顔を上げて、駄々をこねだす葵。
「はぁ!? 一緒にって、ベッド一つしかないだろ!? どーやって寝るんだよ!」
「大丈夫! ここのベッドめちゃくちゃ広いから、2人で寝ても余裕だって! だから、一緒に寝て! いや、寝てくださいお願いします!」
いやいやいや、問題はそこじゃないんだって! お前と俺は、男と女! それが同じベッドで寝るだぁ!? ダメに決まってーー
「だ、ダメか?」
うっ……そんな目で見つめるな! 捨てられた子犬みたいな目で俺を見るな! くそぉ! 可愛いじゃねーかぁ! はっ……! 違う違う、俺と葵は友達。それ以上でも以下でもない。…………あれ? なら、一緒に寝るのも別に問題ないんじゃ…………いやいやいや、それは友達でも問題あるだろ!?
「りょ、りょう? 嫌なら……私我慢するけど……。うぅ……でも怖いなぁ……」
「あー! もー! 分かったっての! 勝手にしてくれ!」
「やったー! ありがと! ひゃうっ!? ……急に光るのはやめてよ……」
「りょう? もう寝た?」
とりあえず、ベッドに入って寝ようと努力をしたんだよ。でもさ、寝れるわけねーよな!? こんな状況で!
「……なんだよ」
「あのさ……ありがとな。私のワガママ聞いてくれて」
「おー」
さっきからずっとこの調子だよ! 葵が話しかけてきて、それに俺が返事するだけ! でもな? これだけでも睡眠って妨害されるもので…………ごめんなさい、本当はドキドキして眠れないだけです。
「りょう?」
「もう寝ろ。明日も遊ぶんだろ?」
「うん。……おやすみ」
「おう」
暫くの間沈黙が続いた。葵もようやく寝たか……俺も寝るか。丁度睡眠欲も限界だし。
「りょう? 何回もごめん。起きてるかな?」
あー、ダメだ……眠すぎて答えられねぇ……。
「寝てる……かな? よし、ちょっとごめんな……」
もぞもぞと葵が動いているのが分かる。何してんだ?
「よいしょっ……と。うん、やっぱり怖い時は何かに抱き着いてないと寝れないな! 遼には悪いけど、1晩だけ抱き枕になってもらおう」
な、なななななな、何やってんだコイツーーー!!!
「ふぁ~……安心したら……ねむくなってきた…………」
背中に葵が抱き着いている感覚がある。ヤバイ、ヤバイぞ俺! 睡魔がどっかに飛んでいっちまったよ!
「あ、遼の匂いがする……。あ~……なんか落ち着くなぁ……。なんでだろ?」
やーめーてー!? 鼻を当ててスンスンするのやめて下さいます!? くすぐったいし、俺の理性が壊れそうになるから!?
「ふぁ…………余計に……ねむく……なって…………」
スースーと寝息を立てて寝てしまった葵。俺はいったいどうしたら……。これは明日の朝まで眠れないパターンだな……。はは……明日は寝不足だな……。
「いつも読んでくれてありがとな! 私、雷がダメなんだけど、幽霊もダメで…………うぅ……話してたら怖くなってきた……。りょう~!」




