ばーべきゅー!
「ふむ、どこも異常は無いようじゃな」
晶也が呼びつけた鬼龍院家の専属医に、私と遼は体に異常が無いか診てもらっていた。
「ありがとうございます」
「ま、くれぐれも水の中へ入る時は準備体操をしておく事じゃな」
白髪で眼鏡を掛けたおじいちゃん医者。フォッフォッフォと笑って部屋を出ていく。
「本当にごめんな、遼?」
隣に座ってボーッとしている遼に話しかける。
「んー? あー、気にすんなー」
そう言って私の頭に手を置いてくる。いつもなら反抗するが、今回は迷惑を掛けちゃったし、我慢しよう。めちゃくちゃドキドキしてるけど……。
「うにゅ……でも…………」
「あのさー、謝罪じゃなくてお礼が聞きたいんだけどー?」
少しだけ頭に乗せられた手に力が入る。
「う……ごめん。じゃなくて、ありがとう」
「んー」
頭の上の手から力が抜けて優しく撫でてくる。
「んっ……くすぐったいからやめろ、このやろー」
「葵~! 大丈夫だった? もう、ホントに心配で……」
医務室から大広間までやってくると、私を見つけた夏希が駆け寄ってくる。
「うん、体に異常は無いって言われたから大丈夫!」
「そっかぁ……よかった~」
心底心配してくれたんだろう。目は少しだけ赤く腫れていた。
「そう言えば、他の3人は?」
優斗、晶也、ひよりんの姿が見当たらないから夏希に聞いてみる。
「3人なら夕飯の用意してるよ?」
えぇ……私達の心配は無いんですかね……。
「おー! おかえりー! どうだったー?」
優斗がバーベキューコンロを弄っていた。
「ただいま。異常は無いってさ。で、何やってんの?」
「ん? これ? 夜はバーベキューするから火を起こそうとしてるんだけどさ~、なかなか着かないんだよな」
そりゃ、着かないだろ……。種火も何も入れてないじゃん……。
「はぁ……優斗? 種火は?」
「たねび? ナニソレ」
ここまでバカだとは……。
「わかった、私がやるから優斗はーーって晶也とひよりんは?」
「あー、食材取りに行ってるぞ」
「ちょっと! 気を付けて運んでくださいまし!」
「なんだよ! ちゃんと運んでるじゃないか!」
あ~……なんかケンカしてるなぁ。あの2人にこそ、犬猿の仲って言葉が似合うよな~。
「あ! あおちゃん! 遼様!」
私達に気が付いたひよりんが大きなボウルを持って走ってきた。
「体は大丈夫でしたの?」
「うん、異常無しだってさ」
心配そうに体のあちこちを見てくるひよりん。
「よかったですわ……。バカ晶也とか優斗は大丈夫だー、なんて言ってましたけど心配で心配で……」
「む、その言い方だと僕が心配してなかったみたいに聞こえるじゃないか」
割って入ってきた晶也がムスッとした顔をする。
「まぁ、心配してなかった、って言ったら嘘になるけど晶也が専属医呼んでくれたし大丈夫かなって」
暇になった優斗がうちわ片手にやって来た。なんでうちわ……。ここ冷房効いてるんだけど?
「なー、なんでもいいから始めよーぜー。腹減って倒れそう」
遼のお腹から、ぐぅ~っと大きな音が鳴った。
「はいはい、すぐに準備するから待ってて」
「肉焼けたぞ~……って遼寝てるじゃん」
焼けた肉を遼の所へ持っていくと、ソファに座ったまま寝てしまっていた。
「遼? おきろー、肉だぞー」
体を揺さぶったり、肉を鼻の前でプラプラさせたり、ほっぺたをペシペシ叩いたりしたけど起きる気配がない。
「うう……体に異常が無いとはいえ、体への負担は大きいんだろうなぁ」
遼の寝顔を見つめながら、申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
「よいっしょ。ごめんな~迷惑掛けて」
遼の隣に腰掛けて、遼の頭を撫でる。
「ホントに気持ち良さそうに寝るなぁ……うりうり~……あ、嫌がった」
遼のほっぺたをツンツンしてやると嫌がって顔を逸らす。
「あおちゃーん……って遼様寝てますの?」
ひよりんがサラダを持って私達の所へやって来た。
「うん、やっぱり体への負担が大きかったんじゃないかな」
「そうですの……私が見ておきますわ。あおちゃんも自分の分を確保しないと、あそこのバカ2人に全部食べられてしまいますわよ」
ひよりんが優斗と晶也を指差している。
「あはは、あの2人大食いだからなぁ。じゃあ、お願いするよ」
「ええ、おまかせあれですわ」
自分の胸をトンっと叩いてみせるひよりん。
「あーおーいー! ちょっとこの2人に言ってあげてよ! お肉ばっか食べないで野菜も食べないって」
コンロ周りに来たら、夏希がほっぺたを膨らませ怒っていた。
「あー、やっぱり肉ばっか食ってたか。こら2人とも! 野菜も食べろよー!」
目の前で肉にがっつく2人の皿に野菜を山盛りで置いてやる。
「バーベキューってのはな! 肉さえ食えればいいんだよ!」
「やっぱり、男は肉だね!」
よく分からない持論を振りかざす優斗と、男=肉という公式を振りかざす晶也。
「はぁ……食べないって言うならデザート抜きにするよ」
そう言ってやると、2人の箸がピタリと止まる。
「デザート?」
「まさか……葵ちゃんお手製の……?」
「そうだよ」
わなわなと野菜を見つめる2人。そして、おもむろに野菜を箸で掴み口に運ぶ。
「野菜うめー!」
「うん、美味しい! おかわりできるね!」
わざとらしい感想を言いながら野菜を口にドンドン運んでいく。
「お前らは子どもか……」




