大きな手
薄れ行く意識の中、誰かが必死に手を伸ばしている。これって天国へのお迎えってやつかな? 準備体操もせずに川に入ったのが悪かったなぁ……。自業自得と思えば、これもしょうがないか……。
そんな事を考えていたら、誰かの手が私を掴み抱え込む。
あ、遼じゃん。なんだよ、こんな所まで来たのかよ。そんなに私のチーズケーキ食えなくなるのが嫌かよ……。バカだなぁ。
そこで私の意識は途絶えた。
「あ…………い! あお………!」
誰かが何かを叫んでる。誰だよ……。あの世にまで来て騒がしい奴だな。
「あおい! しっかりしろ! 葵!」
薄らとした意識の中で、ハッキリと私の名前を呼んでると認識した。
「ぷはっ! はぁ……はぁ……」
何事かと跳ね起きる。
「よかった~! 意識戻った~!」
そう言って夏希が抱き着いてくる。
「え? え? 何? どゆこと?」
訳が分からず皆の顔を見る。
「どういうことも何も……。あおちゃん溺れたんですのよ」
ひよりんが心配そうな顔で私を見ている。
「溺れた? 私が? 良く生きてたな私……」
どうやら溺れたみたいだ。でも、こうして生きてるとは……。
「遼君が助けてくれたんだよ」
晶也がそう言って横に寝転がっている遼を見る。
「そうなのか……。ありがとな遼! …………遼?」
いくら声を掛けても遼から返事がない。
「おい……? 遼? なんだ、寝てるのか? おーい。なぁ、遼起きないんだけど」
不思議に思って皆を見る。
「な、なんで黙ってるんだよ……何か言えよ!」
皆は顔を伏せたまま何も言わない。そんな中晶也が口を開く。
「遼君は、葵ちゃんを助けた後意識を失って……まだ目を覚ましていない」
は?
「ちょっと待てよ! それって…………」
「いや、ちゃんと息はあるよ。だけど、まだ目を覚まさないね」
目を覚まさないって……。
「私のせいだ…………」
「葵……それは…………」
「私のせいだよ!」
夏希を遮って声を荒らげる。
「ごめんな……遼……私が鈍臭いばかりに……」
遼の頭を撫でてやる。
「うぅ……りょう……ぐすっ……ごめんな……」
自然と涙が溢れてきて遼の胸に顔を埋める。
「あおちゃん……別に死んだ訳じゃありませんわ」
「でも……」
ポンっ
「え?」
急に頭の上に何かが乗った。
「ったくよー……人が気持ちよく寝てる所を邪魔すんなよなー」
遼の手だった。
「あ……りょう……りょう~!」
目を覚ました遼を見て私はさっきよりも強く遼に抱き着いた。
「なんだよー……元気じゃねーか。あんまりくっつくな、苦しい」
「だって……だって……」
顔中が涙でぐちゃぐちゃになっているが、そんなのお構い無しに遼に抱き着き続ける。
「わかったわかった、わかったから落ち着けって」
「落ち着いたかー?」
「うん……ありがと」
私が落ち着くまで、遼はずっと頭を撫でてくれていた。遼の手って大きいなぁ……。やっぱ男なんだな~。うにゅ~……落ち着く……。
「はっ……! い、いつまで撫でてやがるこのやろー!」
ペシッと遼の手を払いながら距離を取る。
「なんだー? 照れてるのか?」
「う、うっさい!」
あう……顔が熱い。まともに遼の顔を見れない。
「ごめんごめん。いつもの葵だな、少し安心した」
「な、なんだよそれ……」
「お二人さん~お熱いことで~」
ヌーっと現れた夏希に少しだけ驚く。
「ひょわっ!? な、なんだよ、いきなり!」
「いやいや、いきなりじゃないし。ずっと居たし」
「あおちゃん……いいなぁ……頭ナデナデ……」
「顔が緩んでる葵もええのぅ」
「何言ってるんだい優斗君。葵ちゃんは全て可愛い。これ常識だから」
皆がそれぞれヌーっと現れる。
「えっ、ちょっ、もしかして皆見てた?」
皆は一斉に頷いた。
「ぁぅ……」
恥ずかしさが限界を超えた私はその場に倒れる。
「えっ、ちょっ、葵!?」
「たたた、大変ですわ! あおちゃんがまた倒れましたの!」
「よし! 人工呼吸をだな……」
「優斗君! それは僕がやろう!」
「ぷしゅ~……」
恥ずかしさに目を回す私をまた撫でてくれる遼。
「大丈夫かー?」
大丈夫じゃないです。その行為が私を殺しに来てるから!?




