緊急事態
エマージェンシー! エマージェンシー!
「死ぬかと思った……」
「ご、ごめん……」
岩の上で死にそうになってる遼に謝りながらさっきの事を思い返す。
胸に思いっきり顔を埋めた遼を、私は思いっきり水面に押し付けた。当たり前だが、顔を水面に浸けられた遼はバタバタと踠く。いつもなら力負けする筈なのだが、その時の私は恥ずかしさの頂点だった訳で……遼が抗えない程の強さで押さえ付けていた。
慌てて優斗達が止めに来てくれたけど、放っておいたら大変な事になっていただろう。
「うぇっぷ……軽く水飲んじまった……」
「ホントごめん……」
「はっはっはっ! 遼君は何も分かっていないな! 葵ちゃんにあんな事されたら普通ご褒美だろう!」
あ、ダメだコイツ早く何とかしないと……そのうち絶対間違いを犯すぞ……。
「アホですわ」
ひよりんの冷たい言葉が木霊した。
「あれ? どこいったんだろ」
「んー? どしたー?」
キョロキョロとしている私に遼が近づいてきて聞いてくる。
「うん、サンダルが見当たらなくて」
「サンダル? んー…………あ、あれじゃね?」
遼が指差した先には、水面でプカプカ浮いている私のサンダルだった。
「あちゃー、あんな所に……。取ってくるよ!」
「おー、深いから気を付けろよー」
「わかってるー!」
パタパタと走っていき再び川へ入る。
「よっ……と、ふぅ……この川広すぎるんだよな~。お腹減ったし、疲れたし、ちょっと休憩しないとな~。っ!?」
サンダルを拾って岸へ戻ろうとした時、足に痛みが走った。
「しまっーーー」
足が吊ったのだ。
バシャバシャバシャバシャ
「ん? 葵のやつ何やってるんだ?」
水面をバシャバシャしている私を見つけて優斗が手を振っている。
「たす……け…………」
どんなに踠いても片足が吊っているから上手く顔を水面の上に出せない。ヤバい……溺れる。てか、溺れてる!
「溺れる真似でもしてるのかな? 葵ちゃんもなかなか愉快な事をするね!」
晶也が親指を立ててグッジョブ! とかしてるけど、こっちはそれどころじゃない!
ヤバい……どんどん沈んでーーー。って深っ!? こんなに深かったのか!?
「ごぼっ……!」
う……水が…………。息が……苦し…………。
~遼side~
「葵のやつ何やってるんだ?」
優斗が何やら水面でバシャバシャしてる葵を指差している。
「溺れる真似でもしてるのかな? 葵ちゃんも愉快な事をするね!」
晶也が葵に向かって親指を立てている。何やってるんだアイツは。さっさとサンダル拾って戻って来いよ……。腹減ったんだよー。
「ねぇ! ちょっと溺れる真似にしては様子がおかしくない?」
夏希が少し慌てて葵を見る。
「確かに……どんどん沈んでいってるような気がしますわ」
日和も夏希と同じように葵を見ている。
「たす……け…………」
一瞬、声が聞こえた気がした。葵の声だ。皆を見てもどうやら気付いていない様子だ。
「たす……け? んー? タスケ? なんだそりゃ」
聞こえた気がする声の意味を考える。ん? 待てよ? まさか……!
バッシャーン
「えっ? ちょっ! 遼!?」
気がついた時には川に飛び込んでいた。後ろから優斗の声が聞こえた。でも、そんなことどうでもいい。今は葵が……!
葵が沈んだ辺りまで来て潜ってみる。
「……………………………」
随分と深い所に葵がピクリとも動かず沈んでいた。
『葵!』
1度水面に出て、大きく息を吸い込む。そして、勢い良く葵の居る所まで潜っていく。
『くそっ! 死ぬんじゃねぇぞ! 葵!』
随分深く潜ったが、なかなか葵の所まで手が届かない。
『くっ……届かねぇ……。それに息も辛くなってきたな……』
どんどん息が苦しくなってくる。でも、ここで水面に引き返してたら葵が助からないかもしれない。
『くそがっ………! あと少し…………がぼっ!』
あと数センチの所で息が上がって思いっきり水を飲み込んでしまう。
『よし! 掴んだ!』
意識が朦朧としながりも葵の手を掴む。葵を抱え込み水面まで一気に浮上する。
「ぷはっ! はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……」
息が整うのを待たず岸へ葵を運んでいく。
「遼! って葵!? ホントに溺れてたのか!」
優斗が駆け寄ってきて俺に手を貸してくれる。
「はや……く……葵、を………」
「わかった! 晶也! 平らな所にシート引いてくれ! 夏希と日和は温める物!」
なんとか優斗に葵を託し、俺は意識を失った。




