動き出す5人
「なあ? いくらなんでもおかしくね?」
いつもの屋上で昼飯を食べている時に優斗がそんな事を言い出す。
「やっぱり……おかしいよね」
夏希もそれに便乗して俯かせていた顔を上げる。
「確かに、風邪にしては長引きすぎだね」
晶也も弁当を片付け話に入る。
「あおちゃん、何かあったのかな……」
日和はなかなか箸が進まず、とうとう弁当に蓋をしてしまった。
「色々聴き込んでみるかー。ま、ただの風邪なら問題ないし。……けど、なんかありそうだよなー」
パンを口の中に放り込んだ遼が立ち上がる。
「う~ん……何人か葵を見たって人は居るんだけど、場所がバラバラだね」
皆で聞いて回った内容をスマホにメモしていた夏希が唸る。
「でもさ、どうやら先生に頼まれごとしてたのは確からしいな」
優斗がメモを眺めながらそう言う。
「じゃあ、先生に聞いてみようか」
夏希はスマホを仕舞いながら歩き出す。
運良く葵に頼み事をした近藤先生を発見し話を聞いてみる。
「ん? 月野瀬? ああ、確かに書類を運んでくれって頼んだが?」
「どこに運んで貰ったんですの?」
「えっと……確か、特別棟の3階、元コンピュータ室で今は物置になってる所だな」
「ここかー、スゲー人気ないなー」
周りを見渡しながら遼が呟く。
「この当たりで何かないか探してみよう」
晶也が取り仕切り、各人散らばっていく。
「とは言ったものの……何を探せばいいかわかんねーよなー……っと?」
突き当たりの教室から声が聞こえた。
「うん? こんな所に人?」
そーっと教室を覗き込む優斗。
「だっはははははは! マジで傑作だわ! アイツ、学校来てねーんだと!」
「うっわー、単位とか大丈夫なのかなー? ぷぷっ」
「あは、あはははははは! ざまあみろ!」
3人の女が何やら爆笑している。
「なんだ?」
少し気になって皆にメッセージを入れる。
「どうしたの優斗?」
声をかけられ後ろを見ると夏希達が集まっていた。
「ああ、夏希か。いやさ、アイツら葵の事で何か言ってるんだよ」
音を立てないように聞き耳を立てるとーー
「月野瀬のあの顔! 泣きすぎて自慢の可愛い顔がぐちゃぐちゃ! こんなの笑うしかないよね!」
狐目の女が腹を抱えて床を転げ回っている。
「あいつら……絶対葵に何かしたよね?」
怒りに震える夏希が今にも飛び出して行きそうだ。
「まぁ、待て! 葵に何をしたか分からないだろ?」
優斗の言うことはもっともだ。何をしたか分からないのに、責めてもとぼけるに決まってる。
「ごめん、僕は無理だ」
ガラッ
晶也が勢いよくドアを開けて中に入っていく。
「あのバカ~!」
日和が怒りながらも晶也に続いて教室へ入っていく。
「君たち! 葵ちゃんに何をした?」
3人の女の前に仁王立ちする晶也。その後に他も続く。
「あ? って……鬼龍院君!?」
狐目の女が晶也に気づき慌てて女の子らしく座り直す。
「ん? 君達は確か……エミ君、ヨウコ君、ナオミ君だったかな」
「え? なに? 知り合い?」
遼が隣から晶也に聞く。
「いや、この大学の全員の名前と顔を覚えているだけで、別段知り合いでもない」
サラッと凄いことを言う晶也に、日和と夏希はドン引きだ。
「えっと、鬼龍院君……その、アタシに何か用かな?」
モジモジと顔を赤らめながら狐目のナオミが晶也を見る。
「月野瀬 葵の事で君達に聞きたいことがある」
そんなナオミを諸共せず晶也は淡々と質問をする。
「え、えーっと、なんの事か分からないな~」
ナオミは目線を泳がせはぐらかす。
「そんな筈ありませんわ! さっき教室の外で聞いていたら、あおちゃんの泣いた顔がどうと言ってましたわよ!」
日和が我慢ならんとでも言いたげに床をダンッと足で踏む。
「え、えっと……」
どうやら日和の言葉が聞いたのかタジタジになるナオミ。
「ちょっとさー、立ち聞きとかどーなのー?」
ギャル風のヨウコがイライラしながらナオミの隣にくる。
「ねぇ!? もういいじゃん!? コイツらも同じようにしてやれば黙るよね!? そうだよね!?」
おっとりした雰囲気のエミが半ば発狂気味に懐からカッターを取り出す。
「コイツっ!」
身の危険を感じた優斗は夏希と日和を後ろに下げる。
「おー、なかなか手荒いねー」
パキパキと指を鳴らす遼。お怒りモードだ。
「で、そのカッターで葵ちゃんに何をしたのかな?」
ドスの効いた声で晶也が女3人に近づいていく。




