迫る暗い手
今回は珍しく何話かに分かれてのシリアスです
「うーがー……疲れた~」
先生に書類を運んでくれって言われて了承したは良いけど……まさかあんなに量があるとは思わなかったな~。もうヘトヘトだよ。
「アイツだよね……」
「そうそう」
「可哀想に……1人で居るからアタシらに狙われるんだよ……」
「う~優斗達にも手伝って貰えば良かった…………ってあれ? 行き止まり。ボーッとし過ぎてたかな~」
疲れすぎて何も考えずに歩いていたら廊下の突き当たりまで来てしまった。
「はぁ……戻るのめんどくせ~」
ため息を吐いて回れ右をした。そうすると、目の前に見知らぬ女性が3人居た。
「よう、アンタが月野瀬 葵?」
狐目の女が聞いてくる。
「そうだけど? え~っと……面識あったっけ?」
なんだろ? 面識は確か無いはずだし、何か用かな?
「アタシらさ、アンタにちょっとばかし話があるんだよね。だから、そこの教室で話そうよ」
狐目の隣に居るギャル風の女が言う。
「? 別に良いけど」
なんかよく分かんねーけど、話があるなら聞くか。
この時、私は3人の様子がおかしいことに気付くべきだった。
「痛っ」
ドンッとギャル風の女に突き飛ばされ、おもわず尻餅をつく。何事かと女3人を見る。
「あ? 何、その目は? ムカつくんだけど」
狐目の女が近くの机を蹴っ飛ばして怒りを顕にする。
「あらあら~怯えちゃって~うふふ~」
おっとりした雰囲気の女が近寄ってくる。
「な、なに?」
この人、おっとりした雰囲気なのに……なんか怖い。
「ふ~ん……綺麗な髪だね~。ムカつく」
私の髪を触っていたかと思ったら、急に髪を強く引っ張られる。
「い、痛いって! 急になんだよ!?」
訳も分からず痛みに悶える。
「あなたさ~、ちょっと欲張りすぎだよぉ。鳴川君に鬼龍院君、更に佐渡君までも侍らせて……」
うっすらと開かれた目の奥には怒りが見えた。
「エミ~? あんまり強くしたら可哀想だよ~?」
狐目の女が笑いながら私の髪を掴んでいるエミと呼ばれた女に言う。
「ちょっと~アタシにも遊ばせて……よ!」
ギャル風の女が寄ってきて、思いっきりお腹を蹴られる。
「かはっ……」
綺麗に鳩尾に入った蹴りで、一瞬息が出来なくなる。
なんでだ? なんでこんな事になってるんだ?頭の中をグルグルと色んな考えが目まぐるしく駆け巡る。
「あれ~? こんな所にカッターがあるよ~?」
狐目の女がわざとらしくそんな事を言う。
カッター? 一体何を……。
「あぁ! それでコイツの髪切っちゃおうよ! ねぇ! それがイイよ!」
おっとりした雰囲気のエミが、狂ったかのように叫ぶ。
「うっわー、エミ容赦ないね~」
未だ私を蹴り続けているギャル風の女が爪を弄りながら笑う。
「よーし! んじゃあ、断髪式を開始しまーす! ヨウコ、カメラ担当で~」
狐目の女がカッターの刃を出しながら近づいてきて、ギャル風の女……ヨウコと呼ばれた女に指示を出す。
「さて、綺麗な髪ともおさらばだね~」
カッターの刃を首筋あてがってくる。
「ぐっ……」
怖い。なんでこんなに怖いんだ。涙がどんどん溢れてくる。くそっ! 女相手にこんな醜態晒すなんて! 抵抗したいのに体に力が入らない。
「カメラおっけーでーす!」
ヨウコと呼ばれた女が手を挙げて合図する。
「みなさーん! 月野瀬 葵ちゃんの断髪式でーす」
そう言って狐目の女はカッターを私の髪に当てがった。
ジョキッ
「あ…………」
とても切れ味が良かったのか1回で髪を切られた。目の前に髪がハラハラと舞い落ちる。
「ぷっ………あっはははははははははは!!!」
狐目の女が高笑いをする。
「ねぇ!? 今どんな気持ちなのかな!? ねぇ!?」
エミが顔を近づけてきて物凄い眼光で聞いてくる。
「あらら~可哀想な葵ちゃん……ぎゃはははは! だめ! 傑作だわ~!」
ヨウコはカメラを回しながら笑い転げる。
「んじゃ、この事誰かに言ったら次は殺すから」
ひらひらと手を降って狐目の女と他2人は去っていく。
私は切られた髪を眺めながら自分の髪を触る。
「あ~あ…………かなり切られちゃったな~……」
髪はショートヘアぐらいまでバッサリと切られていた。ポタポタと目から涙がこぼれ落ちる。
「ひっぐ……皆に…………なんて言い訳しようかなぁ……」
この後授業で顔を合わせることになる優斗達の事を思い浮かべる。
その日、葵は体調が悪くなったと言って授業を休んだ。
葵たん……(´;ω;`)




