乙女な悩み
「う~ん……」
お昼休み。自分の前髪やら後ろ髪を弄りながら唸る。
「どーしたの?」
弁当を片付け終えた夏希が寄ってくる。
「う~ん……髪伸びたな~と思って」
夏希に返事をしながらも髪を弄り続ける。女の子って良くこうやって枝毛探ししてるけど……私見つけた事ないんだよな~。もしかして探すの下手なのかな?
「確かにね~。初めの頃に比べたらだいぶ伸びたかも。ほら」
そう言ってスマホの画面を見せてくる。
え、なんで私の写真あるんですか?しかもそれ、女になって数日しか経ってない頃のじゃん。いつ撮ったんだよ……。
「う~ん……切るか迷うな~」
女になった当初は肩ぐらいまでの長さだったのが、今では肩甲骨の下ぐらいまで伸びてきている。正直、切ってサッパリしたい気持ちもあるけど、ここまで伸びたし勿体ないとも思う。
「あ! そうだ! あそこで暇してる男共に聞いてみようよ!」
夏希は手をポンッと叩いて、優斗達を指差した。
「聞くって……何を?」
「決まってるじゃん! 今のままが良いか、切った方が良いかだよ!」
善は急げだよ! と言って夏希に手を引かれ優斗達の所へ連れてこられる。
「あら? どうしましたの?」
遼の斜め後ろの方で、ちょこんと座っていたひよりんが私達に気づいて声をかけてくる。
「どうした? って……うっわー夏希の顔がイタズラっ子のそれになってるよ……」
私達に気がついた優斗は、寝転がっている体勢から顔だけをこっちに向けた。
「ちょっとー! イタズラっ子の顔って何よー!」
優斗に茶化され膨れっ面になる夏希。やだ、この子カワイイ。
「あのね、葵が髪を切ろうか迷ってるんだって。だから、男性諸君に意見を貰おうと思ってーー」
「そういう事なら僕に任せたまえ!」
夏希を遮って晶也が立ち上がって声を上げる。
「晶也うるさいですわよ! 遼様が起きたらどうするんですの!?」
ひよりんが晶也を一喝する。ああ、遼は寝てたのか。どうりでひよりんがちょっとずつ遼に近づいていってる訳だ。
「あー、ひよりん? ごめんだけど遼を起こしてくれる? 一応ここにいる男3人の意見を聞きたいから」
「むぅ……分かりましたわ。り、遼様……起きてくださいまし……」
少し残念そうにしながらも、ひよりんは遼を揺さぶる。あれ? 心做しかひよりんが嬉しそうだ。遼を起こせる&触れるのが嬉しいのか~。ウブよの~。あ、でもちょっと顔赤いや。
「ぜ、全然起きませんわ……」
いやいや、こんな所でガチ寝するなよ……。しょーがない……あの手を使うか。
「ひよりん。遼の耳元で、チーズケーキの宅配でーす って言ったら起きるよ」
「絶対嘘ですわよね!?」
私の方へ大きく身を乗り出して聞いてくる。
「ホントだよ? 遼はチーズケーキの事になると人が変わったようになるから」
私の言葉を若干疑いながらもひよりんは遼の耳元へ口を近づける。
「り、遼様~、チーズケーキの宅配ですわよ~」
まさに恐る恐るといったように遼の耳元で囁く。すると……。
「チーズケーキ!? どこ!? どこにあるんだ!? 日和!」
目をカッと開き、素早い動きで立ち上がって周りを見渡す遼。
「ひゃあっ!? ほ、ホントに起きましたわ!?」
いきなり立ち上がった遼にびっくりして、ひよりんが尻餅をつく。
「よし、起きたな。遼! 残念だがチーズケーキはない!」
未だチーズケーキを探し回っている遼にそう言うと、心底落ち込んで膝をつく。
「そんな……チーズケーキが…………ない……だと……!?」
遼のせいで話の本筋からズレたが、ようやく目的を果たせそうだ。
「で、だ。髪を切ろうか迷ってるんだけど、お前らはどう思う?」
改めて今回の相談の内容を話し、目の前の男達に聞いてみる。
「鬱陶しいなら切っても良いんじゃね?」
「僕はどんな葵ちゃんでも良いよ!」
「今のままでも良いだろー」
優斗、晶也、遼は口々に言う。
「意見が全員違うんだけど……晶也に関しては切る切らない関係ないし……」
はぁ……と、ため息を吐いて夏希を見る。
「う~ん……まさか意見が分かれるとは思わなかったよ~うんうん」
たははっと笑って誤魔化す夏希。
「ま、いいや。髪が長い方が色んな髪型出来るしこのままにしよーっと」




