晶也と2人でお出かけ
にゃふー!
「おはよう葵ちゃん! 今日は2人きりって事はデートかい?」
朝、玄関の前に立っている晶也。そう、晶也も言った通り今日は2人きりだ。
理由は簡単。他の皆は全員予定があって来られないとの事。その中応じたのが晶也だった。
今日は少し遠くへ出掛けて服を見たいのだ。そろそろ夏という事もあって随分と暑くなってきた。そこで生じた問題が、夏用の服を持っていない。という至極簡単な問題だ。
「いや~それにしても葵ちゃんと2人きりでお出掛けとは……今日は何も予定が入っていなくて良かったよ! 神に感謝だ!」
電車に揺られながら、隣でテンション上がってる晶也を見る。
「お前さ……電車の中でぐらい静かに出来ないのか?」
ほら、周りの人見てるよ……。ごめんなさい、ウチのバカが……。
晶也の独り言にテキトーな相槌をしていると、ようやく目的の駅に着いた。
うわっ……休日なだけあって人がいっぱいだ。はぐれないようにしないとな……。
「うわ~人が沢山居るね~。葵ちゃん、ほら」
そう言って晶也が手を差し出してくる。
ん?何?お手しろってか?それとも、腹減ったから何かくれってことか?
そんな事を考えていると晶也が無理やり私の手を握ってきた。
「えっ!? ちょっ!?」
慌てる私に対して晶也はあっけらかんとしている。
「どうしたの? ほら、人が多いからはぐれると大変でしょ? だから、手を繋いでおこうかなって」
ああ、そういう事か。てっきりデート気分を味わいたいから手を繋いできたのかと思った。なんだ、案外しっかりしてるじゃん。
晶也が手を繋いでくれていたお陰ではぐれずに済んだ。途中で何回も人に押し潰されそうになったけど、その度に晶也が壁になってくれた。
「ふぅーやっと駅の外に出られたね。葵ちゃん大丈夫?」
晶也が振り返って私の顔を覗き込む。
「あう……ちょっと人酔いした……かも」
どうしても身長が低いから周りに見えるのは人ではなく壁みたいなもの。そんな中を潜ってきたんだ。私頑張った。私偉い。
「そっか……あ、ちょっと待っててね」
そう言って晶也はどこかへ行ってしまう。こんな人混みの所で1人にしないでくれ……。あーうー……気持ち悪い……。
「ごめんごめん、人が多くてなかなか辿り着けなくて。はいこれ」
ようやく戻ってきた晶也が手にしていたのは、水の入ったペットボトルだった。
「え? これ……」
戸惑う私に晶也はニコッと笑う。
「ほら、気分が悪いって言うからさ……なら、水を飲んで落ち着いてもらおうかなって。迷惑だったかな?」
少し申し訳なさそうに晶也は言う。なんだよ……気が利くじゃんか。
「ううん、ありがと。……んくっ……んくっ……んくっ…………ぷはー」
ふぅー少しだけ落ち着いたかな。
「どう?まだ気分が悪いなら、さっき公園を見つけたからそこで休む?」
心配そうに私を見る晶也。なんだか今日の晶也は頼もしいな。
「ごめん。じゃあ、ちょっと公園で休ませて」
手を合わせて謝る私を晶也は、気にしないでと言って手を引いてくれる。
「ふぅ……」
公園に着き、陰になっているベンチに腰掛ける。時折吹く風が心地良い。
「なんかごめんな? 色々世話して貰って」
隣に座って公園で遊んでいる子どもたちを笑顔で見ている晶也に声をかける。
「いやいや、気にしなくて良いよ。女性の事を大切にするのは男として当たり前だしね」
そう言って笑う晶也の笑顔に少しだけ気恥ずかしくなって顔を逸らす。
こいつ、平気でこういう事言うんだもんな~。うぅ……顔が熱い気がする。心臓だってバクバク言ってるし。あーもー! なんで晶也にドキドキしてるんだ私は!
「よし! もう大丈夫!」
しばらく木陰で休憩して気分も良くなったし!
「分かった。じゃあ、行こうか」
そう言って手を差し伸べてくる晶也。
「いや、もう手は大丈夫だよ」
晶也にこれ以上迷惑かけるわけにはいかないしな。
「そ、そんなっ! もっと葵ちゃんと恋人ごっこしてたかったのに!」
本気で悔しがる晶也はしょんぼりする。
そこまで落ち込まなくていいだろ……。なんかこっちが悪いみたいじゃんかよー。
「うう……葵ちゃんと…………恋人ごっこ……」
うわぁ……今にも泣きそうなんだけど? ぐぬぬ……今日は世話になりっぱなしだし、ちょっとぐらいなら……。
「ほ、ほら。今日は……と、特別だからな!」
落ち込んでいる晶也に向かって手を差し出す。くそーちょっと恥ずかしい。
「ほ、ホントにいいの?」
恐る恐るというように晶也は顔を上げて聞いてくる。
「良いって言ってるだろ! は、早くしないと手繋がないからな!」
うがー! 恥ずかしい! 恥ずかしさで死にそう!
「ありがとう葵ちゃん!」
しょんぼりしていた顔から、満面の笑みに変わる晶也。
なんだよ……コロコロ表情変えて。ちょっと可愛いじゃん。
「……って違う違う! そういう意味じゃなくて! ああ! もう! 何考えてんだ私は!」
「あ、葵ちゃん? 嫌だったらやっぱり手を繋ぐのやめるけど……」
ああ!? しまった! そうじゃないんだ晶也!
「ご、ごめん! 嫌なわけじゃ……ない。ただちょっと自分の心と一戦交えただけさ」
慌てて取り繕う。というか、一戦交えたってなんだよ! もうちょっと表現の仕方あったでしょ私!
夕方、買い物を済ませた私達は再び電車に乗って帰路につく。
買い物中に気づいたんだけど、こいつ意外と優しいんだよ。
なんていうか、れでぃふぁーすと? って言うのかな? ドア開けてくれたり、何も言わずに荷物持ってくれたり、疲れてないか気遣ってくれたり。いつものバカさはどこへ行ったの? って感じだ。
もし、この感じをいつも出していたらきっとモテモテだろう。いや、もしかしたらギャップ萌えってやつを狙ってるのか!?
そんな事を考えながら、ボーッと晶也の顔を見ているとそれに気がついた晶也がニコッと笑う。
「どうしたの? 僕の顔に何かついてるかな?」
「あ、いや! 別に……なんでもない」
うぅ……なんだよー。今日1日ずっと思ってたけどその笑顔は反則だろーこのヤロー。
みょっーす!




