変わらないもの 後編
ちょっと長いですがお付き合い下さい┏○ペコッ
視点切り替えがあります。
~優斗side~
「はぁ…はぁ…葵…どこいったんだよ…」
葵が行きそうな場所は全部回った…。くそっ…何があったってんだ!イラつきからガードレールを蹴飛ばす。
「痛ぁ!?」
「優斗…あんた何やってんのよ…」
夏希がため息をつきながらこちらを見る。その顔はいつもの様な笑顔はない。夏希も心配なんだ。葵がいなくなってから3時間も経っている。もうすぐ夕方だ…。日が落ちたら探すのが更に大変になる。それまでには見つけねぇと…。
~葵side~
「俺が…俺じゃなくなる………なんの冗談なんだよ…」
怖いな……どうなっちまうんだ………。
「あれ…?ここって………」
ぼーっとしながら歩いていたら、昔優斗や夏希と良く遊んだ公園に辿り着いた。
「懐かしいな…」
ブランコに腰掛ける。そういえば、このブランコだ。優斗が調子に乗って前の砂場まで飛んでいったのは。
「ぷっ……今思えば、アイツどうやったらあんなに飛んだんだよ」
思い出し笑いをしながら、周りを見渡す。ここには小さい頃に良く来たがいつの間にか来なくなったよなぁ。
「あ…このラクガキ…まだ残ってたんだ」
ツチノコみたいな形をした洞窟状の遊具。優斗が昔ここに良くラクガキをしてたんだ。
なつき
あおい
ゆうと
壁には汚い字でそう書かれている。
「本当に懐かしいなぁ…………ぐすっ………消えたくないなぁ……………」
~優斗side~
「なぁ…夏希?」
「なに?」
「自分じゃなくなるって……どんな感じなんだろうな……」
夏希はゆっくりと首を振る。
「わかんないよ……葵が今どんな気持ちでいるのか………」
「だよなー……」
誠さんから聞いた話じゃ、葵の心が変わる?とかなんとか言ってたけど……正直俺はバカだからよくわからなかった。だけど……一つだけ確かに言える事がある。
「よっしゃ!もう少し探してみようぜ!」
「うん…!」
夏希は今にも泣き出しそうな目を擦って強く頷いた。
「葵が行きそうな所……かぁ………」
まだ回ってない所は…………
「あ………」
わかった…わかったぞ!絶対あの場所だ!そこに居る!
気が付いたら体は走り出していた。
「ちょっと優斗!?待ってよ!わかったの!?葵の場所が!」
夏希もなんとか着いてくる。
「夏希!昔よく遊んだろ!」
「えぇ?昔よく遊んだって………あっ!」
夏希もどうやら分かったみたいだな。そうあの場所以外に思いつかない。待ってろよ葵。
~葵side~
「ぐすっ………この気持ちすら…変わっちまうなんて………」
懐かしい思い出は俺の心に強く深く突き刺さる。この感覚すらも変わってしまうなら……この感覚が残っている間に………
「死んだら………」
死んだら、俺は俺のままで死ねる。俺の思い出も何もかも俺の物だ。だから…俺が俺でなくなる前に………。
体が無意識にふらっと車道側に動き出す。車道の右からは車が来ている。
「…………………………」
車道に飛び出す。スローモーションの様に景色が見える。驚いた表情の運転手。鳴り響くクラクション。そして、正面の道路から全力で駆けてくる優斗と夏希。ん?優斗と夏希?
「葵!!!」
「ふぇ?おわぁっ!?」
優斗が走りの勢いのまま俺の体を抱え込んで歩道側へ倒れ込む。
「あ……え………?ゆう…と?」
突然の事で俺は状況がよく理解できない。
「バカヤロウ!死ぬところだったぞ!」
「葵!大丈夫っ!?」
夏希も遅れて俺の隣にくる。
「え…?俺…は………何を…?」
一体何が起こった?ちょっとタンマ!マジで頭が回らん。
「だ、大丈夫だったかい!?お嬢ちゃん!」
車から降りてきた中年のおじさんは慌ててこちらに走ってくる。
「あ……はい……」
「そうか…なら良かったよ…すまないね…おじさん余所見をしてて…」
んん?誰かこの状況を説明してくれませんかね?
「大丈夫ですよ。こちらこそ友人がすみません。コイツいきなり飛び出して…」
優斗がおじさんと会話している。
「で?なんであんな事した?」
珍しく優斗が怒ってる。こえー…
「体が勝手に…」
「はぁ……まぁ運良く俺が見つけたから良いけど…本当ならあのままぶつかって死んでたぞ?」
死んでた?体が勝手に死のうとしたのか……?いや、違うな…。
「俺さ…怖かったんだ…。俺が俺じゃなくなるのが」
そうだ…怖かったんだ。
「今感じてるこの感情も…思い出も……全部変わっちまうんだぜ?お前らと遊んだこの記憶だって………だから、俺が俺である内に死んだらって考えたんだ」
今冷静になって考えたらおぞましい事この上ない。だいぶ気が動転してたんだな…。
「嫌だったんだよ………お前らの事も…何もかも変わっちまうって考えたら……ぐすっ……怖かったんだ……1人だけ取り残された様なそんな感覚が…………怖かったんだよ……寂しかったんだよ………ぐすっ………」
思いの丈を、口にすればするほど…目からは涙が溢れる。
「1人だけは…………嫌だよ…………」
「ばーか」
不意に優斗に抱き締められる。
「あ………え……?」
「変わらねぇよ……たとえお前が変わっちまっても…俺達は変わらねぇ」
優斗は静かに続ける。
「俺バカだからさ、よくわかんねーけど…葵は葵だろ?それは何があっても変わらねーよ」
「あ………」
目に涙が溜まるのがわかる。
「そうだよ?葵は葵なんだから……例え葵が遠くに行っちゃっても…あたし達の関係は変わらない」
夏希がそっと頭を撫でてくれる。
「じ、じゃあ………俺が心の底から女になって…男だった月野瀬 葵じゃなくなっても………友達で居てくれる……?」
「バーカ!当たり前だ!」
「当たり前でしょ?」
「う…あ………あぁ……」
涙が止まらない。押しとどめていたものが溢れてくる。こいつらの隣に居て良いんだ。友達で居て良いんだ。何もかもが変わっても…こいつらは変わらない。変わらず俺の隣に居てくれる。
「ったくよ~いい加減泣きやめよな~」
優斗がにししっと笑いかけてくる。
「女の子が泣いてる時は何も言わずに胸を貸すのが男でしょ?」
夏希が優斗にツッコミを入れる。その間も、ずっと俺の頭を撫でてくれている。
「だって…だって……ぐすっ……うああああ…」
こいつらが友達で…幼馴染みで良かった。
沈みかけの夕日が3人を赤く照らし出していた。
友って良いですね…(遠い目)
さて、次回からは葵が女の子を満喫していく予定です!
お楽しみに!(* 'ω')ノ




