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地上の楽園番外編  作者: 港瀬つかさ


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永遠にも似た、このひとときに

小ネタ。ケイロン。


 目の前では、定例のお茶会が開かれている。お茶会と言っても、大きなものではなく。そこにいるのは、俺の兄弟と親友達。詰まるところ、テバイ王家の直系達と、俺達シーリン家の直系達だけのささやかなお茶会。

 楽しそうに笑いながら、アイトラ姉上がお茶菓子を並べる。姉上お手製の焼き菓子を嬉しそうに食べているのが、セメレ姉上。笛の音に惹かれてやって来た小鳥と戯れるのが、オリオン。テセが朗々とした歌声を披露している。その唄に笛の伴奏をつけているのがメディだ。生真面目そうに周囲を警戒しているのが、イロス兄上。そのイロス兄上の肩に腕をのせて楽しそう笑っているのがライオス兄上。

 何処までも平穏な、大切なカタチ。誰にも壊されたくない。誰にも汚されたくない。誰に侵されたくない。この、空間だけは。

 アイトラ姉上とセメレ姉上が楽しそうにオリオンと談笑し。メディとテセが二人で眼を細めて何かを話し合い。イロス兄上とライオス兄上が、それを微笑ましげに見ている。俺にとって大切な、愛おしい人達。

 今だけは、どうか。永遠にも似たこのひとときだけを、大切にしたい。動乱の時は、迫っているのだろうけれど。俺はそれを、知っているけれど。このひとときが愛おしいのは、本当。

 まだ、誰にも言えないけれど。まだ、誰も知らないけれど。もうすぐ、俺はここを去るだろう。能力を、言い訳にして。本当は、それすら神の意志。



 抗うことは、俺にはできない。



 喪われていくだろう。大切なものが、ゆっくりと。一つ一つ、消えていくのだろう。だけれど、俺は。それを知っていても、何もできない。告げることさえ、できない。

 だから、今のひとときに。幸せを噛み締めさせて欲しい。この幸せを覚えている限り、俺は大丈夫だから。戻る場所を知っている限り、俺は生きていけるから。大切だということを、刻ませて下さい。

 愛すべき、テバイ王家の者達よ。

 テセ。生真面目で正義感に溢れる、けれど何処か馬鹿な親友。

 メディ。真っ直ぐと全てを受け止める、誇り高い俺の親友。

 オリオン。無垢であるが故に、誰からも愛される掛け替えのない末子。

 親愛なる、我が兄弟達よ。

 イロス兄上。堅物で融通が利かないけれど、誰より暖かい長兄。

 ライオス兄上。誰より強く、誰より脆い、けれどそれを隠し続ける哀れな次兄。

 アイトラ姉上。朗らかに笑い、全ての光を導くような優しい長姉。

 セメレ姉上。穏やかな微笑みで全てを癒す、優しい女神のようなすぐ上の姉上。

 皆、愛している。皆、大切だから。だから、覚えています。何年経っても、今のひとときを。愛すべきモノとして。



 祈りを捧げよう、このひとときが長く続くように…………。



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