表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
地上の楽園番外編  作者: 港瀬つかさ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

30/36

約束をしよう、それはとてもはかないものかもしれないけど

小ネタ。ライオスとイロス。


 剣を手にする度に。出陣を控えるたびに。戦の陣頭に立つたびに。誰かを手にかけるたびに。生命の遣り取りをする度に。

 いつか、死が訪れるのだと確信する。それは、誰にでも平等に降り懸かるだろう。俺にも、俺の主君にも。妹にも、弟にも。ただ一人だけの、兄にも。

 ならば、護りたいと。愛するモノ全てを、護りたいと。そう思うのは、エゴでしかない。解っていてなお、そう思う。


「ライオス。」

「あぁ、兄貴。どうかしたか?」

「先程の戦い方は何だ?」

「何だ、とは?」

「…………無茶もいい加減にしろと言っているのだ!」

「我が君を護るのが使命である事は、兄貴も解ってるだろ?だったら、敵の目を俺に惹き付けるのは当然だ。」

「ライオス!」


 叫ぶ、声が。それが耳を打ってなお、俺は思うのだ。その叫びが、俺への思いなのだと。親愛と友愛に包まれた、兄からの思い。解っていてなお、気づかないふりをする。

 あの時、我が君の傍らには、王太子と貴方がいた。他の誰でなく、貴方が。解っていたから、敵の目を惹き付けた。少しでも、貴方の元に敵が行かないように。護りたいと、思ったから。


「…………ライオス、約束してくれ。」

「……何を?」

「無茶はしないと。……死なないと。」

「……約束するよ、兄貴。他の誰でなく、貴方に。俺は、死なない。無茶もしない。貴方の側に、いるから。」

「…………約束だぞ?」

「…………あぁ。」


 約束ならば、しておきましょう。それが、例え儚いモノだとしても。けれど、俺は破るだろう。その約束を、破ってしまう日が来る気がする。

 護りたい。そう願ったからこそ。だからこそ、俺はきっと、約束を破る。貴方を護る為に、無茶をするだろう。

 けれど、言わない。口にしては、何も。いつか破られる約束を、口にして。それが儚いと、解っていても。

 理解される事がなくてもいい。罵られても構わない。他の誰よりも、貴方を護りたい。その為ならば、約束ですら破るだろう。貴方との、約束ですら。


「頼むから、無茶はしてくれるなよ?」

「大丈夫だって、兄貴。」

「お前の笑顔は、時折仮面のようだから・・・。」

「俺は、貴方にだけは嘘はつかないって。」


 そう、嘘はつかない。真実の全てを明かさないだけで。この約束も、真実。けれど、それを越える思いがある。ただ、それだけの事。それだけの事です、兄上。



 どうか、許して下さい。貴方を護る為なら、死すら厭わない俺を。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ