約束をしよう、それはとてもはかないものかもしれないけど
小ネタ。ライオスとイロス。
剣を手にする度に。出陣を控えるたびに。戦の陣頭に立つたびに。誰かを手にかけるたびに。生命の遣り取りをする度に。
いつか、死が訪れるのだと確信する。それは、誰にでも平等に降り懸かるだろう。俺にも、俺の主君にも。妹にも、弟にも。ただ一人だけの、兄にも。
ならば、護りたいと。愛するモノ全てを、護りたいと。そう思うのは、エゴでしかない。解っていてなお、そう思う。
「ライオス。」
「あぁ、兄貴。どうかしたか?」
「先程の戦い方は何だ?」
「何だ、とは?」
「…………無茶もいい加減にしろと言っているのだ!」
「我が君を護るのが使命である事は、兄貴も解ってるだろ?だったら、敵の目を俺に惹き付けるのは当然だ。」
「ライオス!」
叫ぶ、声が。それが耳を打ってなお、俺は思うのだ。その叫びが、俺への思いなのだと。親愛と友愛に包まれた、兄からの思い。解っていてなお、気づかないふりをする。
あの時、我が君の傍らには、王太子と貴方がいた。他の誰でなく、貴方が。解っていたから、敵の目を惹き付けた。少しでも、貴方の元に敵が行かないように。護りたいと、思ったから。
「…………ライオス、約束してくれ。」
「……何を?」
「無茶はしないと。……死なないと。」
「……約束するよ、兄貴。他の誰でなく、貴方に。俺は、死なない。無茶もしない。貴方の側に、いるから。」
「…………約束だぞ?」
「…………あぁ。」
約束ならば、しておきましょう。それが、例え儚いモノだとしても。けれど、俺は破るだろう。その約束を、破ってしまう日が来る気がする。
護りたい。そう願ったからこそ。だからこそ、俺はきっと、約束を破る。貴方を護る為に、無茶をするだろう。
けれど、言わない。口にしては、何も。いつか破られる約束を、口にして。それが儚いと、解っていても。
理解される事がなくてもいい。罵られても構わない。他の誰よりも、貴方を護りたい。その為ならば、約束ですら破るだろう。貴方との、約束ですら。
「頼むから、無茶はしてくれるなよ?」
「大丈夫だって、兄貴。」
「お前の笑顔は、時折仮面のようだから・・・。」
「俺は、貴方にだけは嘘はつかないって。」
そう、嘘はつかない。真実の全てを明かさないだけで。この約束も、真実。けれど、それを越える思いがある。ただ、それだけの事。それだけの事です、兄上。
どうか、許して下さい。貴方を護る為なら、死すら厭わない俺を。




