きみと共有するものは、空気とことばと、それともう一つ
小ネタ。ライオスとイロス。
カリカリとペンを走らせるイロスがいる。その背中を眺めながら、ぱらりと書類を捲るライオスがいる。日付も変わりそうな深夜、彼等は王宮の一室にこもっていた。好きでこもっているわけではないが、仕事が終わりきらなかったのだ。元々、シーリン家の屋敷は王宮のすぐ脇にあるので何の支障もないが。
だいたい、彼等は王族付きの側役だ。その存在は、王族の影となり盾となるモノである。故に、王宮に彼等の部屋が存在しても当然だ。ただ、幼かった頃と違い、今では自宅で眠る日の方が多いが。彼等が仕えるべき主君達は、どちらも彼等異常に武芸に優れている。お陰で、彼等が傍らを離れても、それ程心配事はないのだ。
同じ空間で過ごす時間。それがひどく大切であり、曖昧である事に気づいたのは何時だったか。子供だった頃には、気づかなかった。大人になって初めて、気がついた。大切すぎて、当たり前すぎて、忘れていた事に。
「兄貴。」
「何だ?」
「眠い。」
「終わらせてから寝ろ。」
「解ってるけど、大量すぎて終わらない…………。」
がっくりと肩を落としながら、ライオスが書類を点検している。話ながらもイロスはペンを走らせている。そんな二人の姿を見るモノは、いない。他愛なく、けれど必要不可欠な時間。
共有できる時間。曖昧ながらに、必要であるモノ。ことばと、空気と。もう一つ共有するモノが、空間。
同じ場所に生きている。同じ時間を生きている。振り返ればそこにいる。呼びかければそこにいる。
そんな、他愛なさが必要。
いつまで続くのかと。いつまで共にいられるのかと。聞くのはあまりにも愚かだ。彼等は、共に在る。
共に、生きていく。王家に仕え、盾となり。互いを気遣い、互いを思い合い。肩を寄せ合い、生きていく。
これから先も、ずっと………………。




