今だけは背中を見ててあげるけど、いつかは
小ネタ。ライオスとイロス。
背中。物心ついた頃から見続けてきた、兄の背中。背中を見て、溜め息を一つ。何時までも、庇われる身でしかなくて。もう、子供ではないと呟いた。
伸ばした指を、戻す。どうしても譲れない誓いがある。だから、その為には、いつか。背中を見るのをやめて、その前に立ちたい。
「ライオス。」
「ん?」
「また不機嫌そうだな。最近、機嫌が悪い日が多くないか?」
「や、別に機嫌は悪くないし。」
「違うのか?眉間に皺が寄ってるぞ?」
「夢見が悪かったり、考え事したりしてるだけさ。」
「本当に?」
「本当。ヒトの心配してる暇あったら、少しはマトモに休みな。」
その額を、指で弾く。お前は兄を何だと思ってるんだと、ぼやかれて。曖昧な笑みで誤魔化した。誤魔化すしか、できなかった。
違う。ないがしろにしてなんかいないさ。誰より大切なんだ。誰より必要なんだ。だから、背中を見ているだけの今が、嫌なんだ。
言えない。言わない。一生、言わない。ふざけて、戯れて、それで終わる。俺を誤解してくれたままで、いい。掴み所がなくてふざけた弟だと、思ってくれていれば。
護るから。俺は、絶対に護るから。その為に、力を欲した。その為だけに、強くなった。
もう、あの頃のように、幼くはないから。護られるだけではないから。あんな風に、傷つけさせたりはしないから。だから、ゴメン。
今だけは、まだ。背中を見ていてあげるから。だから、許して欲しい。大人になって、俺は我が儘になった。子供よりも、もっと。
いつかは、その前に立ちたい。護る側に、立ちたい。護られるのは、もう嫌だ。背中を見ているだけなの、もう嫌なんだ。
傷つく姿なんて、見たくないから。




