あの日から浮かぶのはいつも決まって
小ネタ。ケイロン視点でライオスとイロス。
ふと気づくと、目で追っていた。そして、俺は気づいてしまった。何故か、常に一緒に視界に入ってくる、二人の兄。仕える人間の側でない時も、常に二人で。何気ない時も、気づけば二人一緒だ。
イロス兄上は、多分無意識。ライオス兄上は、多分確信犯。微妙なその違いに気づいたのには、わけがある。それは、数日前のこと。
刺客が現れるのは、別に珍しいことでもない。王族の側役なんてモノをやっていれば、見慣れる光景だろう。俺はあの双子の親友で幼馴染みだが。まぁ、だからこそ鉢合わせするのはよくあることで。
けれど、その時は違った。その刺客の狙いは、イロス兄上。おそらくは、シーリン家の失脚を狙うモノの仕業。跡継ぎである優秀なイロス兄上さえいなければと。短絡的な思考に走った結果だろう。
そして、その時に。片腕一本犠牲にして、イロス兄上を庇ったのは。本来ならばそこにいないはずの、ライオス兄上。空間をねじ曲げて、無理矢理転移してきたらしい。片腕一本、魔法の代償にして。もう片方の腕で、刺客を切り伏せた。
多分、予想していたのだろう。イロス兄上は、体調を崩していた。マトモに剣を握ることもできない状態のイロス兄上を狙うだろうと。誰よりも頭の切れるライオス兄上ならば、見抜いていても当然だ。
「……ッ、ライオス……?!」
「兄貴、怪我は?」
「…………私は、平気だ。……お前、その腕……ッ!!」
「……あぁ、気にするな。転移魔法を強制的に行った代償だから。精霊に愛想を尽かされずにすんで、ホッとしてるよ。狙った場所に出られたし。」
「……この、馬鹿者が……ッ!!」
叫んだイロス兄上に、ライオス兄上は笑った。その微笑みにも似た笑みに、俺はぞっとした。優しい笑みが、その時初めて怖いモノだと知った。ライオス兄上は、誰よりも怒りを覚えていた。その怒りが、穏やかな微笑みに滲み出ていたのだ。
その後、ライオス兄上は治療を受けた。焼けこげていた片腕も、何とか元通りになった。口うるさく説教するイロス兄上を、ライオス兄上は気にしていなかった。俺と目が合うと、小さく笑う。その笑みが、怖かった。
あの日から、思う。あの笑みが、俺は忘れられない。いつか、ライオス兄上は死ぬ気がする。イロス兄上を、庇って。他の誰でなく、イロス兄上の為だけに。
エゴにも似た決意を感じた所為だろうか。一途すぎる思いを、見て取った所為だろうか。俺達には割り込めない何かが、そこにあった。ライオス兄上の、強すぎる決意が。
あの日から、俺は、ライオス兄上の笑顔が死を呼ぶようで、怖い…………。




