親衛隊長と王子様その5。
小ネタ。パリスとヘルメス。
その無意識さに救われている事を、君は知らない。
パリス:ヘルメスー。
ヘルメス:はい?
パリス:屈んで、屈んで。
ヘルメス:・・・・何ですか?(周囲にヒトがいるので一応敬語)
パリス:えーい!(わしゃわしゃとヘルメスの髪を混ぜる。)
ヘルメス:う、わ、ちょっ?!!!
混ぜ回されて、ぐちゃぐちゃになる髪。思わず、その場にへたり込む。何がしたいんだこの子供はと言いたげな、ヘルメス。対してニコニコ笑っているパリス。
ヘルメス:何が、したいんですか・・・・。
パリス:きれい。
ヘルメス:は?
パリス:ヘルメスの髪は、すっごくきれいだから。だから、さわってみたかった。
ヘルメス:・・・・・それは、どうも・・・。
にこっと笑う幼い第3王子。白銀の髪も蒼の双眸も持たない子供。金の髪も翡翠の双眸も持たない彼と、同じように。まるで異端である事の証のような色彩を宿して生まれた、子供。
ヘルメス:・・・・・俺の髪は、好きですか?
パリス:うん、好きーvきれいだもん。
ヘルメス:そう、ですか・・・・。
パリス:だめ?
ヘルメス:いいえ。光栄ですよ、パリス王子。
パリスをひょいっと抱きかかえて歩き出すヘルメス。楽しそうにヘルメスの髪を掴んで遊ぶパリス。多少痛みを感じながら、ヘルメスは微笑んでいる。無邪気な子供の言葉が、ひどく嬉しかった。
ヘルメス:という、非常に可愛い時期もあったのですが。
パリス:・・・・俺は今、猛烈にお前の脳味噌をかち割りたくなった。
ヘルメス:お断りです。
パリス:だったら、せめて俺の目の前でそういう話をするなーーーっ!!!!
ヘルメス:本人の前でやらないと意味がないだろうが。
パリス:確信犯か、この性悪ーーーっ!!!
ぎゃーぎゃーと叫ぶパリス。楽しそうに笑っているヘルメス。そんな二人を眺めて、アドニスはアレスを見る。その顔に浮かぶのは、楽しそうな笑顔だった。
アドニス:あの二人、本当に仲良いよな。
アレス:えぇ。本当に。
アドニス:言うと否定しそうだけどな。パリスが。
アレス:意地っ張りな方ですからね、王子は。
アドニス:だな。
幼かった子供の笑顔に救われたのは、本当の事。




