親衛隊長と王子様その4。
小ネタ。パリスとヘルメス。
それは、随分と昔の姿絵だった。
パリス:捨ーてーろーーーーっ!!!!!
ヘルメス:何故俺の持ち物をお前にあれこれ言われねばならんのだ。
パリス:他は見逃してやるから、それだけは捨てやがれぇぇっ!!!!
ヘルメス:却下。
パリス:ヘルメスぅぅっ!!!!
自分より身長の高いヘルメスの襟首を掴んで起こるパリス。平然とそんなパリスを見下ろしながら、綺麗な笑顔のヘルメス。二人の遣り取りを見て、アドニスは傍らの主席大臣を振り返った。長年の学友でもある青年は、穏やかに微笑んでいる。
アドニス:なぁ、アレス。
アレス:何でしょうか?
アドニス:何を揉めてるんだ?
アレス:殿下は、まだ王子が幼かった頃に姿絵を描いて頂いていたのはご存じですか?
アドニス:勿論。俺も描いて貰ったからな。
アレス:そのうちの一枚に、ヘルメスと一緒に描かれたモノがあるのです。
アドニス:俺は聞いた事がないぞ?
アレス:まぁ、それは当然かと。
くすくすと上品に笑うアレスに、アドニスは首を傾げた。何故と問いかけてくる王太子に向けて、彼は微笑む。いまだに揉め続けている二人を見詰めながら、彼はさらっと言い切った。
アレス:王子が描き手に怯えて、ヘルメスにしがみついている姿絵なのですよ。
アドニス:・・・あの、パリスが?
アレス:色々あった時期で、人間不信だったそうです。
アドニス:・・・ふうん。見てみたいなぁ・・・。
ヘルメス:ごらんになりますか、王太子?
パリス:見せるな、ボケ!お前も興味なんか持つなぁっ!!
アドニス:・・・わ、解った。
常にはない異母兄の剣幕に、大人しく頷くアドニス。しかしヘルメスは懲りていないらしく、懐から一枚の紙を取り出した。それを見た瞬間、パリスの顔色が変わった。
パリス:破り捨てろ、バカ野郎ーーーっ!!!
ヘルメス:可愛いじゃないか。
パリス:一生の汚点なんだ、抹消しやがれ!
ヘルメス:そういわれると、額に入れて飾りたくなる。
パリス:この性悪ボケエルフーーーっ!!!!
アドニス:いつもの事だな。
アレス:ハイ、いつもの事です。
穏やかな笑顔で二人を見守る、アドニスとアレスの姿があった。




