親衛隊長と王子様その3。
小ネタ。パリスとヘルメス。
それはいつもと変わりのないある日の事だった。
アドニス:・・・アレ、パリス?
ヘルメス:何かご用ですか、王太子。
アドニス:っていうか、その状況は・・・・。
ヘルメス:寝不足だそうで。
呆れたような表情のヘルメスと、驚きビックリのアドニス。ひょいとアドニスの背後から部屋を覗き込んだイアソンも、一瞬目を見張った。いつもなら、絶対に見る事ができない光景だ。そもそも、これだけぞろぞろいても起きない辺り、驚きかも知れないが。
アドニス:でも、何でソファで?
イアソン:俺としては、ソファ以前に膝枕に突っ込むべきだと思うが。
アドニス:何で?
イアソン:・・・・・・いや、先を進めてくれ。
ヘルメス:ご苦労様で。とりあえず、手近にいたから掴まったようなものです。
アドニス:だからって、良く大人しく膝枕してるよな・・・・。
ヘルメス:目の前で双剣技を疲労されたくないだけだ。
憮然としたヘルメスの言葉に、二人は納得した。詰まるところ、実力行使に出たわけだ。パリスの剣の腕前は折り紙付きで、相手をするのも大変だ。いくらヘルメスが歴戦の戦士であったとしても、苦労させられるのは必至だろう。だからこそ彼は、大人しく膝を貸しているのかも知れない。
アドニス:そうか、寝てるのか・・・・。
ヘルメス:起こしましょうか?
アドニス:いや、いいよ。どうせ父上もそれ程重要な事で呼んでるわけじゃないし。
ヘルメス:ミノスが?
アドニス:見合い写真の山を抱えてたから、多分それだろうし。
イアソン:意地でも行かないだろうと結論づけてきたんだがな。
ヘルメス:確かに、そんなことのために起こしたら、恨まれるな。
もっともらしく頷くヘルメスを残して、二人は立ち去っていく。その背中を見送って、ヘルメスは溜め息をついた。コレでは、本来の仕事すらできない。パリス個人の護衛ではないのだけれどと、口の中でぼやいた。それでもまぁ、嫌ではないのだが。
ヘルメス:お前が甘えてくるなんて、久しぶりだな。
まるで弟に対するかのように言って、ヘルメスは小さく笑った。




