親衛隊長と王子様その2。
小ネタ。パリスとヘルメス。
月が雲に隠れている日の深夜の事だった。
ヘルメス:何をやってるんですか、王子。
パリス:・・・・・。
ヘルメス:王子?
パリス:・・・ん、あぁ・・・。いたのか。
ヘルメス:何か、あったのですか?
パリス:無理してそんな口調しなくて良いぜ、別に。
ヘルメス:?
コレは本格的におかしい。そんな事を思ったヘルメスは、次の瞬間眉間に皺を刻んだ。風に乗って香る、血の臭い。それがどこから来ているのかに気付いて、さっと表情を変えた。柱と身体の間に隠れていたパリスの腕を掴むと、血に濡れた剣を握りしめる腕があった。
ヘルメス:・・・・また、どこぞの暗殺者か?
パリス:多分な。うっかり殺しちまった。
ヘルメス:怪我は?
パリス:誰に向かって言ってるんだ?俺の剣の腕前は折り紙付きだぜ?
ヘルメス:・・・・とりあえずその剣の血を落としてきてやるから、部屋に戻れ。
パリス:ヘルメス、俺は・・・・。
ヘルメス:戻れと言っている。
怒るような口調で言われて、パリスは頷いた。立ち去っていく後ろ姿を見送って、ヘルメスは兵舎に向かった。無造作に武器庫に剣を放り入れておき、そのまま台所へと向かう。誰もいない台所で湯を沸かし、そっとハーブティーを用意する。そのままティーセットを盆に乗せてパリスの部屋へ急いだ。
ヘルメス:入ります。
パリス:へーい。
ヘルメス:ハーブティーを入れてきました。少しは落ち着くはずです。
パリス:過保護だな、お前。俺はもう、ガキじゃねーぞ?
ヘルメス:本当に平気なら、空元気など必要ないと思うが。
パリス:・・・ッ!
さっと顔色を変えるパリスを見て、ヘルメスは苦笑した。カップにハーブティーを注いで、それを手渡す。そのまま、ソファに沈み込んでいるパリスの頭を軽く撫でた。幼い頃にしたように、何度も。
パリス:・・・・・・・もう良い。
ヘルメス:落ち着くまでぐらい、そばにいてやる。エルフは人間より睡眠が必要ないんだ。
パリス:・・・・・悪ィ。
苦しい時に、支えてくれるヒトがいるのを幸せというのです。




