表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/36

ごめんなさいと呟いて。

小ネタ。ケイロンとライオス。


 ゆっくりと、干渉を切り捨てるように、前を向いた。王都テバイの街の入り口である門をたった一人で越える。誰にも告げず、誰にも伝えず。それを裏切りだと言われても否定はできないままに、旅立つ。

 今日旅立つとは、伝えてはいない。最後まで、反対するばかりであった長兄にも。最初から、快く送り出そうとしてくれた次兄にも。心配しながら、笑って応援してくれた長姉にも。全てを知っているからこそ寂しげに微笑んだ次姉にも。誰よりも近い所にいた双子にも。兄のように慕ってくれていた子供にも。


 誰にも告げずに、只一人でこの街を出る。


 いずれ、自分が伝えねばならないだろう多くの神託。その神託によって運命を決定づけられるだろう友。抗う術さえ知らない彼に、何ができるか。傍にいて、平然と全てを伝えることなど、できない。降り懸かる運命が、何処までも残酷であることを知っているからこそ。

 ごめんなさい。振り返り、王宮に視線を向けて、小さく呟く。誰にも言えずに出てきた。何も残さずに出てきた。もう、戻ることはないだろう、あの暖かい空間。確かに愛していた、多くの人々。


「相変わらず、妙な所で薄情な弟だな。」

「・・・・っ?!」


 驚いて声の方を向いた先にいたのは、笑みを浮かべる次兄。どうしてと、掠れる声で呟いた末弟を見て、彼は笑う。伸ばされた掌がぐしゃりと頭を撫で、バカだなと告げられた言葉が染みこむ。何故ここにいるのかと不思議に思う弟を、兄は笑ってみている。


「バカを言え。俺はお前の兄貴だぞ?気付かないわけがないだろう?」

「・・・・・・・他の、方々は?」

「誰もいない。俺だけだ。」

「・・・・・・・・そう、ですか。」

「・・・・・なぁ、ケイロン。約束しろ。」

「え?」

「お前が受け取る神託が、王家の方々に影響するのならば、何をおいても俺に伝えろ。」

「・・・・ライオス、兄上・・・・。」


 真っ直ぐな目をした次兄。いつでも迷うことなく、自分の信念を曲げない兄。この人の強さが羨ましかったのだと、ケイロンは思う。こんな風に、只自分の信じたモノの為に突き進めれば、と。

 だから、だったのか。兄の言葉に、彼は頷いた。解りましたと答えるその頭を、ライオスは又撫でる。気をつけて行けと、頭上から声がかかる。優しくて、そのくせ何処か突き放すような、独特の声で。


「後は、お願いします。」

「任されよう。」

「・・・・・・さようなら、ライオス兄上。」

「・・・・・さらばだ、ケイロン。」


 振り返りもしない弟の背を見送り、兄は微笑した。強くなれと、囁きかけた言葉は風に消える。生きていけと、願うように告げた言葉は、無意識の産物だった。


 少年が旅立つ日、確かに別れがそこに存在した。


・・・・・凄いな、ライオス兄上。解るんだ・・・・。

しかもあえて一人で来る辺りが、この人の性格のような・・・。

この二人は仲が良いです。かなり仲良しです。

なんて言うか、お互いに遠慮がいらないし。

一人で生きていかなければいけないケイロンも、それなりに寂しいけど。

置いていかれる人間もやっぱり、寂しいんだと思います。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ