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連れていた先の世界で

 また来世、と彼女は言い残した。

















































「好きです」

 と告白されたのは初めてだった。それも面と向かって。

 俺にその言葉を告げた少女は、真っ白な髪で、赤い目をして、目鼻立ちは恐ろしいほど整っている。正面から見つめられると、こっちの息がつまりそうなほどだった。

 そんな彼女は顔を真っ赤にして、俺に頭を下げている。


「あ、ええと……」

 俺は困ってほほをかく。なにせ、この子と会ったのは、今が初めてだから。

 どこかに居た、俺の熱心のファンな可能性。……なくはないが、限りなくゼロに近いだろう。

 異世界から来た、俺のいいなずけ。それも面白いが、現実としてありえない。


 目の前の現実を理解するのに時間がかかる。けれどその少女は、そのまま俺に何かを捧げるように両手を伸ばすと、


「死んでください! 」


 と、小ぶりなナイフを、俺の胸に突き立てる――。





 そこで、俺の生きてる記憶は終わり。

 藤堂英の短い生涯は終わりを告げた。





















「それで、ここがですね、」


 見渡す限り、白い平原。触ってみても冷たくはない。だからここは、雪原ではないのだと推理される。

 見上げたそこに、見知った青い空はなくて、ぼんやりとドーナツ型のわっかが浮かんでいる。そんな気候を俺は知らなかった。ただ異様な光景に、俺は背筋を震わせる。


 目の前に居る少女、銀髪の髪に赤い目をした少女――メノウと名乗った、はこと細やかに説明をしているが、俺は頭がぼんやりとしてなかなか入ってこない。

 気つけに頬をつねろうと、手を伸ばした――のだが、ぼんやりとして感覚がない。

 そんな俺を見て、メノウは笑った。

「何やってるんですか!

 手なんてありませんよ、だって英さん、霊魂なんだから! 」


 ああ、なるほど――それじゃあ仕方ないね。

 明日になったら生えてくるし……。




 とそこまでなって、初めて俺は自分の現状をやっと理解する。そしてこちらを不思議そうに見つめる、赤い目をした悪魔にふつふつと怒りがわいてくる。

 そう、俺はこの少女に腹を刺されーー、殺されたのだ。……たぶん。


「つまり、私のせいだっていいたいわけですね」

 少しあてつけがましい言い方で、メノウが言う。

「んーとぉ、それは少し違って」

「英さん、車にひかれそうな男の子を助けましたよね」

「その子、寿命が今日までだったんです。私、ノルマのために狩っときましたけど」

「ええとぉ、その時振るった刃先が大きかったというか」

「刃先でちょん、とひっかかったのが、英さんです」

「ね、私のせいじゃないでしょう? 」



 2万パーセントこいつのせいだったが、俺は大人だ。つとめて冷静になるように、一度深呼吸をする。

「オーケー。理解した。君が馬鹿だったことをね」

「なんだかとげのある言い方だなぁ」

「悪意はあるが、他意はない。聞き流してくれ」

 ぶつぶついうメノウを無視して、

「それでも、あるんだろ?

 わざわざ俺と話をする時間があるってことは……」


 そう。

 こいつがかなりのアホで、手違えで俺を殺したとして。

 すんごい間抜けで、ついでに足も臭いような死神だったとしても。

 きっと持ってるはず、できるはずなのだ。

 つまり、「殺す」の反対。「生き返らせる」ことが。



「すっごぉい。誰かに聞いたんですか? 」


 銀髪の悪魔が居て、助けられたと。

 そんな昔話を聞いたのは子供の頃か。

 その話をしてくれたアイツは、もう。


「……どうでもいいだろ。

 俺はこんなところに未練はないんだ。

 元の世界に還る方法を教えてくれ」

「わっかりましたぁ!」




 そしてメノウは。

 意気揚々と「臨死 / 輪廻の輪 体験コース」と書かれたプラカードを持ち上げた。

「さあ、元気だしていきましょう! 」

 俺は溜息をついて、

「もう死んでるのに? 」

「細かいことは気にせずに! 」

「うるせえ取り殺すぞ」

「霊魂ジョークを言えるなんて、すっかり霊魂上級者ですね」

 と言って、メノウは笑った。




 ポイントは2つあります、とメノウは指を立ててみせた。

「1つ。裏の山に住むタイタン一族を一匹狩ること。

 その膨大なエネルギーを宿した魂を媒介に、あっちの世界への片道切符を手に入れます。

胸がドキドキするアドベンチャーも体験できて、一石二鳥です。

 2つ。カルマ返しコース。血の池地獄に居る鬼さんたちに、額を地面にこすりつけて謝るというコースです。こちらはビジネスマンに必須な土下座スキルが手に入りますね。

 さあ、英さん、どちらを選びますか? 」

「どっちも選ばねえよ」

 俺はメノウの頭を殴る。おぉ。よく分からんが、俺の霊魂から拳らしきものが伸びた。

「ムリゲーすぎるだろ、そんなの。

 つうかお前、そういうスキル持ってるだろ。はよ俺を生き返らせろや」

 俺は伸びた拳で、メノウの頭を締め上げる。

「痛い痛い痛い! 

 で、できなくはないですけど」

「ないけど? 」

「その、今は使えないというか。封印されてるというか」

「封印? 」

「はい、その、英さんを手違いでこっちに連れてきちゃったから。

 先生にバレて、『死者蘇生』のスキルを奪われたのです」

「それだ! 」

 俺は思わず柏手を打つ。

「その先生ってやつに、直談判にいこう」

「えぇー、でも、すごく怖いですよぅ」

「知るかそんなの。一度死んだ身だ。怖いもんなんてないぜ」

「うーん、そんなものかなぁ」



 しぶるメノウの背中を押して、俺らはメノウの通う学校へと向かう。白い道の中に、ひときわきれいな跡がついている。そのあとをたどって、洋風の城を模した建物を目指すのだった。









「無理無理無理」



 俺と相対したのは、ものすっごい美人の女。メノウも綺麗といえば綺麗な顔立ちだが、メノウの先生はもっとすごかった。例えるなら? ギリシャ彫刻を思い浮かべればいいかもしれない。ただし目つきは鋭いし、笑いもしないから威圧感がすごい。


「それで、なんでしたかしら」

「だからぁ。

 俺を生き返らせて欲しい。ここに来たのだって、そっちの手違いだろ? 」

「ならぬのです」

 先生は残念そうに首を振った。

「一度死んだ命を、同じ姿で生き返らせることは、この世の理に触れるのです。

 それは容易く変えていいような代物ではないのです」

「つまり……どういうことだよ。

 無理やり生き返ると、俺に何か不都合があるってこと? 」

「ま、簡単に言うと手続きがめんどくさいってことです」

 急にあけっぴろげになる女神さま。

「その子の尻拭いをするのも、そろそろ辛いかなって」

「そっちの都合で、俺を殺すのかい」

「初めてじゃないし」


 俺はメノウを見る。こいつ、自分のことを「天使です」とかほざいてたけど、その実ただの死神なんじゃなかろうか。

 メノウは何を思ったか、両手で拳を握って、

「私、お母さんに言われたんです。『あんたは天使みたいだ』って」

「一番あてにならない評価じゃねえか」

「でも、私を取り上げたおばあさんにも言われたんですよ?

 こんなに二重がぱっちりした赤ん坊は、200年ぶりだって」

「リップサービスだ、んなもん」

「でもでも」

 だってだって、とメノウが身をよじらせる。



 コホン、と女神さまが咳払いをした。

「勇者よ、使命を与えます」

「勇者じゃねえし」

 俺の反論を無視して――。

「この先100キロほど先に、巨人のティタンの住む祠があります。

 やつらを退治してください。やつらの魂から、グラム100ルクスのエネルギーが得られます。英さんが生き返るには、十分なエネルギーでしょう」

「ちょっと待てって」

 俺は両手をあげて抗議する。

「俺が生き返る。それはいい。

 だけどそれ、危ないんだろ? 命がけなんだろ?

 あんたらはイイかもしれんが、ほかにもなんかないのかよ」

「おそらく、過剰なエネルギーを持った英さんは、現世で超人になれるでしょう」

「超人、か――」

 俺はテロリストに囲まれた自分を想像する。

「右手の一振りで悪党を吹き飛ばし、願えば火を操ることも可能です」

「ううむ、なるほど」


 俺の心のどこかがうずく。……忘れていた過去がよみがえる!

 そう、あの時俺には確かに魔物が潜んでいた。俺の前世は異世界に住む勇者の末裔だった。始祖の勇者から遺伝したオッドアイには意味があったし、右手には強大な魔物が封印され、俺はその魔物との戦いに日々を費やしていた。その魔物の名前は「中二病」という。


 まあ要するに、多少心をくすぐられたって話。


「でもなあ、俺は強くなりたいわけじゃないし」

 俺は強がってそんなことを言う。

 こんなとこでも見栄をはる自分が少し悲しい。

「それでは、人間界にこの子を連れて行ってください」

 女神さまはメノウを前へと押しやる。

「体のいい厄介払い――ではなく卒業、そう卒業です。

 なんと甘美な響き。まるでアイドルグループのよう。

 メノウがこの学校を卒業していくなんて。

 寂しいけど、仕方ないですね。人生に別れはつきものです。

 おめでとうメノウ。がんばって。あなたと過ごした200余年はトラウマよ」


 俺はメノウを上から下まで観察して、メノウが制服を着た姿をイメージして――、

「仕方ない、それで手を打ちましょう」

 女神と握手を交わした。


「英さん、今エッチなこと考えたでしょう」

 メノウがジト目でこっちを見ている。

「なんだよ、いけないかよ」

「いけなくはないけど……。

 ちゃんとひとこと断って欲しいです」

「今から不純な妄想をしますって、言えばいいんか? 

 んじゃ、よく聞け。今から俺は――!!!」

「……やっぱり駄目です」

 メノウは、あわてて俺の口をふさぐ。

 顔を赤くしてうつむいたメノウを無視して、俺は女神に向き合った。





 ルクス、というのがこの世界の通貨単位だった。俺の元居た世界では光量の単位だったが。ルクスが大きいと光が強い、イコール価値がある、という考え方でおおむねオッケーらしい。



 にぎやかな商店街――、の中に俺らは居た。メノウは白い衣を着替えて、水色の薄布を身に羽織っている。俺は透けて中が見えないものかと、何度か目を凝らしたが、一切そんなことはなかった。さすが神クオリティ。

「……、また変なこと考えたでしょう」

「変なことってなんだよ。言ってみろよ」

「いいです、なんでもないです」

 メノウを声を遮るようにして、身の丈1メートルほどの生物、口ひげをたくわえた中年男性のような容姿をした生き物が威勢のいい声をかけてくる。

「よう兄さん、武器が必要かい!」

 誘われて中をのぞいてみると、そこには種々さまざまな武器が置いてある。

 腰にさすような片手剣から、身の丈ほどもあるような大剣。一対の短剣や、炎の飾りをつけた弓矢。俺はゲームの世界に身を興じてるようで、しばらく見惚れてしまう。

「兄さん、この世界は初めてかい?

 身の丈にあった武器を使うってのも大事だけど、基本は誰と戦うかだよ」

 ふんふん、と俺はうなずく。

「小さな敵ならこの片手剣で十分。切れ味抜群な上に、滅魔効果もある。

 けどおっきなドラゴンみたいなやつと戦うなら話にならない。表皮を切り裂きはするけど、ダメージにはならないからね。

 そんときは魔法のご加護なんてないけれど、でかくて重いやつでぶんなぐるのが一番だ」

 店主は奥から、馬鹿でかいハンマーを持ってきてくれる。

「てことで、兄さんがどんなやつと戦うかで、戦法が違うんだ。

 竜かい、鬼かい、それとも……」

「カラガラ山に住む、ティタンを倒しに行くんだ」

「なんと!」

 俺の言葉がまずかったのか、店主は顔を蒼くする。

「……悪かったな、今日はもう店じまいだったよ」


 そういって。

 すっかり意気消沈して、店主は店の奥に引きこもってしまった。



 その後、何件か武器屋を訪ねたけれど。

 結局どこも似たような反応だった。


「こんなところでつまずくとはなぁ」

 俺は河原をながめながら、つぶやく。

 投げた小石がポチャリと音を立てる。

「自分の作った武器に、自信がないのか。

 軟弱な奴らめ」

「でも私、わかるなあ」

 メノウが隣に座って、こちらを見上げる。

「きっと、不安なんですよ。

 自分がせっかく作った武器が、通用しないのが。

 ……もし刃が立たなかったら、自分のやってきたことが、必死の努力が無駄になるみたいで。そう思っちゃうから、使ってほしくないんですよ」

「知らねーよ。

 武器屋が武器売らねえでどうすんだよ」

 仮にメノウの言ってることが当たっていたとしても。

 俺にそんな彼らの理屈を相手にしている時間はないのだ。


 投げた小石が、水面を跳ねて。

 川の向こう側にあった、紫色の水たまりに突っ込む。毒々しい色の水がはねて、河原に入り、……3匹ほどの魚が、水面に浮いてきた。


「……わかった! 」

 俺は立ち上がる。

「ティタンに効果的な武器が分かったぞ」

「えぇ、なんですか。

 彼ら皮膚は固いし、力は強いし。

 年をとったティタンは魔法も使うって話ですよ」

 俺はメノウの顔をまっすぐ見つめて、

「毒だ」

「どくぅ? それって、ちょっと、いやものすごく、卑怯なんじゃ……」

「勝てば官軍という言葉がある。

 それに俺には時間がないし」

「それにしたって、全うな人間、勇者、英さんの取るべき行動じゃない……」

「毒を採りに行こう」





 俺がなだめすかし、説得して、やっとメノウから効果的な毒の在りかを聞き出すことができた。毒谷峰に生えている、竜宮の角という植物が、近場では一番の毒性を持つらしい。

 一輪の花があれば、周囲100メートルの生物は死に絶えるとか。

「もし欲しいなら、英さん一人で行ってください」

「お前は? 」

「私、無理です。におい嗅いだら死んじゃいますもん」

「俺はどうだっていいってのかい」

「英さんは、もう死んでるから―-」


 と、手のひらに収まるくらいの小さなビンを渡された。



 とりあえず、俺は不慣れな状態で山を登っていく。メノウにもらった小瓶は、背中のリュックにしまってあった。

 ほぼ一日がかりで、俺は頂上にたどりつく。

「……あいつ、このこと知ってたんじゃねえだろうな」

 休憩しつつ、メノウに毒づく。

 毒でやられるとか以前に、山を登りたくなかっただけなのではないだろうか。


 ぱちり、と俺が焚いたたき火の中で、火がはじける。

 はじけた火は、外に広がらず、宙に漂い――。


「やあやあどうもこんにちは」


 手のひらぐらいの人の形を模した。

 そしてその人型は、気が付くとはっきりとした輪郭を持ち始め、はっきりと顔のわかる存在になっていった。


「君だね、霊魂になってるのに生き返りたいって奇特な人種は」

「当然だと思うんだが」

「この世界に居たって、何不自由ないぜ。

 理不尽もなければ死ぬこともない。美人は多いし、食い物はうまい」

 その人型は名刺を差し出してくる。

「あ、申し遅れました。私冥土案内人のクローズと言います。

 以後、お見知りおきを」

「で、何しに」

「要するに、ちゃんと死にませんか、ってことです」

「間に合ってます」

 俺は両手を、たき火にむけて暖をとる。

「……こっちが驚くくらいクールですね」

「信条なんで」

 ほっとけ。

「こちらの説明が足りなかったようで。

 今英さんは『半霊魂』と呼ばれる不安定な状態になってます。

 悪いのは確かにメノウの奴ですが、この世界で英さんがあんまりがんばっちゃうと、不都合なことが起きてくるんです。なんせ半生人なわけでしょう?

 現世から夢見がちな人がこっちにきちゃったり、生き返れるかもしれないと勘違いした霊魂たちが暴動を起こす可能性があるわけです」

 ううむ。なるほど。そういわれると、あまりよろしくないようにも思える。

「そこで、の妥協案。私が英さんをここではなく『暗くて深い世界』の方にお連れします。

 まあ有り体に言えば地獄ですね。でも、この世界を統べるスペラさま、地獄の主ヴェロンドさまの承諾を得て、特別待遇でお迎えしてよいことになってます」

「心動かされる説得だな」

「でしょう?

 具体的には、地獄内での自由行動権。

 かつ、英さま専属秘書を、地獄の選りすぐりの美女から5人おつけいたします。

 ……知ってますか。悪女は美人が多いんですぜ」


 なるほど。

 俺をここから地獄に連れ出すかわりに、ほぼ俺ののぞみを叶えてくれるというわけだ。するとこんなみみっちいことをしなくていいわけだし、命をかける必要もないわけだ。


「……その世界に、メノウは連れて行けるのか? 」

 俺の素朴な質問に。

 元火の粉のその使いは、首をふる。

「それはできませn。つかいっぱしりといえども、メノウはこちらの世界の住人です」

「なら、話にならんな」

 俺は焚き火に消化用の石をのせて火を消した。

「ど、どうしてですか」 

「俺はまだメノウに制服を着せてない」

「ま、まだ現世に未練がお有りですか?

 一度死んだのに? また不自由になる? 」

「ええい、これ以上お前と話し合うことはない。

 ばあちゃんが言ってたぜ。『悪魔は笑顔で近づいてくる』って」


 耳障りのいい言葉を並べて。

 こっちに都合のいい条件を出して。

 気に入らない。

 「自分は悪くない」と、明らかに無理のある無実を主張するメノウのほうが、誠意があるように見えた。


「第一、こんなことはよくあることだとメノウの先生が言ってたぞ。

 そのたびごとに勧誘したのか? それとも地獄ってのは、観光客でも求めてんのか。

 ……違うな、いいように言いくるめて連れ出してるだけだ」

 あとは煮るなり焼くなり好きにしろってな。

 俺は手を降って、クローズに背を向ける。





 目的の植物を小ビンにつめ、空気がもれないように隙間をシールする。

 見た目は鈴蘭とか、その辺に生えてる山野草に似ている。においだって、特別すごいわけでもない。

「こんなんで大丈夫かよ」

 俺はふと、その毒性を試したくなるーー。

 ので、花びらを一枚、他の小ビンに小分けしておく。




「おかえりなさいっ! 」

 メノウは律儀に、俺の帰りを待っていたらしい。

 テーブルから立ち上がると、はじけんばかりの笑顔で俺を迎えた。

「悪い、ちょっと悪魔に勧誘されてな。時間がかかってしまった」

「そうなんです? でも英さんなら大丈夫!

 悪魔なんかよりよっぽど悪党ですから」

 ……それは、フォローになってるのだろうか?


「まあいい。

 それより、すごくきれいな花を見つけたんだ。メノウにもやるよ」

「うわあ! 急に優しくなりましたね。私の偉大さが分かりました? 」

 わかんねえよ。おまえ何もしてねえだろ。

 俺は花びらを小分けした容器を、メノウに手渡そうとーー。

 した瞬間にメノウは血相を変えて、


「リヴァイバ!! 」

 と叫んだ。



 瞬間、俺の全身を白い光が包み、部屋の中が瞬いた。

 俺の持っていた小ビンは影も形もなくなっている。



「……危ない。英さん、私のこと殺そうとしましたね」

「本当に、危ないのかなーって」

「死んだらどうするつもりだったんです!!! 」

「悪いことしたなって思うけど、そのセリフは俺がお前に言いたい」

「もう」

 驚いた点は二つだ。

 1つは本当に毒性がありそうだってこと。なんせメノウが必死になるぐらいだから。

 もう1つは、

「おまえ、本当に魔法なんか使えたんだな」

「当たり前でしょう。何言ってるんですか」

「……封印なんてされてないじゃん」

「どきっ」

「そもそも、採取におまえも行けたじゃん」

「どきどきっ」

「まあいいや」

 俺は追求を諦める。

「なんにせよ、約束は守ってもらうからな」

「分かってますよ。

 天地神明、つまり私たちの名誉にかけて」

 エヘンと、胸をる。


 こいつにいくばくかの名誉があるのか。

 それがそもそも疑問なんだけど。


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