形式上では、女子高校生4
トントン
何かが私の肩に触れた。いや、人なのだろうがどっちだろうと驚いたことに変わりはなかった。
ここに私を知っている人などいるわけがない。
きっと、人違いだったのだろう。そう思って無視をした。
トントントン
願わくば、誰とも会話をしたくなかったのだが、どうやら今日はついていないらしい。
このまま無視したいが、相手に余計な印象をあたえる行為は控えねばならない。
上手く接しないと。
笑顔をつくり、何気ない素振りで振り向いた。
「ねっ、1人?」
「えっ?」
私は、いいかけた言葉をうまく呑み込めず、ただ呆けてしまった。
「だ、か、らぁ~あんなのいないの?」
指の指す先には、さっき「おなちゅう~」とか言って集まっている女子だった。
再び目の前に視線を戻すと「どうなん?」といいたげそうな顔をした彼女がいた。
私より背の高いその人は、少し茶色っぽい髪で、大きくうねるウェーブが胸あたりまであった。手首には、ミサンガをしておりなんとも可愛らしい顔立ちであった。
甘いリンゴのリップクリームの臭いは、より彼女を彩る。
絶対、皆からモテるであろうこの人。 だが、何で私?
からかいにきたのか? 入学初日で目をつけられたのか? 何かまずい行動したのか?
ああ終わった、もう穏やかな学校生活なんて無理だ……。
「んぁあ、物分かり悪いなぁ! ここの近くの中学出身かってことだよ」
またもや不意打ちを食らうような口調だった。初対面とは思えないような言い方。そして、顔とのギャップが、凄まじかった。
「ねぇ、ねぇ!」
「あ、ごめんね。近くじゃないよ」
私の考える間なんててんでなかった。もう、応答というより反応したというべきだろう。
私は、こういう人が嫌いだ。この強引さ、恐喝そのものではないか。こういう人は、警戒すべき対象の1人である。
「やっぱりぃー、ラッキー。一緒じゃん。ね、友達になろうよ」
「友達……?」
「あん? 友達ぐらい知ってるでしょ? ダチだよ、ダ、チ」
私は、自然と顔が引きつってしまった。私には苦い出来事を生み出す悪魔の囁きなのだ。
「友達になろう」だなんて、「仲良くしよう」だなんて。
みんなそうだ。みんな挨拶のように軽々しく口にする。
この言葉がどんなに救いの一言で、偽りの一言か。
私は、全身で理解している。
本当は、こんなに嬉しい気持ちのまま、素直に返事をしたい。そうできたら楽なのに。
それなのに、この人だってアレを見たらそんな言葉取り消すに決まってる。
気持ちだけ有り難う。
私が思いを固めると同時に、彼女は口を開いた。