表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いてよ、ずっとここに……  作者: 白音
第1章 十年後
6/8

形式上では、女子高校生4

 トントン


 何かが私の肩に触れた。いや、人なのだろうがどっちだろうと驚いたことに変わりはなかった。

 ここに私を知っている人などいるわけがない。


 きっと、人違いだったのだろう。そう思って無視をした。



 トントントン


 願わくば、誰とも会話をしたくなかったのだが、どうやら今日はついていないらしい。


 このまま無視したいが、相手に余計な印象をあたえる行為は控えねばならない。


 上手く接しないと。


 笑顔をつくり、何気ない素振りで振り向いた。


 「ねっ、1人?」


 「えっ?」


 私は、いいかけた言葉をうまく呑み込めず、ただ呆けてしまった。



 「だ、か、らぁ~あんなのいないの?」


 指の指す先には、さっき「おなちゅう~」とか言って集まっている女子だった。



 再び目の前に視線を戻すと「どうなん?」といいたげそうな顔をした彼女がいた。



 私より背の高いその人は、少し茶色っぽい髪で、大きくうねるウェーブが胸あたりまであった。手首には、ミサンガをしておりなんとも可愛らしい顔立ちであった。


 甘いリンゴのリップクリームの臭いは、より彼女を彩る。


 絶対、皆からモテるであろうこの人。 だが、何で私?


 からかいにきたのか? 入学初日で目をつけられたのか? 何かまずい行動したのか?


 ああ終わった、もう穏やかな学校生活なんて無理だ……。



「んぁあ、物分かり悪いなぁ! ここの近くの中学出身かってことだよ」


 またもや不意打ちを食らうような口調だった。初対面とは思えないような言い方。そして、顔とのギャップが、凄まじかった。


 「ねぇ、ねぇ!」


 「あ、ごめんね。近くじゃないよ」


 私の考える間なんててんでなかった。もう、応答というより反応したというべきだろう。


 私は、こういう人が嫌いだ。この強引さ、恐喝そのものではないか。こういう人は、警戒すべき対象の1人である。


 「やっぱりぃー、ラッキー。一緒じゃん。ね、友達になろうよ」


 「友達……?」


 「あん? 友達ぐらい知ってるでしょ? ダチだよ、ダ、チ」


 私は、自然と顔が引きつってしまった。私には苦い出来事を生み出す悪魔の囁きなのだ。



 「友達になろう」だなんて、「仲良くしよう」だなんて。


 みんなそうだ。みんな挨拶のように軽々しく口にする。


 この言葉がどんなに救いの一言で、偽りの一言か。

 

 私は、全身で理解している。


 本当は、こんなに嬉しい気持ちのまま、素直に返事をしたい。そうできたら楽なのに。

 それなのに、この人だってアレを見たらそんな言葉取り消すに決まってる。


 気持ちだけ有り難う。


 私が思いを固めると同時に、彼女は口を開いた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ