形式上では、女子高校生3
くねくねした小道を抜け、白いアパートが3、4並ぶ間の道を通り、丼屋さんの前に出る。
次に、十字路があるので自転車から降りて地下道を通る。
正面は、黄色い衝突軽減クッション、壁には、縦横無尽のスプレーの落書き、空気は冷たく透き通り、足音だけが反響する。
異世界のような場所。
そう、ここは私が一刻も早く離れたい場所のひとつである。
だが、恐怖はこれだけではない。
追い打ちをかけるようなミラーが私を覗いている。
小さいときに見た戦隊もののシーンに似たのがあった。ミラーから化け物が出てくるあのシーンだ。
ただでさえ、嫌な雰囲気なのにそんなのが思いだされては通れなくなる。
あの戦隊ものは事実ではないものの、鏡の世界は存在するかもしれない。そう思うとやっぱり怖くなってしまうのだ。
私は、黙々と光を求め、自転車を押した。
そのあとも郵便局や図書館の前を過ぎて、コンビニを過ぎたあとやっと見えてきた。
間違いない。こここそ、最も私が離れたい場所No.1である「学校」だ。
(今日から通うのか……)
改めて入学するかと思うと鬼胎を抱かざるをえない。
今までの記憶が私の体を硬直させた。
人が、ひとり、ひとり、ひとりと過ぎるたびに歩幅が狭くなる。冷や汗のようなものが出てくる。
見られてないのに見られているような
あの笑い声は私にむけているような
あの母親は携帯で私の傷のことを……
過剰意識かもしれない。そうかもしれない。
でも……
だめだめ! 佳代お母さんがあんなに高校に行くことを喜んでくれたのに今更やめるなんて……
佳代お母さんが悲しむ姿なんてみたくない!
(また、傷を隠しながらの生活が始まるだけなんだ。さっきのはそう、気のせい。誰もあたしを知らないはず。この3年間だけは最後まで頑張ろう)
校内では友達同士、同じ中学同士喜ぶ姿で人がいっぱいだった。
その輪の傍で、親も似たように群がっていた。
皆、似たりよったりの服をしていたが中には派手な格好で子供より目立つ母親もいた。
私も母がいればこの場は苦痛でなかっただろうに。
思ってはいけないと思いつつも、私は弱かった。
鬼胎……読みは「きたい」で、不安と似た言葉です。