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14.帰路と後始末 -『決死の戦い、得たものは借金!?』


「あらら、やっと起きましたわ。オイラのこと見えます?」

 寝ぼけた目をこすりながら僕は体を起こした。

 気がついたら宿屋のベッドに寝かされて、隣の椅子にはノチェロの比喩でなくやせ細った狼のような姿が見えた。


「旦那ぁ、ツカサが起きましたよ。」

 ノチェロは背丈のわりに軽いからだをのけぞらせて廊下に向けて声を上げた。


「体は、大丈夫ですかい?」

 痩せた狼の獣人は、顔に似合わず心配そうな表情で僕を見つめた。

 痛みは思ったほどなく、体を見回すと胸と左腕に包帯のような布が巻かれていた。


「多分。大丈夫。」

 答えながら両手の指先を動かす。左手の指を動かそうとすると少しズキンと痛みが走った。


「丈夫そうで何よりですわ。それと確かに、返してもらいましたわ。」

 ノチェロの手には細長い筒状の入れ物があった。僕が借りていた王都商会の金印が入ってるらしい入れ物だ。

 ニッとしたノチェロの顔に、僕は少しホッとした。


「そうだ!他のみんなは?スズネは?ジェット、キミアは?」

「一番ボロボロの体で何言ってるんですかい。3人共もうとっくに起きて元気にしてますわ。」

「そうかぁ。」

「ツカサは昨日の夜からずっと寝続けて、スズネが心配してましたよ。」

「そりゃ、悪いことしたな。」

 寝ぼけた頭を動かしながらノチェロと話をした、とにかくみんなが無事なことがわかって何よりだった。


「ツカサよ。起きたか。」

「ジェット…。」

 部屋の扉からジェットが顔を出した。薄青緑色のフワフワした髪からピンと生えた猫のような耳は、いつもより神妙な雰囲気を出していた。

 にっこりと笑っているが、顔つきにも普段の朗らかさの中に疲れのようなものが見えた。


 部屋に入るなりジェットは数枚の羊皮紙をノチェロに手渡した。

「必要なサインは済ませてある。」

「旦那ぁ、本当にいいんですかい?」

「ああ、もともと頼りきりで生活するつもりは無かった代物だ。」

「そうは言っても、そこまでする義理もないでしょうや。」

「構わん。理由が必要なら、ノチェロを信用している証だと思って欲しい。」

「こいつぁ、オイラが言い返す言葉がないじゃないですかい。」

 ノチェロは羊皮紙の束を受け取ると腰を上げて出て行った。


「体は?大丈夫か?」

「ああ、問題ない。ジェットも大丈夫だったか?」

「見ての通りだ。少々手が痛むくらいか。」

「ああ、僕も左手が少し…。」

「手当は済んでる。治癒師の話では、深い傷だが4,5日すれば十分良くなると聞いている。」

「そんなにすぐ治るのか。」

「村での戦いだったから、すぐに手当できたことが幸いだったな。」

 ジェットがベッドの隣に腰掛けて話した。見るとジェットの両腕にも包帯のような布が巻かれていた。


「スズネは?キミアも。」

「二人とも元気だ。それほど傷は深くない。」

「そうか、それならよかった。」

「キミアは一件の後処理で当分は顔を出せないだろう。スズネは、申し訳ないが部屋から出ないでもらっている。」

「部屋から出ないって何か悪いのか?」

「いや、体は大丈夫だ…。」

 ジェットはふぅと小さく息を吐いた。

 膝の上で腕を組み、言葉を探すようにしばし沈黙した。


「今回の件について、ノチェロと取引をした。」

「取引って、さっきの?」

「ああ。」

「分かったけど、なんで?」

「今回の件、責任はスズネにあるからだ。」

 思いがけない言葉に僕は息を呑んだ。


「そうは言っても、あれは事故じゃないか。」

「落ち着き給え、もちろん全てをスズネの責任にするつもりはない。」

「そりゃそうだろ。だって…」

「言い返したい言葉も分かる。だが発生した事実だけを述べれば、ナイトウォーカーを村に呼び寄せたのは他でもない私達なのだ。」

「う…。」

「普通の新人なら、ナイトウォーカーの目を潰すなど出来るはずもない。本来なら起こりえない状況だ。あまり事を荒立てては、いずれは異漂者の立ち位置も危うくなるかもしれん。」

「そう…か。」

「私は異漂者を招かれざる客と言うつもりはない。だが考えや主張は様々だ。」

 ジェットの言い分に僕が口を挟める余地は無かった。

 思い返せばこの村に来てから、僕が異漂者であることを伝えたのはキミアだけだった。


「身の振りについては心配しなくてもいい、ノチェロにもそう伝えてある。」

「スズネは…?」

「スズネも大丈夫だ。この一件に私達が関わらないよう手を回してもらっている。」

「ん…。」

「すまないが、ツカサの手柄も無くなることになる。」

「そんなの、構わないよ。僕達は大ネズミの討伐をしに来たんだ。」

「その通りだ。大ネズミの討伐だけを終えて帰る。心苦しいかも知れぬが、ノチェロは信用に足る男だ。」

 重々しい沈黙が流れた。


「せっかく起きたのだ、まずは食事にしよう。その様子なら夕方の乗合馬車には乗れるだろう。村を出られるよう荷物はまとめておいてくれ。」

「分かったよ。」

「立てるか?」

「大丈夫。そんなに痛みもない。」

 身を起こしてベッドから起き上がった。足に大きな怪我はないようで、立ち上がっても痛みは無かった。

 傷の痛みよりは筋肉痛のほうがズシンと体にのしかかっていた。


 廊下を渡ってスズネの部屋に向かった。

 コンコンとドアをノックして、スズネの返事を待ってから部屋に入った。

 スズネは部屋着のまま、退屈そうにベッドに寝転がっていた。怪我をした左足には白い包帯のような布が巻かれていた。


「おーっす。やっと起きたか。」

「スズネ。足は大丈夫なのか?」

「全然問題なし。でも走ったりするのは、まだもうちょっと無理かも。」

「そうか。元気そうでよかった。」

「いやー。どうなることかと思ったけど、無事でよかった。」

 スズネはいつもどおりの軽口を叩く、だが空元気のような虚しさが言葉の節々に感じられた。


「ツカサも起きたことだ、まずは食事にしようではないか。」

「さんせーっす。お腹ペコペコだし、ずっと部屋にいて暇だったんだから。」

「不便をかけてすまない。」

「まーでも、私が口挟めるような話じゃないっぽいし。仕方ないか。」

 話しぶりから察するに僕に聞かされた内容は、スズネも全て聞いているようだった。


「それより、私のせいでジェットに迷惑かけたみたいでゴメンね。」

「構わん。困っている友人がいて助けられる人間がいるのなら、私に不義を働く道理など無い。」

「う、うん…。」

「それに村の修繕費はノチェロに肩代わりしてもらっているが、いずれは働いて返さねばならぬぞ」

「了解。私にできることなら任せてよ。」

 原因など事故であるようなものの、スズネは自分なりに責任を感じているようだった。ただ本人はそのことを苦にする様子もなく、むしろ自分なりに恩を返せることを前向きに捉えていた。


「ぼ、僕も手伝うよ。僕だってあの大ネズミに切り傷を負わせたんだ。」

「ん。ありがとツカサ。」

「無論、私も手伝おう。」

 借金って形になるらしいが、そればかりは仕方ない。この世界に生きることも、忙しくなりそうである。


「決死を賭した戦いの夜が明け、得たものは無く失うものに嘆くだろう。ナイトウォーカーを討ち取ったことが徒労であったと落胆するならば、私は同情を隠せない。ツカサ、スズネ、あの戦いは誰にも知られぬものとなろう。だがこの村の民に誰一人の負傷者も与えなかった事実だけを、心に勲章として受け取ろうではないか。」

 ジェットは僕とスズネの顔を見ながら、歯の浮くような言葉をスラスラと述べた。


 昼食はスズネの部屋に運ばれて来た。

 きしめんのように薄く伸ばしたパスタにミートボールが添えられたミートボールスパゲティがテーブルの中央に置かれた。

 それぞれの前に皿が渡され、中央の皿から各自で取り分けて食べるようだった。


「これは?」

 大皿に乗った山盛りのスパゲティを前に、ジェットが女主人に向かっていった。

「好きにやんなよ。気取らなくていいだろ。」

 女主人はそれが当たり前だと言うように大きな顔で笑って部屋から出て行った。


 ジェットが何のことか分からない顔で目をパチクリさせている隣で、僕はスズネは我先にとパスタとミートボールの取り合いを始めた。

「な、なんと手の早い。」

「何ってこういうのは早い者勝ちだろ。」

「ほら、ジェットも取らないと食べる分なくなるよー。」

「待ち給えよ、早い者勝ちなどというものが…。」

 ジェットにとって大皿から各自で取り分けて食べること自体が珍しいらしい。その隣で僕とスズネは食卓で激闘を始める。

「ちょ、そのミートボールは僕が狙ってたのに…。」

「甘い甘い。反射神経が、鈍いのよ。」

「なんのっ。」

「残念。もう一個くれるの?ありがと。」

「ぐぬ…」

「どうしたの、ジェット?食べないの?」

 呆気にとられたジェットは、僕達から完全に出遅れて残り物を集めた。



 食事を終えてお茶を飲む頃、ちょうど昼下がりの太陽が窓から斜めに差し込み心地よい風が部屋を通り抜けた。

 コンコンコンと部屋にノックの音が響いた。

 ジェットが席を立って迎え入れると、ノチェロが痩せこけた狼のような細長い体をスルリと滑らせて部屋に入ってきた。


「どうもです。旦那。」

「ああ、首尾はどうだい?」

「問題なしですわ。被害っても広場や建物が壊されたくらいで、怪我人の一人もいやしませんものですから。こっちで筋書きだけ合わせれば、問題が広まることはありえませんや。」

「面倒をかける。」

「なあに人情ってのは、儲けより大切だってことが分かって初めて一人前ですわ。」

「貴族との取次ぎを狙っているのだろう?」

「嫌だなあ、お見通しなこと言われちゃオイラが格好つかないじゃないですかい。」

 ノチェロが困った顔で自分の細い顎先をなでた。二人の間には、世辞や建前は見ぬかれて当然と言うようなある種の信頼関係ができていた。


「そんでもってこれからのことですわね。」

 ノチェロが椅子に座って、僕達3人を見回した。神妙な顔で手にしていた紙の筒を広げる。


「取り繕っても仕方ないんで、これだけのお値段ですわ。」

 ジェットの前に差し出された紙には、数桁の数字と見慣れない記号が大きく書かれていた。パッと見ただけでは額面はよく読み取れなかった。

 ここの通貨に詳しくないが、結構な額の借用書であることは雰囲気で察した。


「ふむ、こんなものか。」

 ジェットは差し出された書類を手に取り、眺めながら言った。


「今回の件についちゃ、オイラは儲けは鈍剣の分だけですわ。十分過ぎる質草を預かってますし、利子もつけてませんわ。」

 そう言ってノチェロは小さな箱を取り出して中身を見せた。中にはジェットの持っていた、銀細工のペンダントが大事そうにしまわれている。


「それってジェットの。」

「ああ、私の紋章印だ。」

「そんな、大事なものなんだろ。」

「いや、いつまでも頼るつもりの無かったものだ。これで良い。」

 ジェットは覚悟を決めたような、重荷を外したような、せいせいした顔でペンダントを見つめながら言った。


「しかしこんな方法とらなくても、ジェットの旦那くらいならこのくらいの金額、融資でもなんでも取り付けられるでしょうや。」

「いや、これで良い。この程度のことで家の名に頼っては、それこそピパーミントを名乗る資格もない。」

 ジェットは高らかと胸を反らせていった。

 薄青緑色の髪からピンと伸びた耳は、そのままジェットの自信の現れのようであった。


「それにそれだけの品なら、ノチェロといえども気安く質流れさせることもできないだろう。」

「計算高いですね。さすがのオイラでも、こいつを捌くのは無理ですわ。」

「満額返済した暁には、しっかりと買い戻させていただこう。」

「ま、オイラとしちゃ悪くない話なんでいいですけどね。なにせ旦那たちは、この先稼ぎそうですから。」

 ノチェロはまた細い顎を撫でながら言った。


「それと鈍剣の分も額に入れてありますわ。」

「ああ。確かに、こちらで預かろう。」

 ノチェロの言葉にジェットが小さくうなずいて答えた。


「そうだ、そう言えば鈍剣。どこにやったっけ?」

 僕は慌てて腰のあたりを探る。当然だが部屋着姿で、鈍剣どころか普段の剣も持ってなかった。


「鈍剣なのだが、実はあのまま酒場の裏庭に置きっぱなしになっている。」

「ごめんねー。私が持って帰るの忘れちゃって。」

 ジェットとスズネが僕のほうを向き直って答えた。


「鈍剣の方は無事なのだが、問題は鈍剣を入れる鞘が…。」

 そう言うと、ノチェロは腰に下げた鞄から爪あとの入った鞘を取り出した。鞘の原型は保たれたままで、大きめの傷がついているものの短刀を収めるには問題無さそうであった。


「見ての通り、大きく損壊している。」

「あ、ああ。そうだな。」

「当然だが、これは普通の鞘ではない。鈍剣の鞘には全て、鈍剣を持ち上げるために開発された魔法具が仕込まれている。むしろ鞘は、鈍剣を扱う上で最も重要な発明だと言える。」

「つまりこの鞘が無いと。」

「私達は持ち上げることもできない。」

 ジェットが淡々と説明した。


「オイラだって持ち帰れないってことで、当分はツカサに預けようと思いますわ。」

「預けるって、結構な値段のものなんだろ?」

「当然、鞘と刀身の修理費についてはいただきますよ。」

「う…。」

「そのぶん、貸出料金についてはサービスしときますわ。返済のときに返してくださいや。」

 ノチェロはニッコリとした笑顔で僕に向き直った。フレンドリーな態度だが、その狼の顔には一種の威圧感を感じた。


「借りておくと良い。」

 ジェットが隣から口を挟んだ。


「希少な剣だ。使いこなせばきっとツカサの力になることだろう。」

「使いこなす…か。」

「鈍剣を扱える者は、この世界でツカサただ一人だと言ってもいい。自在に扱えるようになれば、それはきっとツカサだけが持つ特別な力になるだろう。」

「僕だけの…特別な力か…。」

 ジェットは鈍剣を鞘を僕に手渡した。僕は鞘をまじまじと見ながら、漫画やゲームのような特別な力が僕にあるなどとは思いもしなかったと驚愕した。



「なんならそのまま買い取りでもオイラは嬉しいですけどね。」

 今度はノチェロが隣から口を挟んだ。


「い、一旦考えさせてくれ。使ってみて考える。」

「そりゃあもう。できれば鈍剣を使った感想とか聞きたかったり…。」

「ええ…っと」

「もしかすると、いや間違いなく史上初の鈍剣使いってことになりますわ。今後の展望も踏まえて是非報告書を…。」

「ま、待って。まだ使いこなすとか、まだ全然出来てないから。」

「それじゃあ使えるようになるまでのプロセスを事細かに、試用報告書1枚につき金貨…。」

 ジェットがンンッと大きく咳払いをした。

 僕がノチェロに言いくるめられそうになっているところに助け舟を出してくれた。


「旦那はおっかないなあ。えーっと。それじゃあ、話を戻しますわ…。」

 ノチェロが向きを戻して、3人全員に大して向き直った。


「ツカサは鈍剣の修理代、スズネは村の修繕費。そしてジェットの旦那は紋章印の買い戻し。期限は待ちますんで、きっちりお願いいたしますわ。」

「ああ。こちらこそ、これから世話になる。」

「宜しく。」

「了解でっす。」



 帰るための荷造りをして、僕達は宿を出た。

 戦いのあった村の広場と大通りの酒場は、小さな人だかりが出来ていた。酒場に近づくと、ちょうど昨日の夜に顔を合わせた初老の男性が僕を見つけ、口利きして中に入れてもらった。



「今でも実感が湧かないけど、昨日すごい戦いがあったんだな。」

「暗くてよく見えてなかったけど、広場の石畳とかも結構ボロボロにしちゃったね。」

 壊れた酒場の中をスズネと一緒に歩いた。


「あった。本当にそのまま置いてある。」

 僕は裏庭に放置された短刀を見つけた。周りの土が少し凹んでいるのは、誰かが持ち上げようとして失敗した跡だろうか。

 土埃にまみれた短刀を持ち上げるとずっしりと手に革の持ち手の感触が伝わった。

 軽く土を払って腰に下げた鞘に閉まった。


「鈍剣使い?」

「茶化すなよ。」

「格好いいじゃん、選ばれし勇者の力みたいな感じで。」

「アウラが使えないから、使えるんだけどな。」

「なんか変な感じ。」

 いたずらをした子供の様に笑うスズネに、僕は少し困った口調で返事した。

 見回すと鈍剣の落ちていたすぐとなりに、ナイフくらいの赤黒い爪が落ちている。

「これって、爪?」

「そうみたいだね。」

 僕が拾い上げると後ろからスズネが顔を出した。


「ってことは、やっぱりナイトウォーカーの爪か。」

「貰っておこうよ。討伐の証じゃん。」

「あ、そっか。でも僕達が討伐したわけじゃ…。」

「いいじゃん。あれだけ大変な思いしたんだし、戦利品もらうくらいバチは当たらないでしょ。」

「じゃあ、貰っておくか。」

「うん。」

 赤黒い爪を持ち上げ軽く土を払った。

 顔を上げると傾き始めた太陽が薄く茜色に色づき始めていた。


「すごい戦いだったよね。」

「もうあんな思いはゴメンだな。」

「私も…。正直もうダメかもって思った。」

「実は僕も。」

「ははは…。」

「はは、は…。」

「すごいよ。よく無事だったよね。」

「なんか無我夢中で戦ってて、今になっても全然実感が湧かないや。」

「何やってたか、うまく思い出せないもん。」

「泥だらけで、腕も上がらなくて、あんだけ大変な思いしたの初めてだったよ。」

「私達がこの村に来たのって、つい2日前なんだよね。」

「うっそ、もうずっと昔みたいな感じする。」

「私もー。」

「本当に危ないところだったんだな…。」

「本当にね…。」

 裏庭を眺めながらスズネと昨日のことを思い出して話をした。

 あれだけの戦いだったが、どこの記録にも残らないとなると少しさみしい気持ちになった。

 それを思うと、爪の一本を持って帰るくらい大目に見てもらえるだろう。



 夕日に照らされて、僕達の乗った乗合馬車は村の停留所を出発した。

 村の中心部を離れると馬車の走る道は平らな土になり、夕暮れの色に赤茶けて染まった。

 自転車より少し早いくらいの速度の馬車は、客車を小さく揺らしながら2日前に通った道を戻っていった。


「あのさ。」

「ん?」

「昨日のツカサ、ちょっとだけ格好良かったよ。」

「…。ん。」

 スズネが客車から外を長めながらポツリと言った。

 ガラガラと鳴る車輪の音が、照れくさくなった僕とスズネとの沈黙を埋めていった。


読了感謝。

この次の話で、一旦完結する予定です。

第一部完みたいな感じで、続きについては今後の様子を見て。

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