第1話<始まり>
〜第1話〜
けたたましい携帯のバイブ音で目が覚める。
「ったく、誰だこんなとこで…あっ…、俺だ」
ここは大学の図書館。どうやら俺は勉強しながらいつの間にか、いや、確信的に寝てしまったようだ。
俺はK大学の4年生。大学生活もあと1年足らず。目下夢に向かって勉強中だ。俺は眠い目をこすりながら図書館を出て眠気を冷ますためにコーヒーと風を求めて外をぶらつく。この大学でもいろいろなことがあった。ここまでの3年間は決して良くもないし、悪くもない。まあつまり中の中だ。そんなことを思いながら歩いていると、
「おい、タケちゃん」振り返るとそこには友人の哲夫がいた。俺の名前は高橋タケル。だからみんなタケちゃんと呼ぶがこの年になってもそう呼ばれるのは少し気恥ずかしい感じもする。
おっといつまでも俺が解説していると面倒くさい。ここからはナレーションを入れるか。
「なんだ、哲夫か」
「なんだとはなんだ?ずいぶん眠そうだな?」
哲夫がタケルの顔をのぞきこみながら言った。
「図書館で寝てたんだよ」
「タケちゃん、良いか?図書館ってのは勉強するためにあるんだ。寝るためにあるんじゃないぞ」
少々ばかにしたような言い方で哲夫はしゃべった。
「うるさいなぁ。わかってるよ。だからこうして外を歩いて眠気をさましてるんだよ」
「へ〜、そうだ。お前がバイトしてるイタリアンの店、なんて名前だっけ?」
「何だよ、急に」「良いから、えっと…確か、アリ…」
「アリデベルチ」
「そうそう、それそれ。まあ店の名前なんかどうでも良いんだけどな」
「え〜?なら聞くなよ」
「実は俺のサークルの後輩がそこでバイトしたがってて、んでタケちゃんはそのアリデベルチ?でバイトしてる。俺とタケちゃんは親友だ。」
哲夫がぺらぺらしゃべる間にタケルは自販機で缶コーヒーをどれを買うか悩んでいる。
「おい、聞いてるのかタケちゃん。わかったか?つまりそうゆうわけだ」
「どうゆうわけだよ?」
コーヒーを飲みながらタケルは少し不機嫌そうに言った。
「タケちゃん、空気読めよな」
「よ〜するに、俺にその後輩とやらをウチのバイト先に紹介しろってか?」
「タケちゃん、さすが。モノが違うね〜」
「何言ってんだ?しかし、そんな面倒くさいことしたくはねえなぁ」
「頼むよタケちゃん、実はもうバッチリだってその子には言ってあるんだ」
「…お前は本当自由だな」
「今度アメでもおごるよ」
「足りるかよ!で、そいつはどんなやつなんだ?」
「お、引き受けてくれる?」
「しょうがないだろ?」
「今2年生で文学部だ。名前は藤崎ねおんってんだ」
「ネオン?どんな字だよ?」
「音2つでねおんらしい、イカしてるだろ?」
哲夫は自分のことのように胸を張った。
「女の子か、今ホールは足りてるんだよな〜。まあいずれにせよ、一回のネオンちゃんとやらに会ってみないとな」
「サンキュー!また連絡するぜ!じゃあ俺授業だからまたな!」
哲夫は走って消えて行った。タケルはそれを遠目に見ながらコーヒーを飲み干して。空を眺めた。
「面倒くせぇ〜!」
そう、タケルはとにかく面倒くせぇが口癖。なにをするにもまずはその言葉が口から出る。
哲夫が絡めば面倒くさいことは今までも大いにあったが今回のその『面倒くさいこと』がタケルの人生を大きく変えることになる。