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さて、どうしよう?主人公なのに、完全に空気のような存在…。落ち着け…とにかく現状を打破しないと、あまりにもダサ過ぎる!

少し例え話をしよう。

ある日、お姫様が魔王にさらわれました。勇者が頑張って、お姫様を助けに行きました。勇者は、魔王の城に殴り込みに行きました。しかし、そこで勇者が見た光景は、お姫様が魔王とガチンコで殴り合っていました。あまりの次元の違う、凄まじい闘いに、勇者は怖じけづきました。


………うん、この勇者は俺だね♪だって、三賢人と天宮の闘いはハンパねえよ?つーか、超×100スゲー速いスピードで動いて、ぶっちゃけ何してんのかわかんない。とりあえず……昇華か?肉体強化しながら、無敵時間を上手く利用して闘えば、なんとかなるかな?……なんて思ってたら、嵐のように激しかった戦闘がいきなりピタッと止まり、天宮も直秀も動こうとしない。また、三賢人も同じように動かない。


「クックッ……おもしろい!」

「非常にそそられるね。」

「ガッハッハッハ!手応えはあるな。」


三賢人は、まだまだ余裕の笑みを浮かべているが、対称的に天宮と直秀はずいぶん辛そうだ。……ん?余裕!?

………三賢人が油断してる今なら、俺の攻撃でも当てられるかもしれない。


「………ぐっ、コイツら!」


天宮が息を切らしながら、余裕たっぷりの三賢人を睨みつける。そんな天宮の姿は、どこか焦っているようにも見えるが……


「ふふふ……気付いたかな?」

「我々はまだ、半分の力しか出してないのだよ。」

「アダムを倒し勇者は期待ハズレじゃね?つまらんから片付けるぞ。」


げげげっ!?RANK1位の天宮と、チートモードの直秀が全力で戦っているのに、奴らはまだ半分の力しか出してなかった訳!?しかも、三賢人の一人が俺に狙いを付けてるじゃねーか!


「遅いな。」


……なっ!?撃とか言うじいさんが、一瞬にして間合いを詰めて、攻撃体制に入る。どうやって移動したんだよ?アダムと同じ瞬間移動か?くっ、とにかく…迎撃しないと。

…刹那、撃の右拳が鳩尾に叩き込まれ、全身の力が一気に抜けていく。たまらなく重い、一撃!あまりの衝撃に堪えきれず、喉の奥から胃液が逆流し、それを我慢する事はできず、盛大に地面に撒き散らす。


「谷川く……!?」


まさに、一瞬の出来事だった。

天宮が俺に視線を向けた瞬間、射が朱黒い球体を天宮に投げ付け、謎の球体は目にも留まらぬ速さで天宮に襲いかかる。僅かな隙を付かれ、天宮が自身に接近するそれに気付いた時には、すでに手遅れだった。謎の球体は、天宮の脇腹を掠めると、触れた部分を文字通りえぐり取った。天宮の華奢な体は、衝撃と痛みで「く」の字に折れ曲がり、大量の血液が流れ出し、大地を赤く染める。その間にも直秀と止、そして撃の攻防が繰り広げられている。


「かっ……ハァッ」


天宮が右脇腹を押さえて弱々しく立ち上がる。もはや、天宮の下半身の装備は赤一色。あまりの出血に視界が霞み、フラフラな状態だ。

ぐっ、情けない!パンチ一発でこのザマなのか、俺は!


「ん?まだ立ちますか。アンサンブル(さっきの射の技)を喰らっても立ち上がるプレイヤーは、初めてみましたよ。」


ズルッ……


「……なっ!?あっ、天宮ああああ!」


天宮の脇腹から、内臓……太い紐のようなモノがはみ出てきた。間違いない、アレは、腸だろう。天宮は左手で必死にはみ出てきた腸を押さえ、体内へ戻そうと試みる。………が


「あれ?なんでしょう、コレ?」


あろうことか、射は天宮の腸を両手でわしづかみ、一気に体外へと引き抜きにかかる。びちゃびちゃと鮮血が舞い散り、天宮は声にならない叫び声をあげる。そして、射は引きずり出した腸を捩り切った。


「仕上げです。」


言って、射は先程の球体を心臓の位置目掛けて投げ付ける。超が付く程の高速弾を、今の状態の天宮が避けれるはずがなく、無惨にも天宮の左胸を球体が直撃して貫通。天宮の左胸にはぽっかりと大穴があけられた。重要器官をえぐり取って………


〜AMAMIYA〜

戦闘不能!

危険!危険!危険!

生命維持に支障発生!

67秒後に死亡確定!


「………楽しみは最後にとっておきましょう。次は、あいつだ!」


射は直秀に狙いを付け、止と撃に合流する。三対一という、三賢人にとっては数的有利な状況。いくら直秀がチート的な強さを備えていたとしても、向こう側もチート的能力を持つ三人組だ。直秀は必死に応戦するが、じりじりと確実に追い詰められていく。


「……に……わ、…く…ん」


ズルッ、ズルッ…


天宮が、地面を這って倒れている俺に近付いてくる。


「やっ、やめろ…動くな!いっ、今!アイテムで……」


渾身の力を振り絞り、なんとか立ち上がる。しかし、体に力が入らず、膝がガクガクと笑いだし、ぶざまに転んでしまう。それでも、前へ…天宮の方向に近寄り、優しく、倒れている天宮を抱き起こす。


「待ってろ…カーイフク薬で……ムグッ!?」


天宮が血だらけの両腕を首にまわし、唇を重ね合わせる。舌と舌が絡み合い、天宮の舌が俺の口内をなめ回す。……血、鉄の味がする。


「んっ……」


ゆっくりと舌を引き抜き、天宮は両手で俺の頬を包み込み…


「ごめん。もう、アイテムじゃ助からない。」


「そ、そんな!じゃっ、じゃあ能力で……」


「それも、無理なの…死亡メッセージが出たら、もう助からない。」


「なにか方法が……」


「ごめん……ごめんなさい……私は、……もう」


天宮の目が虚ろになり、焦点が定まっていない。顔色も真っ青で、大量の血を吐き出す。この瞬間、はっきりと理解した。もう、天宮は助からない。


「い、嫌だ!嫌だ!逝くな!天宮!」


「た…に……か、わ…く……愛して、……る」


「結衣!天宮結衣!RANK1位・AMAMIYA!駄目だ!しっかりしろ!死ぬな!逝っちゃ駄目だあああ!」


「……ご、め…ずっと…………ずっ、……と、いっ、…しょ、に……いた、かった。………た……か、く、……との、…こど、…………欲しかっ、……たなぁ」


天宮の両手が、重力に逆らう事なく、スルッと頬から落ちていく。そのまま、糸の切れた操り人形のように事切れ、……天宮は、死んだ。


「……………あ?おい、…結衣?」


「………。」


当然、死体から返事が返ってくるはずがない。それでも……わかってはいるのだが、どうしても問い掛けたかった。


「嘘……嘘、だろ?だって、まだ温かい!体温だって残ってる!こんなに……こんなに……!」


〜AMAMIYA〜

戦闘不能!

状態異常!

死亡!

現実世界の肉体も機能を停止しました。


……アダムの時とは、状況が違う。あの時は、クリア特典があったから、天宮や他のプレイヤーも蘇生できた。だが、今回は普通の……対人通常戦闘だ。特典なんて、易しい機能はない。ただの戦闘不能なら、復帰アイテムを使えばなんとかなるんだ。しかし、「死亡」からプレイヤーを蘇生させるアイテムは、ない。仮にあったとしても、あくまでEARTH・PERIODの世界での蘇生であって、現実世界での肉体は死んだまま…。


「……あっ、ああ…うっ、うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!ふっ、ふぐぅ……ぐっ、あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」


天宮だったモノをおもいっきり抱きしめ、号泣する。顎が外れるんじゃないかってくらい、泣いた。


「守れなかヒッグ…守れなかった!ううっ…なにが!なにがアダムを倒し勇者だ!どこが勇者なんだ!ふざけんなあああ!ヘタレも大概にしやがれ!次元が違う!?阿呆かあああ!まともに戦ってないのに、何がわかる?ぐうぅ……俺のせいだ。俺のせいで結衣は奴らに!」


「……気がすんだ?」

「あとは貴方だけですよ?」

「力のねぇ奴は死ぬんだよ!」


気が付くと、三賢人が俺の目の前で戦闘体制をとりながら、横一列にならんでいた。左から撃・止・射の順番だ。直秀は既にボコボコにされ、戦闘不能状態で地面に横たわっていた。


「……す。」


「ん?」

「はあ?」

「あ?」


「お前らを……倒す!駆逐してやる!絶対にッ!」


〜そらとぶユパ様〜

最終奥義発動!

ニート・THE・END!!

ニートに秘められし力!

能力制限解除!

滅亡ニート!

ユパ様World!!

悲しみを抱えるニート!

秘石の力を開放!

全ステータス数値化不可!

神聖ニート変化!


「むっ!?」

「こっ、これは!?」

「ん?」

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