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〜谷川大和、6歳〜
「ただいま………。」
「あっ、お父さん!おかえりな……」
……なっ、なに?お父さんの様子が、変だ…。なんて言うか、恐いし…不気味!
「へっ…、へへへ。お父さんな、今日で会社クビになっちゃったんだ…。」
「え?クビ?クビって、なに?お父さん…。」
「ひへへ…、もうお前なんか死ね!っていう、死刑宣言みたいなモノさ…。」
…ぶつぶつ言いながら、お父さんは台所の方向に向かって歩いて行く。こわい、こわいよ…。
「……………!!!」
驚き過ぎて、声が出ない。お父さんは……包丁を持って、突然暴れ狂った。
「ギャハハハハハ!会社もクビになって、俺のガキまで馬鹿にしやがる!もう終わりだ!妻には逃げられるし、会社はクビになるし、もう死ねって事だよな?」
目玉は充血して真っ赤になって、ヨダレを垂らしながら暴れ狂うお父さん!家具という家具を破壊して、もはや正常ではなかった。
「ハアーッ、ハアーッ、ハアーッ……。………大和、こっちにおいで。お父さんが抱っこしてあげる♪」
嫌だ……恐い!嫌だ!!
「……………なんだ?来ないのか?」
「………お父さん、どうしちゃったの?」
「………見ればわかるだろ糞ガキがああああああああ!!!」
えっ!?お父さん、その包丁で僕を刺すつもりじゃ………。
……ドスッ!
「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!いっ、あっ……。ぐぅっ……。」
痛い!刺された!血が……。脇腹から血が大量に!嫌だ……死にたくない。助けて……助けてお父さん!
「…………!!!??」
信じたくなかった。お父さんは首に包丁を自分で刺し、大量の血を口から吐き出した。
「ごぶっぅ……クビに因んで……グフッ、……首に刺してみまし……た。」
そのまま、糸が切れた操り人形のように、お父さんは力無く崩れ落ち、僕の上に倒れ込んできた。家の中は血の海。まさに、惨劇と呼ぶに相応しい光景だった…。
「うっ…、ヒック…、何だよこれ…。ううう……誰か…。誰か……。嫌だ…助けて。誰か……助けてえええええええええええええ!!!」
「ゴッブゥ…!!」
びちゃびちゃびちゃびちゃびちゃびちゃ……。
降り注ぐ父親の血液!自分の上にいるお父さんを退かそうにも、僕の力じゃ動かせない……。それに、動くと刺された傷が凄く痛くて、どうする事もできなかった。
「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!嘘だあああああああ!!夢なら……覚めてくれ…。」