表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/73

「谷川君って、いつからジブリが好きなの?」


「あー…、五歳くらいの時から、毎日見てたんだ。」


「へぇー、五歳から毎日かぁ。」


……そう、あの頃は、ジブリだけが毎日の楽しみだった。ジブリだけが………。


「……谷川君?どうしたの?そんな悲しそうな顔して…。」


……駄目だ、あの頃を思い出すと、どうしてもテンションが上がらない。…沈んだ気分になってしまう。


「…ねえ、谷川君?何があったの?変だよ…。」


「……結衣。いや、なんでもないんだ!さあ、飯食べようぜ。冷めちゃうよ?」


「……私に言えない事なの?私には言いたくないの?」


違う。話してしまえば、絶対に泣いてしまう。そして、辛くなる…。あの出来事は、俺にとって最大の精神的障害だから…。


「お願い、そんな顔しないで!そんな谷川君見たくない…。私に出来る事なら、なんでもするよ?力になりたいの…。谷川君を支えたい!」


………天宮。


「……自分の全てを話すのは、結衣が初めてかもしれない。聞いてくれるか?」


「……うん、聞かせて。何があったの?」


「……15年前になるかな。俺が三歳の時か…。まだ、両親が離婚する前だった。母さんはどこかの研究所の博士で、仕事一筋の人間だったよ…。父さんは、なんて言うか…専業主婦……じゃねーや。専業夫だな。父さん仕事してなかったんだよ。母さんの給料で充分食っていけたからな。」


「……専業夫?」


「ああ、専業夫なんて聞こえはいいけど、実際はニートだ。仕事してねー訳だし。普通の家庭と逆だろ?そんな父さんに、母さんは愛想つかせて浮気。父さんは浮気の事実を知りながらも、何も言わなかった…。わかってたんだよ。自分の弱さ…立場を。けど、父さんはよく遊んでくれたし、可愛がってくれたから、嫌いじゃなかったんだ。」


「………。」


「まあ、普通じゃないナリに幸せだったよ。少なくとも俺は。そんなある日、両親は突然離婚したんだ。父さんは訳を言わなかったけど、母さんが浮気相手と結婚するために、離婚したんだと思う。俺は父さん側に引き取られた……と、言うよりは押し付けられたって感じだったな。」


「………。」


「それで、父さんと二人暮らしが始まったんだ。運よく仕事も見つかって…、最初の頃は大変だったけど、それなりに楽しかった。父さんが仕事に行ってる間は、退屈だからさ、それで父さんがジブリのビデオを買ってくれたんだ。んで、毎日ジブリを見てたんだ。幼いながらに感動したよ。ジブリの凄さに…。そんなある日、気付いたんだよ。父さんの様子が、日を重ねる毎におかしくなっている事を。今考えてみれば、当然だよな。今まで働いた事が無い父さんが、いきなり働きながら子育てだぜ?過労とストレスの板挟みで、ノイローゼ。」


「………ノイローゼって。」


「それで、遂に起こってしまったんだ。最悪の出来事が…。」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ