20
「うおおおおおお!?」
転送ボタンを押した途端、俺の意識は吹っ飛んだ。気が付くと、まるでゲームのRPGのような町並みが、視界いっぱいに広がっている。なんだ?何処だよここ!?確か、ネットカフェにいたはずだろ?
「………ようこそ、地獄の一丁目へ。」
……は?誰コイツ?
赤い髪の毛に、整った顔立ち。透き通るような裸に、ちょっぴり高い鼻。真っ黒なスーツを身に纏い、まるでホストのような風貌だ。あ…、わかった!コイツが、チュートリアルを教えてくれる、案内役だな。
「……ん?貴方の名前、おもしろいですね。実にイイ!倒し者が、意識しそうな名前だ。」
何言ってんのコイツ?プレイヤーネームが、研究員丹蛭陀?ダッセー名前だなぁ。
「………了解!ふふっ、ドクターからの指示が出た♪今から、貴方をある場所に連行します。さあ、逝こうか!」
いきなり、俺の腕を掴んでくる研究員丹蛭陀。すると、ぬめりとした感触が、嫌らしく伝わってくる。原因を探るべく、視線を丹蛭陀の腕に向けると、それは、大量の血液だった。よく見てみると、丹蛭陀の身体は、全身血まみれ。黒いスーツを着ているものだから、ぱっと見ではわからなかった!
「ああ!?おい、あんた………」
そこまで言いかけて、気が付いた。俺と丹蛭陀の周囲には、数え切れない程の死体が、そこらじゅうに転がっていた。………なんだよ?何が起きてるんだ!?
「ん?あっ、コレですか?なーに、少し暴れただけですよ。ストレス解消と実験のためにね♪」
〜初心者区域・全プレイヤー確認〜
・研究員丹蛭陀
・地を這うナウシカ
全2名。他、1463名死亡。
その状況は、もはや惨劇としか、言いようがなかった。コイツは、逆らえばお前もこうなる運命だ。と、言わんばかりに俺を睨みつけてくる。なんだこれ?一体、何がどうなってるんだ!?俺は、丹蛭陀の指示に従うしかなかった…。
〜開拓区域・第990ナバール森林〜
「じゃあなじいさん!また何かあったら頼むわ。」
一通り用事は足したので、とりあえず、あああの店から出る事にした。さーて、そろそろログアウトしようかな?
なんて、思っていた矢先に、ソイツは突然現れた。音もなく、いきなり俺の目の前に姿を現したプレイヤー。右腕には、透き通るような刀を持ち、左腕には小銃を持っている。Tシャツにジーンズを着こなし、この世界ではかなりの軽装といえる。
「………貴方が、アダムを倒した勇者?」
………男?女?見分けがつかない程に、美しい人間だ。声も中途半端に高いし、マジでどっちだろう?
「そうだけど、お前は誰だ?どこから現れた!?」
「私?私は…、高燃費少女・ハジイ!よろしく、倒し者…。」
高燃費?低燃費じゃなくて?しかも、ハイジじゃなくてハジイなのか?うむ、どうやら日本人のようだ。年齢も俺とそんなにかわらないような…?十七・八ってところか?
「なんか用?俺、そろそろログアウトするつもりだったから、用事があるなら手短に話して………」
「倒して欲しいプレイヤーがいるんです!」
いきなり、土下座して叫ぶ高燃費少女。はあ?倒して欲しい?しょーがねぇなぁ………。
「やだ。」
「おっ、お願いします!そこをどうにか…。」
「無理。」
「なっ、なんでですか?ちょっとくらい…。」
「駄目。」
「か弱い女の子のお願いデスヨ?」
「不可能。」
すると、泣きながらお願いしますと、俺に擦り寄りながら懇願する高燃費。
「あのな、よく聞け?お前みたいな奴の言う事聞いてたら、キリがねーんだよ。それに、俺にはそんな義理もねーし、冷たいようだけど、諦めな。もしくは、他の奴に頼め。別に、俺じゃなくてもいいだろ?」
「………そう、わかったわ。タダでとは言わないわ。」
「いや、タダでとかそういう問題じゃ…。」
「ふん!貴方、私の身体目当てなんでしょ?嫌らしい…。」
………ヤバイ、コイツ、かわいい顔して思考回路がイカレてやがる。とんでもないのに絡まれたなぁ…。
「あのな、俺には彼女だっているし…」
「酷い!私の心をモテ遊んだのね!?祟ってやる………末代まで祟って呪い殺してやる!」
………だれか助けて。この状況を何とかしてくれ〜。