17
煌めくような輝きを放つ、柔らかい肌に胸。裏表のない、癒される笑顔に、天使のような甘い声。………天宮。
「オヌシ、人の話を聞いてるか?今、完全に上の空じゃったぞ?」
「……ん?あぁ、何だっけ?」
〜開拓区域・第990ナバール森林深部〜
俺は今、情報屋・あああの店を訪ねて、第990ナバール森林にいる。
「もう一度言うぞ?現状では、チャンピオンの状態はかなり危険だ。」
「……まあ、見ればわかる。」
「問題は、かなり強烈な能力で、やられた事じゃの。戦闘が終わっても、治らないということは、もはやその相手を倒すしかあるまい。その方法でしか、チャンピオンは救えんだろうな。」
……丹蛭陀を、殺すか。かなり、苦労はするだろうな。ランクも3位だし。ん?何故、あああの所にいるかって?以前、天宮がどうしても困った事があったら、ここにくれば何とかなるかも……。と、言ってたのを思い出した訳ですよ。
「俺には信じられねーなぁ。チャンピオンが負けたなんて、想像ができん…。」
狙撃ライフルの手入れをしなから、脇に座っていた、ガルデ・ゾーラが、口を挟む。さっき知ったんだけど、あああって、ガルデ・ゾーラの師匠だったのね。つーか、ガルデ・ゾーラは、雰囲気がアウトローのような恐い印象だ。ちなみに、ドイツ人。
「相手はどんな奴じゃった?」
「ランク3位の、研究員丹蛭陀。職業をチェンジしながら戦うんだ。」
すると、あああのじいさんが眉に皺を寄せる。なんだ?どうしたじいさん?
「………丹蛭陀か。いろいろと黒い噂を聞くのう。あやつは、運営・管理側の人間じゃろ?」
「ああ。あいつ、自分で言ってたな。」
「……知っておるか?今、運営側の裏では、抗争が起きておる。」
………は?なんだそれ?意味わからん。
「意味わからんか?まあ、聞け。」
はーい、わかりました。
「アダムがいなくなった今、アダムの楽園は誰もいない、支配者がいない状態じゃ。その楽園を、新たに開拓し、新たな王になろうと企む派閥と、EARTH・PERIODの転送装置を奪い、全てを手中に収めようとする派閥。そして、醜い人間を全て消し去り、この世界の全てを虚無に帰そうと企む派閥。この3つの派閥が争い合っているのじゃ。」
………???
話についていけないんですけど。
「そして、その全ての企みを実現できるEARTH・PERIODの核ともいえるエネルギーが、裏EARTH・PERIODに厳重に封印されているのじゃ。」
「裏?たしか、アダムを倒した時に、特典の一つが、裏への挑戦権だったような…。」
「それじゃ!あの時、オヌシの選択は、全員蘇生だったが、本当は裏を選び、オヌシが新たな世界の統括者になればよかったのじゃ。」
「待て、そのエネルギーは、何の為に封印されたんだ?」
「本来、EARTH・PERIODは、別世界に存在するアダムを倒す為に作られた物。当然、規模が大きいだけに、それ相応の力、エネルギーが必要じゃ。だが、アダムを倒した今、そのエネルギーは強力過ぎる…。それを自分の都合のいいように利用しようと、運営側は考えているのじゃろうな。もちろん、その考えを見越して、EARTH・PERIOD最高責任者が大規模アップデートとともに、エネルギーを裏へと封印したのだが、先日何者かによって責任者が現実世界で暗殺された。」
………おいおい、台詞なげーよじいさん。しかも、説明っぽくて、頭に内容が入ってこない。
「裏の開放は、アダムに匹敵する程の力でないと、扉は開かないようになっている。だから、オヌシの所に丹蛭陀が現れたのじゃろう…。」
裏・封印・エネルギー、かぁ。ようは、その巨大な力を手に入れた奴が、新たな世界を牛耳る訳だ…。
「現実世界への影響は?」
「わからん。エネルギーを手にした人間次第じゃろうな。」
なんか、第二部になった途端、話が急展開過ぎやしねーか?ヤバヤバな気配がムンムンだねこりゃ…。
「オヌシは、つねに狙われていると言っても、過言ではないぞ?現実世界でも、EARTH・PERIOD内でも、細心の注意を払え!」
「あ?なんで?」
「馬鹿かオメー!裏へ行く為には、アダムを倒したお前じゃないと、裏への扉を開ける事はほぼ不可能。だから、運営側に狙われているぞって言ってんだよ。」
マジ?超おっかないんですけど。面倒事に巻き込まれるのはごめんだね。俺は、ただたんに丹蛭陀を完全に倒し、天宮を救えればなんでもいいんだ…。つーか、ガルデ・ゾーラって、意外とハスキーな声でしゃべるのね。
「………世界の統括者、ねぇ…。」
ある意味、アダムは重要な存在だったんだなぁ。アダムがいれば、こんな事にはならなかったんだし、ぶっちゃけ、倒す前よりヤバイ状況じゃね?あ〜ぁ、人間ってヤツは……。
〜現実世界、ネットカフェ・爆遊会館〜
「いらっしゃいませ。二名様ですか?当店の会員カードはお持ちですか?」
「あっ、いや、持ってないです。」
噂のネットカフェに来たけど、別に普通のカフェじゃないか?どこにその施設があるんだろうか?