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・その先へ(2)

 由起葉は多加弥と二人で川辺の土手に座っていた。

 道場の近くにある川で、子供たちの遊び場のひとつだ。さすがにこの時期に川に入っている人はいないが、川べりの道には犬の散歩をする人やジョギングをする人などがちらほらと見受けられた。

 「大丈夫だった?二葉兄ちゃんは力加減を知らないから」

 「そうかな。あれでもまだ本気じゃないと思うよ。俺ももっと強くならなきゃな」

 「そんなに強さにこだわらなくていいよ。タカヤの持ち味は力じゃないもん。道場に引っ張り込んだのだって、強くなってもらうためじゃなかったし」

 「わかってるよ。むしろ力を押さえるために武術を習ったんだ。おかげで今は心のコントロールもできてる」

 多加弥は自分の胸に手を当てた。由起葉には、その仕草が別の意味を持っているように感じた。

 「タカヤ。フキから聞いたんだよね・・・」

 「事故のときのこと?」

 由起葉はうなずく。

 「全部私が勝手に決めたの。タカヤは望んでなかったかもしれないけど、私が生きててほしかったから、契約したの」

 「確かに、そのとき意識があったら止めてたかもしれない。でも、今はよかったって思うよ。少しでも長くユキハの横にいられるのは、幸せだなって思う」

 「タカヤは人が良すぎるよ。少しは私を恨んで。自分の望みで生かしたのに、厄介ごとに巻き込んで左腕まで失わせた。私、時々思うの。私はタカヤの人生をメチャクチャにしながら生きてるんじゃないかって。自分の都合のいいようにタカヤを動かしてるような気がして・・・」

 こんな風になる前から少しずつ思いはじめていたことだった。わがままにつき合わせたり、多加弥自身を否定したりするようなことはなかった。強引に多加弥を動かしたのは、道場に入れたときくらいだ。だが、それからというもの、何も言わなくとも多加弥の在り方が由起葉の心地いいように変わってきたように思うのだ。もし多加弥が、由起葉が自分でも気付いていない深い部分の欲に応えようとして生きてきたならば、由起葉には罪がある。

 「それでいいんじゃないかな」

 多加弥はあっさりと言った。由起葉の罪の意識なんて吹き飛ばすくらい、爽やかな笑顔だった。

 「ユキハに出会う前の俺は、自分がどうしたいのかも、どこに立っているのかもわからないような状態で、ただ何かから逃げたくて逃げたくて、もがいていたんだ。生きてる意味も見つけられないのに、屈するのが嫌でとにかく生きてる。そんな自分しかなかった」

 由起葉は出会った頃の多加弥を思い出していた。有り余る力で暴力ばかりの日々。由起葉が初めて声をかけたときも、多加弥は相手の返り血で汚れていた。

 「でも、ユキハが見つけてくれた。俺を導いてくれた。ユキハに流されてるって見方もできるけど、それでいいと俺は思ってる。だって、ユキハは俺をいつも正しい方向にしか連れていかないから」

 「そんなことないのに・・・・いいように考えすぎだよ」

 涙がにじんで視界が揺れた。

 幸せにしなければと思う。多加弥を幸せにすることで、きっと自分も幸せになる。魂の連鎖とはそういうことにもつながっているはずだ。

 これからどんな運命が待っているのかわからない。それでも二人は進んでゆく。

 どこまで続くかわからない道のりの、今はほんの始まり。お互いを見失わないように強く手をつなぎながら、ただ全力で生きるだけだ。


今まで読んでいただいた皆様、本当にありがとうございました。

次につなげるつもりで書いたため、少し説明っぽくなってしまったかなとも思います。なんでここでこの話?みたいな場面もあったかも・・・。登場人物もちょっと中途半端な出方になっちゃいましたね。

次はもっといろんな人を活躍させて、もっと深いところまで書けたらなぁと思っています。

どうぞタカヤとユキハを温かく見守ってやってください。

ありがとうございました。

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