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エンゲブラ的短編集

【2分で読めるショート】なぜ、勇者は燃え尽きたのか?

作者: エンゲブラ
掲載日:2026/06/10

皆が言葉を失った。対峙していた魔王でさえも。


わずかなうめき。そして焼失。

勇者が燃え上がり、そして、一瞬で灰となった。


犯人は、勇者パーティーの賢者であった。

辺りに微かに漂う焼けた肉の香りが、不謹慎にも皆の空腹を誘った。


「……い、いったいどういうおつもりだ、ヴォルデマール殿?」


聖騎士が、賢者に問うた。

だが、賢者にしても、なぜ勇者が燃え上がったのか、理解が出来ていなかった。


魔王を焼き尽くすために放たれた究極魔法は、一言一句間違わず、詠唱された。しかし、焼き尽くされたのは魔王ではなく、事もあろうか、勇者であった。


魔王が、肩を震わせ、やがて笑いだした。


「な、何がおかしい!やはりお前の仕業か!」


聖騎士が、魔王を睨みつけた。

だが、動揺はまだ収まっていない様子であった。


「……これが笑わずにいられるか」


魔王は、不敵に聖騎士に返し、賢者に問うた。


「お主が唱えていたのは獄炎魔法インフェルノであるな?」


「そ、そうだ」


「インフェルノの詠唱は知っておろう?」


「あ、当たり前であろう。実際に地獄の業火が、こうして顕現……したではないか?」


賢者の動揺とは裏腹に、それまでずっと黙り込んできた聖女が肩を震わせ、笑い始めた。


「ど、どうしたというのだ、ヘレーネ。気でも触れたのか?」


聖騎士が、的外れな言葉を聖女に投げかけた。

だが、それと同時に賢者の思考も、ひとつの仮説に行き着いていた。


「ま、まさか……」


「そうよ」


魔王よりも先に、賢者のつぶやきに答える聖女。


「インフェルノの詠唱には、たしか『最も悪しき魂の者を焼き尽くせ』の文言が含まれていたわよね?」


聖女の言葉に、聖騎士と賢者は溜息をついた。

そして、魔王と聖女は高らかに笑い続けた。




―― Fin.


読み終えた方は、リアクションだけでもよろしくおねがいしゃーす。

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― 新着の感想 ―
これは上手いですね! 鮮やかすぎて気持ちのいい読後感です(^^)
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