【2分で読めるショート】なぜ、勇者は燃え尽きたのか?
皆が言葉を失った。対峙していた魔王でさえも。
わずかな呻き。そして焼失。
勇者が燃え上がり、そして、一瞬で灰となった。
犯人は、勇者パーティーの賢者であった。
辺りに微かに漂う焼けた肉の香りが、不謹慎にも皆の空腹を誘った。
「……い、いったいどういうおつもりだ、ヴォルデマール殿?」
聖騎士が、賢者に問うた。
だが、賢者にしても、なぜ勇者が燃え上がったのか、理解が出来ていなかった。
魔王を焼き尽くすために放たれた究極魔法は、一言一句間違わず、詠唱された。しかし、焼き尽くされたのは魔王ではなく、事もあろうか、勇者であった。
魔王が、肩を震わせ、やがて笑いだした。
「な、何がおかしい!やはりお前の仕業か!」
聖騎士が、魔王を睨みつけた。
だが、動揺はまだ収まっていない様子であった。
「……これが笑わずにいられるか」
魔王は、不敵に聖騎士に返し、賢者に問うた。
「お主が唱えていたのは獄炎魔法であるな?」
「そ、そうだ」
「インフェルノの詠唱は知っておろう?」
「あ、当たり前であろう。実際に地獄の業火が、こうして顕現……したではないか?」
賢者の動揺とは裏腹に、それまでずっと黙り込んできた聖女が肩を震わせ、笑い始めた。
「ど、どうしたというのだ、ヘレーネ。気でも触れたのか?」
聖騎士が、的外れな言葉を聖女に投げかけた。
だが、それと同時に賢者の思考も、ひとつの仮説に行き着いていた。
「ま、まさか……」
「そうよ」
魔王よりも先に、賢者のつぶやきに答える聖女。
「インフェルノの詠唱には、たしか『最も悪しき魂の者を焼き尽くせ』の文言が含まれていたわよね?」
聖女の言葉に、聖騎士と賢者は溜息をついた。
そして、魔王と聖女は高らかに笑い続けた。
―― Fin.
読み終えた方は、リアクションだけでもよろしくおねがいしゃーす。




