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比較的最近更新した短編のまとめ場所

うちの小さい弟が勝手に魔王を倒しにいってしまった。

作者: 仲仁へび
掲載日:2026/04/22



 うちの小さい弟が勝手に魔王を倒しにいってしまった。


「姉ちゃん! 兄ちゃん! 俺ちょっと魔王倒しにいってくる!」


 なぜかいつまでもずっと小さいままで、全然成長しない弟。

 姉である私や、兄たちが十年くらい年をとっても、5歳だった頃からまった年を取らない弟が。


 何らかの病気になってしまったのではないかと、心配していた弟が。





 うちの弟は養子だ。


 血はつながっていない。


 けれど、本当の家族だと思っている。


 魔王軍に蹂躙されて、滅亡した国から、命からがら逃げてきたところを保護された子供だ。


 悲しい過去や辛い事はたくさんあったのだと思う。


 でも、いつも笑顔で明るい姿を見せてくれる、そんな子だ。


 そんな弟は、とても強い。


 5歳児なのに、とても。


 荒事とかできなさそうな見た目なのに、身長以上の大きな剣をぶんぶん振り回して、「そりゃ、てりゃ!」とかいいながら魔物を倒してしまう。


 不思議いっぱいの弟だ。


 四天王だって倒せてしまえるかもしれない。


 だけど、強いからっていっても心配しないわけがない。


 私も兄も、いつもはらはら。


 家族とはそういうものだから。


 年上というものは、そういうものだから。





 小さいことは便利だ。


 相手を油断させられる。


 敵が油断すると倒しやすくなる。


 だから、神様に成長しなくでいいですってお願いしたら、成長しなくなった。


 もともと「てんぷのさいのう」?ってやつがあったから、俺が強くてよかった。


 小さいままでも、魔物をじゃんじゃん倒せる。


 あと、小さいと人と仲良くなるのに便利だ。


 だいたいの人は優しくしてくれる。


 人と仲良くなると、色々な情報が知れるから、武器をゲットしてもっと強くなりやすい。


 魔物の出現情報とかもしれるから、狩りもしやすい。


 まだ便利なことはある。


 小さいと小回りがきく。


 大抵の敵は俺より大きい相手だから、小さい体ですばしっこく動くと、戦いにくいらしい。


 だから俺は、小さいままでいるんだ。


 欠点は心も成長しなくなることだけど、魔物を倒せるなら、無問題だ。


 俺の住んでるところを滅茶苦茶にして、お父さんやお母さんや友達をたくさん殺した魔物を、いっぱい倒せるなら。


 それでついせんじつ、とうとう準備が整ったので、魔王を倒しに行くことにした。


 魔王はとても強くて、おっかないだろうけど。


 きっとなんとかなるはず!


 頑張って倒さなくちゃ!


 でも、そういうことを年上の前でいってはいけない。


 止められちゃうし。


 いつも「年上というのはそういうものだから」って心配させて、悲しませちゃうから。






 でも、魔王まで俺と同じで小さいとは思わなかったな。


 魔王城で仲良くなった男の子が、魔王だった。


 小さいままでいようって決めて、そのままでいる魔物だった。


 なんでか知らないけど、神様が願いをかなえちゃったみたい。


 好きな食べ物も、好きな事も一緒だからうれしかったのに。


 どうやら俺たちは、これから殺しあわなくちゃいけないらしい。


 今まで殺された人たちのために、俺はひじょうにならなくなちゃ。


 おんなじ気持ちなのか、魔王は目の前で武器を構えた。


 そんな魔王には、昔好きな女の子がいたらしい。


 考えたくないのに、いろんなこと考えちゃうな。


 好きな人は、年上の女の子で、とっても美人だったんだって。


「年上だからやってあげる」って、いつも臆病だった魔王の手を引いてくれた女の子だったみたい。


 けれど、死んじゃったから、世界なんてどうでもいいやって思って、魔王をやってるみたい。


 世界を滅茶苦茶にするのに、一番効率のいい方法が、小さいままでいる事だったみたい。


 それで、せけんには知られていないけど、小さい姿で人間の要人たちをあんさつしてるんだって。


 好きな人のために、ふくしゅうしたくなる気持ちはとてもわかる。


 いなくなっちゃった人のむねんは晴らしたい。


 でも。


 俺たち、殺し合いしなくてすむようにならないのかな。






 うちの弟が家出したので、追いかけている。


 魔王を倒しに行くとかやばい。


 魔物は余裕かもしれないけど、さすがに死ぬかもしれない。


 そういうわけで、、全力で追いかけてる。


 実家が養子を迎え入れても豊かな生活を送れるくらいには、金銭面が充実してるので、お金に物を言わせて、どんどん追いかけた。


 小さい生き物というものは、危ない目にはあってはいけない。


 守られるべき存在だ。


 たとえ大きくなっても、私たちは姉と兄なのだから、年下をかまうのはやめられない。


 心配せずにはいられないのだ。


 だから追いかけた。


 めちゃくちゃ頑張って追いかけた。


 幸いにも私たちは強かった。


 実家が豊かなので、護身の術は極めていたし、装備品も一級品だし、護衛も強い人を雇えるから。


 そういうわけで通常では考えられない速度で魔王城に到着。


 弟を回収してすぐにお暇する予定だった。


 でも行ってみたらなんか喧嘩してた。


 弟は、同じくらい小さいのと、ぽかぽか泣きながらなぐりあってた。


 わけを聞いてみたらびっくりした。


「え。これが魔王?」


 って感じ。


 魔王は人類の敵だけど、子供を殺すのはさすがに罪悪感がある。


 見た目的に殺せそうだけど、やっていい事とは思えない。


 でも犯した罪は紛れもない本物で。


 頭が痛い。


 弟を回収しに来ただけなのに、ほんとどうして。


「ねえ、姉ちゃん、兄ちゃんどうしよう?」


 そんな顔でこっちみないで。 


 でも、何とかしてあげなくちゃ。


 小さい弟に頼られたら、頑張るしかない。


 年上というものは、そういうものだから。






 というわけで、年上として頑張った。


 魔王に罪というものはなんたるかを教えたり。


 償い方はどうたるかを説いたり。


 支配者としてはうんたらかんたらと説明したり。


 たまに泣きながらほかの魔物とかうちの弟とか人間とかと喧嘩する時があるから、年上としてとめるために、強くなってみたり。


 道は長くて険しかったけれど、年上として頑張った。


 そういうものだから超がんばった。







 そうした十年たったころ、ようやく魔王と和解できる日がやってきた。


 これでようやく皆で成長できる。


 うちの弟が、魔物を倒してばっかりなのを心配して、神様にめっちゃお祈りして何とかしてくださいって言ったら、なんでか私たちの心の成長も止まってしまった。


 その代わり、才能はないけど、頑張れば頑張った分強くなれるようになったのだ。


 でも、もうそういう特別な力は、もうなくてもよくなったから。


 みんなで成長できるのだ。





「姉ちゃん、兄ちゃん! 俺、魔王と大陸で暴れてる竜をやっつけてくる! さっき作ったオヤツは俺の分も食べていいよ」


 でも、もうちょっとだけ必要かもしれない。





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