シーツおばけと小人のはなし
1.
シーツおばけは公園で遊ぶのが大好きでした。おばけにはおばけの集会があって、毎日夜になると、おばけの子どもたちは公園に集まります。そこで立派なおばけの先輩から、人間の子どもを怖がらせたり困らせたりする方法をならうのです。
シーツおばけは『面倒くさがり』のおばけです。おばけは人間には見えません。朝早く、あたたかい子どものベッドにこっそりもぐりこんで、朝寝ぼうさせるのがシーツおばけの役目でした。
ある月曜日の朝ことです。シーツおばけは眠れずにいました。昨夜は集会がお休みで、一晩中寝ていたので、どうしても眠くなりません。仕方なく、シーツおばけは散歩をすることにしました。
2.
明るい昼の街を歩いていくと、一件の家がありました。そっと窓をのぞいてみると、こんもりと盛り上がった子ども用のベッドがあります。おかしいな、とシーツおばけは思いました。シーツおばけがいなくても、あの子はシーツから出てこないようです。
(困ったな、これじゃあぼくの仕事がなくなってしまうよ)
シーツおばけはそう考えて、その部屋におじゃますることにしました。なにせおばけですから、するりと壁を通り抜けることができるのです。
ベッドの中にいるのは、子どもでも大人でもないこびとでした。こびとは夢を見ているようです。シーツおばけはこびとの耳元でささやきました。
(やぁ、もうお昼だよ。学校に行かなくていいのかい?)
こびとはもぞもぞと首をふって寝言をいいました。
「嫌だよ、学校になんか行きたくない」
(それはまた、どうして?)
「どうしてもさ。家にいるのが一番落ち着くし、誰にも会いたくないんだよ。お願いだ、起こさないでおくれ」
さぁ、シーツおばけはますます困ってしまいました。だいたい人間というものは学校が好きで、あくせく働き、次の日の朝にはあくびをしながらおはようの挨拶をするものだと思っていたのです。
(起きて、学校にお行きよ。学校は楽しいものだろう?)
「楽しくなんかないさ、退屈だよ」
(友だちと遊ばなくていいのかい?)
「友だちと遊ぶよりテレビゲームの方が面白いよ。勉強をしたって、それが何の役に立つのさ?」
シーツおばけはとほうに暮れて、こびとのベッドにもぐりこみました。こびとを抱きしめていると、だんだん寂しくなってきて、ポロリと涙が零れました。それに気づいたこびとが聞きました。
「どうして泣いているんだい」
(どうして君は泣かないんだい)
「どこも痛くないんだもの」
(きみはぼくより立派なおばけだ)
3.
そのまま月日は流れていきました。窓の外では夕日が沈み、朝日が昇ります。シーツおばけとこびとは、どこにも行かず、誰にも会わず、ふたりで毎日を過ごしました。
ある朝、気がつくとシーツおばけはこびとになっていました。そのとなりで、こびとははシーツおばけになっています。こびとになったシーツおばけは、たくさん遊び、たくさん働くようになりました。シーツおばけになったこびとは、おばけの集会にも行かないまま、立派な『面倒くさがり』おばけになりました。
どうしてこんなことになったのか、誰にもわかりませんでした。ただ、こびとよりもシーツおばけの方が人間らしく、シーツおばけよりもこびとの方がおばけらしかったというだけのことなのです。
やがて、シーツおばけは自分がこびとだったことを忘れていきました。そして朝早く人間の子どものベッドにもぐり込み、まだ寝ていよう、とささやくようになったのでした。




