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第8章 ― 静かな狩り

ロボットは、動かなかった。


弱さゆえではない――選択だった。


司令キャビンの中で、センサーが空の混乱を捉えていた。

不規則な動き。必死の索敵。

敵は、すでに都市の中に入り込んでいる“何か”を探していた。


「将軍……艦船がこちらを捜索しています」

兵士が報告する。


キラは短く、重い息を吐いた。


「なら、探させておけ。」

その声は静かで、ほとんど無関心だった。

「我々の足音を餌に使え。建物の間を移動しろ。常に姿を隠せ。」


「了解、サー。」


機体が、再び動き出す。


一歩ごとに、コンクリートが呻いた。

赤い光が破壊された建物の壁面に反射し、都市中に悪魔の眼が増殖していくかのようだった。

地面は深い波のように震え、無視できぬ警告を発し続ける。


空で、一隻の艦船がそれに気づいた。


降下してくる。


「将軍」

兵士がホログラムを指さす。

「建物の間に、こちらを探る艦船が一隻います。」


キラは迷わなかった。


「破壊しろ。今すぐだ。」


建物が、内側から爆ぜた。


巨大な金属の手が、コンクリートも、鋼材も、ガラスも、紙のように貫通する。

指が異星船を包み込み、残酷なまでの正確さで握り締めた。


――一度の圧搾。


異星の金属が、砕け散る。


手は破壊された構造物の中へと引き戻され、残されたのは落下する残骸と、沈黙だけだった。


他の艦船は即座に反応した。

高度を上げ、散開し、もはや理解できなくなった状況の制御を取り戻そうとする。


ロボットは、再び歩き始める。


崩壊したビルの間を、都市の密林を行く獅子のように進む――

望めば姿を消し、現れるときは絶対的。

砲身からは動くたびに煙が漏れ、狩りを楽しむ悪魔の押し殺した笑い声のようだった。


残存する艦船の一つの内部で、異星人が緊急通信を起動する。


「ゼズ……ジイズ……キル……」

(自動翻訳:母艦へ増援を要請する。人類は進化している。我々の部隊は敗北しつつある。)


返答は冷淡だった。


「了解。増援を派遣する。」


宇宙空間で、巨大な影が動いた。


全長三百四十メートルの母艦が区画を開き、虚無から戦争の種を落とすかのように、新たな部隊を地球へと放つ。


司令キャビンの中では、絶え間ない衝撃が次第に影響を及ぼし始めていた。


「将軍……」

一人の兵士が顔面蒼白で口元を押さえる。

「気分が悪いです。この動き……限界かもしれません。」


キラは彼を見つめた。

厳しさもなく、しかし優しさもなく。


「トイレに行け。すぐ戻れ。」


「はい、将軍。」


兵士は走り去った。


外では、何も変わらない。


ロボットは、名も、記録も、既知の限界も持たぬ存在として、建物の間を進み続けていた。

戦争によって選ばれた、正体不明の怪物。


センサーが、再調整される。


次の標的:二隻。


そして都市は、再び――

息を殺した。


――次章へ続く。

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