第7章 ― 天を支配する影
怪物は、進んだ。
空が艦隊に覆われていようとも、ためらうことなく前へと歩み続ける――
その一歩一歩が、絶対的な真実を突きつけていた。
自らの上にあるものに、届かない存在などない、と。
異星船は知能戦闘モードを起動した。
コアが点灯し、赤い光線が放たれる。鋼も、コンクリートも、肉体も、一瞬で溶かし尽くす破壊の束――彼らにとっての最終兵器だった。
だが、彼らは最後の過ちを犯した。
その技術が……すでに機械の内側に生きていることを、知らなかったのだ。
司令キャビンで、叫び声が空気を切り裂く。
「将軍! 再び攻撃してきます!」
キラは声を荒らげなかった。
「シールドを起動。」
命令は即座に実行された。
レバー、ボタン、パネル――世界の終わりを操作するフリッパーゲームのように、指が舞う。
ロボットが応えた。
左腕を後方へと伸ばし、自らの背部装甲を掴む。
それを地面に引きずり、すでに破壊された都市に巨大な亀裂を刻みながら、力任せに引き出す。そして一動作で、その装甲を身体の前面へと構えた。
シールドが、輝いた。
防御としてではない――挑発として。
異星の光線が障壁に激突し、四散した。
より高位で、理不尽で、超越した技術によって、完全にねじ伏せられて。
そのとき、新たな反応が現れた。
「将軍……数隻が背後へ回りました!」
キラは、わずかに口角を上げた。
ほんの一瞬の、ほとんど見えない微笑。
「跳べ。」
脚部のキャタピラが狂ったように回転を始める。
夜を切り裂く機械の遠吠えのような音――地獄からの召喚。
機体は身体を沈め、そして跳躍した。
衝撃で、日本全土が震えた。
異星船が照準を固定する。
――遅すぎた。
ロボットは前進し、その巨体からは想像できぬ速度で、巨大な建造物へと身を投げる。都市そのものを戦闘の一部として利用するかのように。
コンクリートが悲鳴を上げ、粉塵が舞い、構造物が崩れ落ちた。
静寂。
艦船は宙に留まり、混乱する。
センサーが街路を、影を、瓦礫をなぞるように走査する。
ゆっくりと旋回しながら、もはや理解できなくなった存在を探していた。
怪物は、消えていた。
だが、逃げたわけではない。
狩っていたのだ。
崩壊した建物の狭間、破壊の残響の中で、機械は待つ――
動かず、焦らず、絶対的に。
そして空は、侵略以来初めて――
恐怖という感情を、知り始めていた。
――次章へ続く。




