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第13章 ― 闇との契約

キラは一切の躊躇なく進んだ。


通路が彼の前で開き、巨大で円形の空間が姿を現す。

それは機械の子宮のように深く、広大だった。

中央には、生きているかのように脈打つケーブルと配線に吊るされて、その装備が待っていた。


キラが足を踏み入れた瞬間、照明が変わった。

空間全体が、圧迫するような絶対的な赤に飲み込まれる。

まるで部屋そのものが呼吸しているかのようだった。


キラは目を閉じ、ゆっくりと息を吸った。


「……時が来た」

彼は独り言のように呟く。

「人類を救う時だ。そして、俺の国を救う時だ」


彼は手を伸ばした。


装備が応えた。


金属の花が開くように構造体が展開する。

キラは装備の中核へと身を委ねた。


――その瞬間だった。


針が現れた。

数十本もの針が、生きた触手のように蠢き、

腕に、脚に、背中に突き刺さる。


血が吸い上げられ、微細なチューブを通って、彼の頭上にある小型エンジンへと送られていく。


痛みは凄まじかった。

暴力的で、原始的だった。


キラは叫んだ。


そして――笑った。


「俺は、あの異星人どもにすべてを奪わせはしない」

震えながらも、声は揺るがない。

「これは俺の使命だ。俺の国を救うための」


灯りが消えた。


赤が死んだ。


闇がすべてを覆った。


その時、声が響いた。

深く、金属的で、古い声。


「……お前は誰だ」


キラは目を開いた。


「俺はキラだ」

声は微動だにしない。

「そして、お前の力が必要だ」


一拍の沈黙。

重く、意識を持った沈黙。


「私をここに閉じ込めたのは、お前だ」

ロボットの声が答える。

「なぜ私の助けが必要なのだ……私の母を破壊しようとしているのに」


キラは短く、乾いた笑いを漏らした。


「母、だと?」

彼は首を傾げる。

「異星体……お前を造ったのが、お前たちの技術だということは分かっている。

 生体部品。異星の機械」 「だが、俺に協力するなら約束しよう。俺はお前の脅威にはならない」


「お前は残酷だ」

声が言う。

「なぜ信じなければならない」


キラは深く息を吸った。


「俺は、お前たちの仕組みを知っている」

「お前たちには母星がある。母艦はただの断片に過ぎない」

「お前たちは世界を征服し、自分たちを増やす」


再び沈黙。


「……なぜ、それを知っている?」

存在が問いかけた。


キラは、今度は確信に満ちた笑みを浮かべた。


「俺は確率で考える」

「失敗を計算し、予測し、未来を読む」

「俺は人間だ……だが、多くの者が持たないものを持っている。絶対的な準備だ」

「俺は間違える。だから間違いを想定し、備える。それが俺だ」


声が返る。

先ほどとは違い、低く、静かに。


「愚かな人間よ……」

「受け入れよう。だが知っておけ。私の本当の母は、この艦にはいない」


キラは満足げに腕を広げた。


「ならば、俺を助けるな」


「……ああ」


「素晴らしい……ふふふ」


その瞬間、明らかになった。


キラは人間でありながら、すでにそれ以上の存在だった。


冷酷な操縦者。

計算された支配者。

底知れぬ存在。


機械が契約に応えた。


システムが目を覚ます。

灯りが戻る――だが、以前とは違う。

白でも赤でもない。


完全な黒。


闇そのものが、形を得たかのような色だった。


その存在が、金属の口を開いた。


そして――咆哮した。


音は海を貫き、凄まじい振動となって周囲の水を歪ませる。

それは戦争の呼び声。

絶滅の宣告だった。


空では、母艦が降下を終え、その惑星破壊のための巨大な全貌をさらしていた。


だが、何かが変わった。


今、このロボットを支配しているのは――

もはや、ただの人間ではない。


キラだった。


生きた機械に力を貸した男――

そして、その機械を自ら造り上げた男。


二人は共に、

決して引き返すことのできない境界を越えたのだ。


次章へ続く。

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