第12章 ― 敵が終焉を呼ぶ時
ロボットは進み続けた。
一度の発射ごとに、七十隻の艦船が消えていく。
爆発すらしない――戦場から抹消されるのだ。まるで、最初から存在しなかったかのように。
そのリズムは容赦なく、正確で、決定的だった。
そして――空が退いた。
残存する艦船は攻撃を止め、水面から距離を取り、隊形を崩して後退した。
侵攻が始まって以来、初めて――恐怖が攻勢に勝った瞬間だった。
ある異星艦の内部で、一人の将校が緊急通信を起動した。声は恐慌に歪んでいた。
「ジズ……ジ・リリロ……アキハキ・サザサス……」
(自動翻訳:母艦が必要だ。我々では無理だ。この人類が造り出した“それ”には、艦隊の支援は無意味だ。女王よ、来てくれ。)
宇宙で、何かが応答した。
母艦の灯りが一つ、また一つと点灯する。
その巨大な船体が動き出し、速度を上げ、終末の彗星のように虚空を切り裂きながら、一直線に地球へと向かってきた。
司令キャビンの中で、キラは微動だにしなかった。
デストロイヤーが水面を踏みしめ、既存のあらゆる法則を嘲笑うように歩いている間も。
「将軍……」
一人の兵士が言った。
「敵が、撃つのをやめました。」
数人が笑みを浮かべた。
別の者たちは安堵の息を吐き、勝利が訪れたのだと信じかけていた。
だが、キラは反応しなかった。
「勝ったと思っているな」
冷え切った声で言う。
「敵は必ず、最後の切り札を隠している。」
彼の思考は沈黙の中で回転していた。
――そして、お前たちは誰も知らない。
――この機械にも、どんな切り札にも応える答えがあるということを。
突然、ロボットが停止した。
内部への衝撃は凄まじかった。
兵士たちが倒れ、操作盤に叩きつけられる者もいれば、完全に体勢を崩す者もいた。
「なぜ止めた?!」
キラが咆哮する。
「まだ、頭上には敵がいることを忘れたのか?!」
人間の身体が、限界を訴え始めていた。
吐く者がいた。
よだれを垂らす者もいた。
極限の圧力下で何時間も立ち続けた末の疲労。
脚は震え、頭は割れるように痛む。
キラは低く唸った。
軽蔑と抑え込まれた怒りを帯びた声で。
「お前たちは日本人だ。ならば、それを証明しろ。」
「俺たちは弱くない。戦いにおいて賢く、力においても賢い。」
「ここで屈するな。」
一人の兵士が膝をつき、声を震わせた。
「す、すみません……将軍……もう限界です。
私たちは人間です。人間には弱さがあります……」
キラは玉座から立ち上がった。
二歩で距離を詰め、兵士の首を掴み、床から持ち上げる。
「人間には弱さがある」
低く、脅すように言った。
「だが、自分の群れのために戦う時……決して諦めない。」
その瞳が暗く沈む。
「身体は疲れる。必ずだ。」
「だが、すべてを支配するのは脳だ。身体はただの装甲に過ぎない。」
「心がエンジンだ。そして、それが動く限り……お前たちは戦い続ける。」
彼は手を離した。
兵士は再び床に落ち、意識を失った。
その時、警報音が変わった。
空が裂けた。
地球の大気圏に、巨大な影が現れる。
規模不明の戦艦――これまで対峙した何よりも巨大な、未確認の宇宙の怪物。
母艦が、到着したのだ。
キラは深く息を吸い、背中で腕を組んだ。
「来たか……」
呟く。
「分かっていた。この時が来ると。」
彼は振り返った。
「これは、俺一人で片付ける。」
床に倒れていた兵士が、力を振り絞って問いかける。
「しょ、将軍……どこへ? 指揮はここに……」
キラは止まらなかった。
「指揮など要らん。」
冷たい声が響く。
「もっと酷いことをする。」
「抵抗は選択肢ではないと、思い知らせてやる。」
「すべてか、無かだ。」
鉄のゲートが開いた。
キラは振り返ることなく、その通路を進んでいった。
もはや、ただの戦いではなかった。
それは――
制御不可能なほど巨大な何かの、始まりだった。
次章へ続く。




